「仕事がもらえる人・もらえない人」について語った里崎智也氏(左)と五十嵐亮太氏(右)
「仕事がもらえる人・もらえない人」について語った里崎智也氏(左)と五十嵐亮太氏(右)

里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第2回は、「仕事がもらえる人・もらえない人」について語り合った!

【写真】新連載スタート! 里崎智也×五十嵐亮太 対談フォトギャラリー

■仕事がもらえる人・もらえない人の違い

――第2回を迎えた「ライフハックベースボール」ですが、今回からはテーマを決めてお話しいただきたいと思います。いつの時代も「夢のない若者が多い」と言われがちですが、ともに40代を迎えているおふたりには夢がありますか?

五十嵐 夢か......。僕の場合は、現役引退してからは具体的な高い目標や夢はなくなった気がしますね。もちろん、夢があればそれは楽しいことだし、いいことなのかもしれないけど、今は現状に満足しているので、無理してまで「夢を持とう」とは思わないです。

里崎 僕の場合は、現役を引退した直後に「第二の人生でも1億円を稼ごう」という目標を定めてそれを実現したけど、そもそも人生って、「自分の定めた山をどうやって登っていくか?」というゲームみたいなものだと思うんです。

五十嵐 えっ、どういうこと?

里崎 「富士山に登りたい」という夢があるとするでしょ。で、海抜0メートル地点から一歩、一歩登っていくのも「富士山登頂」だけど、5合目までは車で行って、そこから静岡ルートや山梨ルートを選択して歩いてもいい。あるいは、もっとお金があったら、頂上付近までヘリで行っても登頂は登頂。要は、手段は何でもいい。自分が確実に頂上にたどりつけるルートを探せばいい。人生はそういうゲームなんだと。

五十嵐 僕なんかはついつい、「歩いて登るしかない」って考えがちだけど、そういう発想の転換こそ、自分が生き残るために大切な考え方なんだと思いますね。それこそ、仕事が多い人と、そうじゃない人の違いなのかもしれない。

――前回のお話でも「仕事をもらえる人・もらえない人」という話題が出ました。両者の違いはどこにあると思いますか?

里崎 その点に関しては、僕の考えはシンプルです。仕事をもらうための方法はふたつあって、ひとつは「すぐに連絡がつくかどうか」、もうひとつは「その人じゃないといけない理由があるかどうか」ということ。

だから僕は引退してすぐに、街のハンコ屋さんに行って名刺を1000枚作って、会う人、会う人、全員に配りまくって連絡先を伝えました。そして、僕らの仕事って、実は「誰でもいい」という部分もあるんですよ。だからこそ、「この仕事は里崎じゃなきゃダメなんだ」という理由を、きちんと言えるようにしておかなければいけない。

■自分なりの特徴、個性をどうやって出すか(五十嵐)

五十嵐 今、サトさんが言ったように僕らの仕事って......「誰でもいい」と言うと語弊があるけど、「別に五十嵐じゃなくてもいい」というか、「他の人でも替えがきく」という部分は確かにあるよね。そこで、「五十嵐ならではの特徴をどうやって出すか?」というのは、自分でも意識していますね。

里崎 たぶん、メディアの人たちにとって「里崎はすぐに連絡がつく」というところと、「人とは違うちょっと変わったことを言ってくれる」という点で重宝されているんだと、自分では思っています。それに「何を言ってもきちんと返してくれて、黙ることがない」という理由もあると思うな(笑)。

五十嵐 僕の場合は会話のキャッチボールが好きだし、苦手ではないので、「五十嵐ならスムーズに受け答えをしてくれるだろう」ということと、「たまに軽くボケてくれるだろう」というところが評価されてるのかな(笑)。その上で、「なるべく人に不快感を与えないように」と意識していますね。

――いずれにしても、自分の特徴や長所を理解した上で、きちんと自己主張をしたり自己アピールをすることが大切だと思います。では、「効果的な自分の見せ方、アピールの仕方」はありますか?

