普段の日常生活で、何気なく行うシャンプー。特に意識することもなく、髪を洗いがちだが、髪の健康を保つために非常に大切である。正しいシャンプーの仕方を実践しないと、髪の傷みや抜け毛、かゆみなどの原因になってしまう

 前回の「正しいシャンプーの仕方を聞く」では、滋賀県彦根市で美容室を経営し、シャンプーソムリエ(ヘアケアやシャンプーに関する専門的知識を持つ資格制度)である三村浩章さん(57歳)に話を聞いた。

 後編となる今回はシャンプーに興味を持った原体験や、シャンプーソムリエとしてプロデュースするシャンプーブランド「SUSTAIR (サステア)」の開発背景などについて話を聞いた。

◆“シャンプーオタク”になった原点とは

美容院を営む両親の下で育ったという三村浩章さん。自らを“シャンプーオタク”だと語るが、その原点は幼少期にあるという。

「幼少期からシャンプーやトリートメントにも興味がありましたが、当時は石油系界面活性剤入りシャンプーが今よりも毒性が強く、洗髪後はパサつきが気になっていたんです。そんななか、美容専門学校に通い、美容師免許を取得し、初めて勤めたサロンが自分にとって大きなターニングポイントになりました

 そのサロンで使っていたのはアミノ酸入りシャンプー。三村さんも試してみると、髪の毛がきしまず、とても使用感の良いものだったとか。

◆就職先のサロンで衝撃を受けた「出合い」

「これは今振り返っても大きな衝撃で、本当に大きなカルチャショックを受けたのを覚えています。そこから、シャンプーの奥深さを知り、多種多様なシャンプーを使うようになったんです

 もうひとつの転機は30代前半に訪れた。当時は仕事と子育てに追わる、多忙な生活が何日も続いていたという。そんなある日のことだ――。

「急に自分の頭の臭いが気になるようになったんです。仕事のストレスからくるものだったと思いますが、よりしっかり洗うため、シャンプーを2回するようにしたところ、臭いがしなくなりました。そうした体験から『シャンプーは2度洗い』を心がけてきたおかげで57歳の今でも、髪の毛のボリュームを維持することができています

◆頭皮や頭髪に関する悩みは尽きない

 そんななか、20代の頃から美容師を続けてきたなかで、頭皮や頭髪にまつわる悩みや問題は、本当に尽きないと切に感じていたという。

 具体的には「シャンプーを変えたら、急に髪質が悪くなった」「自分に合ったシャンプーを選ぶ方法がわからない」「今までずっと使ってきたシャンプーが髪に合わなくなってきた」などの悩みだ。

「こういったお客様のお悩みに対して、何か自分でもできないかと考えていたところに、シャンプーソムリエの創始者である関川忍さんとお会いしたのが、シャンプーソムリエの資格を取得するきっかけになりました

 シャンプーソムリエとは、一般社団法人シャンプーソムリエ協会(JSSA)が認定する資格で、全国に1000人ほどの有資格者がいるという。

◆ヘアスタイルに合わせてシャンプーを変える時代

シャンプーの原料や成分に関する専門知識と、ヘアケアに必要な分子栄養学の基礎知識を身につけ、美しい髪と健康な頭皮へと導くヘアケア方法や最適なシャンプーの提案ができるもので、シャンプーソムリエは個々の髪質やライフスタイルに合わせて、最適なシャンプーを提案し、1人でも笑顔になってもらえるように働きかけていく役割を担います」

 背景には、時代とともに価値観や生活様式が変化し、さらには数えきれないほどのシャンプーが世の中に出回るようになったことがあるという。

「私は数年前にシャンプーソムリエのディプロマをいただき、いろんな角度からお客様に対してシャンプーを提案しています。そのなかで思うのは、自分に合うシャンプーの判断基準です。毛質や傷みでシャンプーを変えるのではなく、『ヘアスタイルによってシャンプーを変えていただきたい』と私は考えています。パーマをかけたときはどうしても乾燥しがちで、髪のハリもなくなってしまいます。そのため、保湿系シャンプーを使って、髪の保湿に努めるといった具合です」

◆正しいヘアケアとは?

 今の時代、シャンプーで髪の質感も変えられるようになってきているという三村さん。

一方で、自分に合わないシャンプーを使い続けていれば、少なからずストレスが溜まってきてしまうでしょう。自分のヘアスタイルに合わせた形でシャンプーを選び、正しいシャンプーの仕方をしていくのが、ヘアケアをする上でベストなのではないでしょうか」

 そんな三村さんがサロン帰りの美しさを365日継続するブランドとして2021年に販売したのがシャンプーブランド「SUSTAIR」。髪のダメージケアに特化したセルフビューティーケアブランドで、「3ステップヘアケアシリーズ」という形で構成されている。

◆髪の毛が綺麗になれば笑顔で気分も上がる

「予洗いで頭皮の洗浄や毛穴の汚れを落とす『クレンジングシャンプー』、髪の毛に栄養を与える『泡パックシャンプー』、栄養を閉じ込めて髪を保護する『ケアトリートメント』が 1セットになったブランドとなっています。ヘアサロンのようなプロフェッショナル技術を自宅でも体験し、セルフビューティーケアができるような商品に育てていければと考えています

 なぜ、このブランドを始めたか。三村さんは「髪の毛が綺麗になれば気分が上がると感じているから」だと語る。

「髪がきしんだ状態で人に会うのと、髪が綺麗で美しい状態で人に会うのでは、圧倒的に後者のほうが笑顔でいられると思うんです。そういう意味では、髪が綺麗になれば自分に自信を持つことができ、自然と笑顔になれることから、突き詰めて考えると『世界平和』にもつながる。こうした大義を持って、ブランドを広めていければと思います。加えて、シャンプーソムリエの認知度はあまり浸透していないので、自身のサロンワークやサステアの商品企画などを通じて、もっと多くの人に知ってもらえるように尽力していきたいですね」

<取材・文・撮影/古田島大介

【三村 浩章】
合資会社サステア代表。滋賀県彦根市に美容室「hair make COUR」を経営。一般社団法人シャンプーソムリエ協会(JSSA)が認証するシャンプーソムリエとして、正しいヘアケアの知識を日々発信している。2021年にオリジナルシャンプーブランド「SUSTAIR」を販売

【古田島大介
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

ヘアケアやシャンプーに関する専門的知識を持つ資格制度「シャンプーソムリエ」でもある三村さん