京浜工業地帯を走る鶴見線には、昭和にタイムスリップしたかのような「超レトロ」な存在の駅があります。そこはまさに“異世界”でした。

昭和で時が止まったかのような「国道駅」

京浜工業地帯を走る鶴見線では2023年12月から、新型車両E131系が投入され、2024年3月のダイヤ改正で全車がE131系に統一されました。最新の電車が登場した一方で、沿線の駅はほぼ、そのまま。なかでも、昭和にタイムスリップしたかのような「超レトロ駅」とのギャップが鮮烈になっています。

その駅は、起点の鶴見駅から1駅の「国道駅」です。「第一京浜国道国道15号)」をまたぐ高架橋に隣接し、駅の入口が国道に面しているという立地が、その名の由来。鶴見線の前身である私鉄の鶴見臨港鉄道の駅として1930(昭和5)年10月に開業し、駅舎は現在に至るまで大きな変化はありません。

国道駅は急カーブ上にある相対式ホーム2面2線という構造。列車から降りると、車両とホームの間に大きな隙間がある箇所や、車両がホームに擦りそうな箇所が目につきます。

最新車両のE131系は、他路線の車両と異なり、車体の幅が狭く上から下まで膨らみのない“ストレート車体”となっていることが特徴です。国道駅の急カーブや「車両がホームに擦りそうな箇所」を見ると、このような車体になったこともうなずけます。

列車から降りて国道駅のホームに立っただけでは、まだ「レトロさ」を感じることはできませんが、階段を降りると徐々に「昭和」の雰囲気が。駅は無人駅となっており、簡易suica改札機があるのみです。

最大の魅力はガード下の雰囲気

改札を出てガード下に降りると、まるで時が止まったかのような空間が広がり、圧巻です。ここは複数のテナントが入居する商業施設として設けられたものでした。今はひっそりとしていますが、コンクリート製の重厚なアーチ構造が支えるガード下はまさに“異空間”であり、国道駅の最大の魅力と言えるでしょう。

さらに、ガード下を出て、歩行者信号付近から駅の外壁を見ると、ネットが張られている箇所に複数の穴が開いています。これは1945年に米軍が横浜市周辺で無差別攻撃を行った際の、戦闘機による機銃掃射の跡とされています。国道駅は、そうした歴史の証人でもあるのです。

ちなみに、鶴見線ではE131系の導入に伴い、初の車内自動放送も導入されました。自動放送での国道駅の発音は、道路を指す一般的な語としての「こくどう」の読み方と異なり、2音目の「く」にアクセントがあることが特徴です。

鶴見線のE131系(乗りものニュース編集部撮影)。