実用品としての無骨さと、機能美が感じられる工具類。さしずめ、ホームセンターは「工具類のテーマパーク」とでも言ったところだろうか。

しかし以前X上では、そんなホームセンターで発見された「用途不明すぎる工具」に、驚きの声が多数寄せられていたのだ。

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■このレンチ、何かがおかしい…?

今回注目したいのは、Xユーザーのコムさんが投稿した1件のポスト。

「これどこで使うんだろ」と記された投稿には、「モンキーレンチ」(モンキレンチ)と呼ばれる工具がズラリと並んだホームセンター店頭の写真が添えられていた。そして、注目すべきは撮影者(コムさん)が手にとったレンチのサイズ感である。

ロブテックス

こちらはなんと、まるでテニスラケットほどはあろう、明らかに異様な大きさをしているではないか。

 

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■「両手武器説」が濃厚に…

右側に吊るされた「2番目に大きいレンチ」と比べても、そのサイズ差は明らか。あまりに巨大なレンチは見た者に衝撃を与え、件のポストは投稿から数日足らずで1,500件以上ものリポストを叩き出すほど、大きな話題となっている。

ロブテックス

用途に関しては、多数のXユーザーから「ホラーゲームとかの、比較的初期の武器やな」「ドラマとかの喧嘩の道具?」「カチコミ用でしょ」「ムカついたとき用…?」「新人の再教育用に」など、非常に物騒な声が寄せられる事態に。

なお、ポスト投稿主・コムさんは、こうした物騒なリプライ群に「両手武器説」というリプライを送る、半ば「両手武器説bot」と化していたのだった。

しかし、中には「職場で使ってます」「これより大きいレンチもあるよ」といった意見もチラホラ。そこで今回は、一般人からすると巨大で仕方ないレンチの用途を探るべく、同製品を展開する総合工具メーカー「株式会社ロブテックス」に詳しい話を聞いてみることに。

その結果、正に「後頭部をレンチで殴られた」ような、衝撃的事実が明らかになったのだ…。

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■「通常のレンチ」と数値を比較して驚き…

ある日、ホームセンターで買い物を済ませた後、店舗内を散策して新しい工具類をチェックしていたコムさん。その際、件のモンキーレンチを発見し、「大きさ」に衝撃を受けたのだ。

コムさんは「仕事上、ボルトやナット等を締めたり緩めたりと、レンチの一般的な使用方法は知っています。しかし、そこまで大きなレンチを必要とした経験がないため、『これが使われるのはどんな場所? どんな仕事?」という好奇心から、今回のポストを投稿しました」と、説明している。

ロブテックス

なお、レンチには「呼び(サイズ)」という数値があり、今回話題となったレンチは600。そして、コムさんの日頃の業務では「大きくても250のレンチがあれば事足りる」というのだから、倍以上あるそのサイズに改めて驚いてしまう。

ロブテックスに確認したところ、件のレンチは「モンキレンチ(強力型)」の「品番:M600」で、全長615mm、重量3.4kgもある商品と判明したのだ。

 

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■このメーカー、完全にノリノリである

ロブテックス

こちらのレンチがどのような業界、シチュエーションで活躍するのか尋ねると、神妙な顔つきのロブテックス担当者からは「ご投稿者さまがたくさんコメントされていたように、両手武器として製造されたものとなります」と、耳を疑う回答が。

しかし、担当者は即座に「冗談です(笑)」と前言を撤回し、完全にノリノリである

そして笑顔を浮かべつつ、「大型機械のメンテナンスや、プラント機器・設備の組立時や保守作業に使われています。また、造船や橋梁工事等にも使われると聞いております」と、その活躍ぶりについて説明してくれたのだ。

レンチである以上、もちろん六角ボルトを回すための工具だが、打撃スパナやパイプレンチなど、他の工具で大型ボルトを締める・緩める際に、ナット側を押さえるためにも使用されるという。

ロブテックス(画像は昭和8年のモンキレンチ)

「モンキレンチ(強力型)」はかなり歴史のあるシリーズで、担当者からは「1928年昭和3年)に製造を開始し、現在と殆ど変わらない形で、100年近く製造・販売し続けています」と、驚きのコメントが。

また「今回のM600は後に追加されたサイズで、正確な発売日は記録が残っておりませんが、確認できた最も古い図面が72年(昭和47年)のもので、それ以前の社内史等にも存在しないため、推測となりますが、72〜73年頃に発売されたものと思われます」とも説明していた。

ちなみに、同社の「モンキレンチ(強力型)」は51年(昭和26年)に全国第1号となるJIS表示認可を受けており、これは「モンキレンチのJIS規格ができて、認可された最初の商品」という意味である。

約1世紀という長い歴史の中、六角ボルトやナットのサイズバリエーションの変遷とともに多数のニーズを受け、それらが商品化し、現代に受け継がれていったのだろう。

 

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■この「倍のサイズ」も存在する…?

ロブテックス

1888年(明治21年)創業となるロブテックスは、日本で初めて鍛造で国産化に成功した「モンキレンチ」を筆頭に、確かな品質管理と長年培われた鍛造ノウハウが多数のユーザーに愛され続けている総合工具メーカー。

そんな同社の看板商品がSNSで大きな話題となったのは、正に「寝耳に水」であった模様。

ロブテックス

ロブテックス担当者は「現在は進化により、軽量・ワイドなモデルのレンチが発売されており、そうしたモデルがレビューされることがあっても、この『元祖モンキレンチ』は当たり前の存在すぎて話題になることは少なく、大きなサイズを取り扱ってくださるお店のお陰で再度注目頂きまして、大変嬉しく思います」と、感動した様子を見せる。

続けて「ただ当社にはまだ、更に倍のサイズである1200ミリのパイプレンチ『PW1200』が存在します!」「店舗型のお店で見つけられることはあまりないかもしれませんが、ぜひこの商品も探してみてください!(笑)」と、衝撃のコメントが得られたのだ。

ゲーム『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』にて、ラスボスとされていた魔王バラモスを倒した後に発覚した、衝撃の事実を知ったときのような心境である…。

また、担当者は「『ちゃんとした工具は高い!』という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、プロ向け工具をお使い頂くことで、身をもってその精度や使いやすさを実感して頂けると思います」「ホームセンターでエビ(LOBSTER)のマークを見つけたら、ぜひお手に取って頂けると嬉しいです」とも呼びかけていた。

ロブテックス

ブランド名が「LOBSTER(ロブスター)」のため、同社を海外のメーカーと勘違いしていた人もいるのでは。しかし、本社は東大阪、工場は鳥取にある同社は「ものづくり大国」日本を100年近くに渡って支え続けてきた、世界に誇るべき日本企業なのだ。

 

■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力と機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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