普段の日常生活で、何気なく行うシャンプー。特に意識することもなく、髪を洗いがちだが、髪の健康を保つために非常に大切である。正しいシャンプーの仕方を実践しないと、髪の傷みや抜け毛、かゆみなどの原因になってしまう。

 そこで今回は、滋賀県彦根市で美容室を経営し、シャンプーソムリエ(ヘアケアやシャンプーに関する専門的知識を持つ資格制度)である三村浩章さん(57歳)に、正しい髪の洗い方やシャンプーの選び方について話を聞いた(以下、本人への取材をもとに構成)。

シャンプーの仕方が頭皮や髪質に影響する

 いきなりですが、「正しいシャンプーの仕方は?」と聞かれたら、どのように答えるでしょうか。髪を「洗う・流す・乾かす」の3ステップが基本になるわけですが、シャンプーの仕方は人それぞれで意見が異なります。

 私は幼い頃から美容室の子供として育ち、長年にわたってサロンワークをしてきました。まず言えるのは、物心ついた頃から、風呂場という密室の中で行ってきたシャンプーについて、おそらく誰も正確なやり方を教わってこなかったということ

 ただ、日頃のシャンプーの仕方によって、頭皮や髪質に大きな影響を与えます。だからこそ、正しい知識を身につけていくことで、頭皮や髪質の健康を保つことが不可欠になります。

シャンプーは2度洗いが基本

 私の考える正しいシャンプーの仕方をお伝えすると、シャンプーは2度洗いが基本」ですサロンでヘアカットする際は、2回シャンプーをしてくれると思いますが、それを自宅でも継続することが、ヘアケアにおいては重要になります。

 特に、髪の毛の油分が多い人や、普段から整髪料をたくさん付ける人は、一度のシャンプーだけでは汚れが落ちきらないこともあるので、2度洗いをおすすめします。

 次にシャンプーの洗い方について解説していきます。基本的に男性は短髪の方が多いため、髪の傷みを意識しなくても問題ありません。ただし、皮脂の分泌が多いので、しっかりと洗っていくことが大切です。シャンプーを頭皮に付けるイメージで、かゆみが出やすい髪の生え際を中心に満遍なく洗っていき、頭皮を下から上へ引き上げるように意識するといいでしょう。

◆洗い流しは2倍の時間をかける

 1回目のプレシャンプー(予洗い)でお湯を使って洗い流せば、汚れの60〜70%は落とせます。そして2回目の洗い流しのときは、1回目のシャンプーで1分間かけていたら、2回目は2倍の時間をかけ、じっくりと洗い流すことが重要です

 洗い流しが足りないと、洗浄剤やトリートメント剤が残ってしまい、フケや背中ニキビができる要因となります。髪の毛の乾かし方で良くないのは、水分が残ったままだと雑菌が繁殖してしまい、頭皮が臭くなる原因になります。

 ドライヤーを髪に当て、乾かすことでヘアスタイルを決めていくわけですが、水分が残ったまま枕で寝ると水素結合が起こり、アイロンがかかったような状態になることで、寝癖になってしまいます。ちなみに寝癖になっている部分は、毛先が悪いのではなく、根元が悪いです。寝癖を直す際は、跳ねている髪の毛をめくって、根元を水で濡らしてドライヤーで乾かすといいでしょう。

シャンプー選びの判断基準は?

 シャンプーの選び方にも判断基準があります。シャンプーには男性用や女性用、頭皮用や髪の毛用と種類が分かれていますが、頭皮用シャンプーに髪の毛を綺麗にするという作用はありません。逆もしかりで、髪の毛用シャンプーでは頭皮を綺麗にすることはできないのです。

 なので、頭皮用と髪の毛用のシャンプーを使い分けることが重要です。さらにシャンプーの選び方で大事になるのは“値段相応”だということ。

 私は30年以上、ヘアスタイリングに携わっていて、本当に多種多様なシャンプーを見てきました。そのなかで、たどり着いたのが「100ml/1000円」が最低ラインだということです

◆トリートメントは安いものでも充分

 その「100ml/1000円」の代表格が、サロン専売品のアミノ酸シャンプーです。これは低刺激でしっとりと洗い上げてくれ、髪の毛が傷みにくいのが特徴です。

 ただし、洗浄力が弱いため、泡立ちにくいという欠点があります。しかも、油汚れに特化しているわけではないので、しっかり油分を落とそうと思えば、油汚れ用のシャンプーを使ったほうが機能的かつコストも抑えることができます。

 他方、シャンプーした後に使うトリートメントは、そこまでお金をかける必要はないです。それよりも、自分の髪質に合ったシャンプーにお金を使ったほうが合理的だと言えます。ドラッグストアやスーパーなどで安く購入できる高級アルコール系(石油系)界面活性剤入りのシャンプーは、洗浄力が高く泡立ちやすいのが特徴です。

◆ノンシリコンシャンプーは本当に必要?

 知識として抑えておきたいのは、かつてのような石油由来の界面活性剤入りシャンプーは、もう日本で製造されていないということ。なので、頭皮への影響は心配なく、安全性の面では問題視しなくて大丈夫だといえます。

 しかし、肌刺激という意味では強いため、先述した「100ml/1000円」のシャンプーを購入するのが理想ではあります。

 また注意したいのは、ノンシリコンシャンプーと謳っているものです。本来は体内に入れても問題がない成分であるシリコンを、あえてシャンプーの成分から抜いてしまうことで、髪がきしむ原因を作り、キューティクルを痛めてしまうからです

 以上のように、自分に合ったシャンプーを選び、正しいシャンプーの仕方を実践することで、髪の健康を維持していくことが大事なのではないでしょうか。

<構成/古田島大介

【三村 浩章】
合資会社サステア代表。滋賀県彦根市に美容室「hair make COUR」を経営。一般社団法人シャンプーソムリエ協会(JSSA)が認証するシャンプーソムリエとして、正しいヘアケアの知識を日々発信している。2021年にオリジナルシャンプーブランド「SUSTAIR」を販売

【古田島大介
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

57歳とは思えないほどサラサラな三村さんの髪