五十嵐 僕らは現役時代から、チーム内の競争で勝ち抜いていくために「自分の長所はどこにあるんだろう?」と考える習慣が身についているんだと思います。常に「自分の強みは何だ?」と考え続けることがまずは大事だし、昔からそうやっているから、僕もサトさんも当たり前のことを当たり前にやっているだけなのかもしれない。

里崎 僕は現役時代から常にメディアを意識して、「どうすれば露出できるか?」ということばかり考え続けてきましたね。だから、試合後にファンの前で歌を歌ったり、踊ったり、「野球以外」のことも意識していました。

五十嵐 ここだけの話、当時のサトさんを見ていて、「ちょっと前のめりすぎるんじゃない、この人。そこまで頑張らなくてもいいんじゃないの?」って思いは、正直あった(笑)。

里崎 それは亮太がセ・リーグだからだよ。パ・リーグで、しかもロッテだと、自ら動かないと誰も話題にしてくれない。もし僕がジャイアンツの選手だったら、あんなに努力しなくても有名になれたと思うもん。ただ、ロッテだからこのキャラが生まれたという部分はすごく大きいけどね。

五十嵐 いや、もしジャイアンツだったら、周りがスターばっかりだったから、サトさんの個性が埋没していたかもしれないよ。......あっ、でもサトさんなら、その環境ならその環境の中で、また別の方法で目立っていた可能性が高いか(笑)。

■覚悟を決めれば、たいていのことはできる(里崎)

――「ロッテだから今のキャラになった」といっても、それ以前も、その後も、ロッテ出身者で里崎さんのようなキャラクターは生まれていません。やっぱり、里崎さんが独自の個性を持っていたんじゃないですか?

里崎 いやいや、ただ単に他の人は僕みたいに、「有名になりたい」という野心がないだけですよ。だって、僕がしてきたことは誰だってできることだから。特殊能力なんて何もいらないんだから。

五十嵐 でも、ファンの前で歌を歌ったりダンスを踊ったり、積極的にメディアに出て行ったりするのは、まあまあ特殊能力だと思うけどな。

里崎 いきなり「英語をしゃべれ」と言われたら、それはできないけど、歌を歌うぐらいなら誰だってできるじゃん。全然、特殊能力じゃないでしょ。

五十嵐 歌を歌うことはできるけど、やっぱり恥ずかしさとか照れがあるから。

里崎 それは能力の問題じゃなくて、羞恥心の問題だから。「やるか、やらないか?」という覚悟の問題で、能力の問題じゃない。能力の問題ならできないこともあるけど、覚悟の問題なら、たいていのことはできるよ。

五十嵐 「羞恥心を捨てる」とか「覚悟を決める」というのも、誰にでもできることじゃないし、サトさんならではの特殊能力だと思うけど......やっぱり、サトさんはそもそも頭がいいし、努力する才能もあるということも大きいと思いますよ。

里崎 僕の場合は、現役時代にボビー・バレンタインロッテの監督に就任して、積極的にファンサービスに取り組んだことや、同時期にチームが強くなって日本一になったこと。あるいは、城島健司メジャーに行くことが決まって、僕に日本代表入りのチャンスがめぐってきて、WBCで世界一になって大会ベストナインに選ばれたことなど、奇跡的に運がめぐってきたということも大きかったよね。

五十嵐 でもさ、運をつかむのも一種の能力だと思うんです。僕も自分のことを「人の縁に恵まれた運がいい人間だ」と考えているけど、サトさんには運をつかむ能力もあったということなんじゃないかと。

――お話が白熱してきましたが、時間となってしまいました。ぜひ次回は「運のいい人、悪い人とは?」というテーマで、この続きをお話しください。

里崎・五十嵐 ホントに時間が経つのはあっという間だね(笑)。では、また次回!

(連載第3回に続く)

【プロフィール】
里崎智也(さとざき・ともや) 
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年ドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』 

五十嵐亮太(いがらし・りょうた) 
1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説として活躍している。

構成/長谷川晶一 撮影/熊谷 貫

「仕事がもらえる人・もらえない人」について語った里崎智也氏(左)と五十嵐亮太氏(右)