ロック、アート、コメディを融合した唯一無二のショー「ブルーマングループ」が2024年8月7日(水)~9月1日(日)まで東京・新宿のTHEATER MILANO-Za、9月4日(水)~8日(日)大阪・オリックス劇場、9月13日(金)~16日(月・祝)に愛知県芸術劇場 大ホールでジャパンツアーを行う。言葉を使わないステージは年齢、性別、国や文化を超え、全世界で5000万人以上が熱狂。ツアーを前に、シニアミュージックディレクター(音楽監督)のバイロン・ステップ氏、人気バンドI Don't Like Mondays.のドラマーで、過去にブルーマングループのメンバーとして活躍したSHUKI氏に見どころを聞いた。

(左から)SHUKI、バイロン・ステップ氏

(左から)SHUKI、バイロン・ステップ氏

――1991年に顔を青く塗った3人のメンバーが、アメリカ・ニューヨークのマンハッタンの路上でパフォーマンスをしたことから始まった「ブルーマングループ」。日本では2007年に初上陸して以降、ファンを拡大しています。今回東京公演は、新宿・歌舞伎町にある劇場で初上演されますね。

バイロン・ステップ(以下、バイロン):ツアーで日本に戻ってこられることが嬉しいです。今回は音楽を主とした形にする予定で、今回私は奏者のオーディションの審査をするために来日しました。

――フルバンドでステージを行うと伺いました。

バイロン:はい。パンデミックを経て初めての日本ツアーになりますので、ブルーマンのショーを体感できるプログラムにしたいと考えています。お客さんは見るだけではなく、一緒に声を出したり、ときにはステージに上がっていただくこともあるかもしれません。観客の皆さんを巻き込んだステージにしたいですし、そういう日々が戻ったという喜びを分かち合うショーにしたいですね。

――ブルーマン グループにとって、音楽はどのようなものでしょうか。

SHUKI:僕がやっていたときから、いまでも言われていることの1つに「ブルーマングループは、自由なステージ」だということがあります。演奏中はブルーマンの動きに合わせて展開していくことがミュージシャンの仕事で、ブルーマンとお客さんを繋ぐものが「音楽」だと思います。ブルーマンの思いを伝えることが、僕らが奏でる音楽なんです。

――奏者のオーディションでは、どんなところを注視されるのでしょう。

SHUKI:想像力があるかですね。一番若い人は10歳、上は62歳まで287名が応募をしてくれました。一次審査では「自由度」、二次審査はスタジオで実際に演奏を聴きます。誰が受かってもおかしくないくらい、技術が高い面々が残っているのですが、ブルーマンは自分の楽器だけではく、自分がどう動けばショーが良いものになるか。広い視野を持って行動できるかが大切なので、そういう部分を見たいと思っています。

バイロン:SHUKIが言った通り、奏者にはフレキシビリティとオープンマインドが求められます。パイプを伸び縮みさせたり、チューブを使ったり。ピアノは鍵盤と連動したハンマーで弦を叩いて音を出すなど、ブルーマン特有の楽器もあります。そこに対応できるかも判断材料の一つです。奏者としては、人を巻き込んで盛り上げることができるか。一人の優秀な奏者よりも、全体を底上げできるパフォーマーを求めているので、そこに全てのエネルギーを注げるかも重要ですね。

――SHUKIさんはブルーマンのどんなところを見て、演奏に生かしていたのでしょうか。

SHUKI:3人のブルーマンは言葉を発しません。だからショーの最中は、ずっと動きを見て「ブルーマンは何をしたいのか」を考えていました。僕が担当していたドラムは、奏者たちに変化を告げる役割も担っていたので、本番中は常にドラムの横にあるモニターを見て、3人の動きを見つめていました。3人の表現に観客が反応したら、その感情もプラスして演奏をするようにしています。

――演奏をしながら、他者にアンテナを張り続けている。すごいことです。

SHUKI:僕はブルーマンに参加するまで、プロとしての演奏経験はありませんでした。何の経験もなかったからこそ、ブルーマンの世界にすっと入ることができたのかなと思っています。バンドで活動しているいまも、ブルーマンの考え方がベースになっていますね。実は日本でデビューをする前に、2007年にアメリカのフロリダで1ヵ月の研修がありまして、そこで初舞台を踏んだんです。公演中に、パフォーマーがケガをするアクシデントがあったのですが、そこで「繋げ」と英語で指示があったんです。「えっ!」と驚きましたが、舞台上を無音にするわけにいかないので、とりあえず何か演奏しようと即興して。5~6分くらいだったと思いますが、10分以上に感じましたね……。お客さんの反応を見る余裕なんてなかったけれど、何が起きても対応するしかないという度胸はここでついたと思っています。

――ブルーマンの現場は、いまのパフォーマンスにどんな風に影響を与えていますか。

SHUKI:そうですね。僕は鳥取出身なのですが高校を卒業して、東京で音楽の専門学校に進学したいと新聞配達など、資金稼ぎのためにさまざまなアルバイトを経験しました。専門学校は寮制で、最終的に音楽に集中できる環境を維持できないと断念して。派遣会社に入って仕事をしていたときに、音楽雑誌でブルーマンの奏者募集の記事を見て応募したんです。ブルーマンのショーは大変なことも多いけれど、ドラマーには人を導く役割もあると聞いて、感銘を受けました。ステージでは表現力を鍛えられました。音楽的にはさまざまな観点があることを学びましたし、それはバンド活動にも生きています。自分では気付いていなかったのですが、アニメ「ONE PIECE」の主題歌に「PAINT」という僕らバンドの曲が使われたのですが、ドラムに「ブルーマンの要素が入っているね」と言われて、改めて自分のルーツになっているんだと感じました。いまブルーマンで演奏できるとしたら、もっとうまくできると思います。スケジュールの都合で奏者として出演できませんが、僕が一番ショーに出たいと思っているはずです。

――過去に韓国で公演をした際には、BTSの「Dynamite」を演奏するなど、公演地に合わせた選曲もありました。

バイロン:日本でも皆さんと一体になれる曲を考えている最中です。

――I Don't Like Mondays.の曲はもちろんですが、バンドがSnow Manに提供した「LOVE TRIGGER」などSHUKIさんに縁がある曲を演奏してもらえたら盛り上がりそうです。

SHUKI:そうですね。

バイロン:ローカルカルチャーを大切にすることは全世界でやっていることなので、街になじんだ音楽を演奏して、盛り上げたいです。

――最後にブルーマンの楽しみ方について、教えてください。

バイロン:何の前提も必要ありません。なのでオープンマインドでショーに参加しに行くという気持ちでお越し頂きたいです。ロックや、ミュージカルなどと違う。全く新しい、新鮮で未知の世界を味わってほしいです。音楽にもパフォーマンスにも国境はありません。ボーダーレスな世界を先入観なしにお楽しみ頂きたいです。

SHUKI:僕も昔そうだったんですけど、初めていくときって、予備知識とか知らないとダメかな、勉強した方が良いのかなって思いがちですよね。でも、ブルーマンは今日観たいと思ったら、すぐに劇場に行って理解できる。言葉もないので難しく考えずに、そういうブルーマンの自由さも見てほしいです。ショーの感じ方に正解も不正解もないので、終演後は一緒に見に行った人と感想を話し合うのも楽しいと思います。後は、ずっとドキドキする時間が続いて、最後は一体感が生まれると思うので、吊り橋効果じゃないですけど、デートにもオススメです。見ると言うよりは体感してほしいです!

取材・文・撮影=翡翠