化け物のような「分かりやすく怖い要素」がないのにドキドキする、不気味なPCゲーム「POOLS」が話題です。何もなさすぎるのがかえって怖いってこと?

【動画】実際にプレイしている様子

●無人のプールをさまようゲーム「POOLS」

 POOLSはインディースタジオのTensoriが4月26日に発売した、いわゆる「ウォーキングシミュレーター」(1250円)です。プールやウオータスライダーがそこかしこに配された、タイル張りの迷路に投げ出され、プレイヤーは出口(らしきもの)を探して歩き回ることになります。

 先述した通り、迷路には追いかけてくる化け物もいなければ、異物が突然視界に現れるドッキリジャンプスケア)もありません。ただ、無人で閑散とした風景が、近年海外で流行しているネットミームリミナルスペースLiminal Spaces)」(※)と同種の不気味さを感じさせます。

※本来は廊下、階段、ロビーなどの、移動のために使われる人工的構造物を指す建築用語。そのような空間は「無人だとなんとなく不気味」に感じるという声が海外で掲示板を中心に広まりネットミーム化。「The Backrooms」のようにリミナルスペースのバックボーンを空想して楽しむコンテンツも派生しており、その中にはPOOLSが参考にしたと思われる「The Poolrooms」という空間もある

 X(Twitter)では、ゲーム開発者のニカイドウレンジさんが「基本迷路を探索するだけなのだけど、それでもドキドキ感が全然味わえた」「たぶん音響の効果なんだと思う。自分の服がすれる音とか、空洞の音とか」と、デモ版の感想をプレイ動画とともに紹介。「幼いころによく見た悪夢に似ている」「死んだら永遠にこういう空間をさまよい続ける…とかだったら怖い」「誰もいない巨大な人工物、怖くて気持ちいいよね」などと反響を呼びました。

●製品版をプレイしてみると……

 筆者も早速製品版で最後まで遊んでみたのですが、確かにその怖さは評判通り。空虚な空間が醸し出す圧迫感や、空気の流れが生み出す環境音、しまいにはコツコツと響く自分の足音すら恐怖心を喚起してきます。シャワーを浴びていると、時々背後に感じるゾワゾワのような。

 こうした「恐怖を構成する要素」については、ストアページでも「POOLSは道に迷うこと、暗くて狭い空間への恐怖を利用しています」などと説明されています。ただ、POOLSがこうした心因的な理由だけで怖いゲームなのかというと、少々疑問が残ります。筆者には、どうも作り手が「何かを隠している」ようにしか思えないのです。

※以下、「POOLS」のネタバレになり得る記述があります

 例えば、何げなく迷路を歩いていると、視界の端に「形容しがたい何か」の影がチラチラ走るような感覚がふと訪れることがあります。環境音についても、「風のいたずら」だけでは説明がつかないような、不愉快な音に聞こえることがあります。先ほど「自分の足音すら怖い」と書きましたが、あるシーンで「歩いていないのに音が鳴った」のは、単なる不具合か“気のせい”なのでしょうか。疑念はゲームが進むほどに増していき、エンディングで(ネタバレ回避の意味もあって)言いようのない感覚をもたらします。

 もっとも、細かい異変(?)については「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というやつで、「怖い怖いと思っているから、何でもないものまで怖く感じている」だけなのかもしれません。筆者が自信を持っていえるのは、中盤で味わえる「不気味な迷路にストレスを溜めさせられてから滑るウオータスライダーの爽快感」くらいです。恐怖感も面白さも、人によって大きく変わるゲームと思われるので、手放しでおすすめはしませんが、気になるかたはまず無料のデモ版を試してみてください。

※動画提供:ニカイドウレンジさん

屋内プール施設のような迷路をひたすら探索する「POOLS」