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規制非対応のモデル、規制非準拠の地域の安全性は

ポルシェは718ボクスター、718ケイマン、マカンの欧州向けの販売を終了する。7月から欧州連合(EU)で導入されるサイバーセキュリティ規制に適合しないためだ。

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しかし、英国のようなEU以外の地域ではまだ販売が続けられている。購入希望者にとっては嬉しいニュースかもしれないが、安全上のリスクはどれほどあるのだろうか?

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ポルシェ718ボクスター/ケイマンなど複数のモデルがEU内から撤退する。

まず、規制の内容を簡単に振り返っておこう。新しいサイバーセキュリティ規制「UNECE WP.29」は、2024年7月1日からEU全域で施行される予定。これに適合しないモデルは、新車登録ができなくなる。今後EUで販売されるすべての新車には、開発、生産、出荷後の各段階でサイバー攻撃を含む70の脆弱性から保護されていることを示す証明書を添付しなければならない。

規制を満たすために既存モデルを改造するのは簡単ではなく、コストもかかってしまう。そのため、フォルクスワーゲンe-Up!やポルシェ718をはじめとする多くのモデルがEUでの販売から撤退している。

また、右ハンドル市場向けの生産台数は比較的少ないため、この規制に準拠していない英国などでも販売中止となるケースが多いが、ポルシェのように販売を継続するメーカーもある。

UNECE WP.29との関連が深いのが、2022年7月に施行された一般安全規制「GSR2」だ。こちらは安全性に関わるもので、先進緊急ブレーキ居眠り運転とドライバーの注意力欠如の検知、インテリジェント・スピードアシストなど、少なくとも20の安全機能をすべての新車に標準装備することになっている。

もちろん、すでに多くのモデルがGSR2に対応していたが、現在は規制によって対応が義務づけられている。UNECE WP.29と同様、既存モデルでは適合が難しいことから販売終了を余儀なくされたものもある。

GSR2は、2050年までに交通事故死をゼロにするというEUの目標達成に向けて基礎となる規制だ。そのため、自動運転技術や高度なコネクテッド・システムに依存する自動車が今後ますます増えていくだろう。UNECE WP.29の目的の1つは、第三者によるハッキングを防ぐことだ。

実際のところ、携帯電話やパソコンと同様に、自動車もハッカーターゲットになる危険性がある。電子的手段による車両盗難はすでによく知られた問題だが、自動車のオペレーティング・システム(OS)にマルウェアインストールし、その削除の代金を要求するという手口が問題視されている。

一方、メーカーによる無線(OTA)アップデートの利用が増加しているが、これにもリスクが潜んでいる。自動車のサイバーセキュリティを強化し、メーカーと消費者の信頼を高めることで、より高度な安全機能、車両間通信、さらには自動決済など、さまざまな自動運転および車載デジタルサービスが可能になるだろう。

これを実現するためには、設計と生産、使用のあらゆる段階でデータとサイバー保護を行う必要がある。718やマカンのようなモデルに欠けているのは、このレベルの保護機能だ。

しかしポルシェは、これらのモデルは安全だと主張している。広報担当者は取材に対し、次のように答えた。

「例えば718のプラットフォームが開発された当時は、新しい規制内容についてはまだ知られておらず、適用もされていなかったため、対応することができませんでした。しかし、これは比較的古いポルシェ車が安全でないという意味ではありません」

「現行モデルに関してはサイバーセキュリティ定期的にチェックしており、世界のセキュリティ・コミュニティとも協力しています」

規制に準拠していないEU以外の販売地域では、サイバーセキュリティの安全性をどのように見ているのだろうか。英国では運輸省が規制の導入を検討しているというが、具体的な時期については明らかではない。

英国の自工会に相当する自動車製造販売者協会(SMMT)は、国内で販売されるモデルの安全性について消費者が恐れる必要はないと述べている。

サイバーセキュリティ要件は、EUと北アイルランドで販売されるすべての車両に適用されます。メーカーが英国向けだけに異なるバージョンの車両を生産する可能性は極めて低いため、国内の消費者も恩恵を受けることになります」

「生産が終了するごく少数のモデルはアップグレードされない可能性があり、理論的には一定期間販売される可能性もあります。しかし、右ハンドル車がEU市場全体に占める割合はごくわずかであることを考えると、新型車が規制非準拠の仕様で投入されることはあり得ないでしょう」


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