
もくじ
ー モデナの古豪が放ったSUVの第二弾
ー 伝統的な革内装とデジタルが溶け合う世界観
ー もっとも「日常の一部」にしたいマセラティ発見
モデナの古豪が放ったSUVの第二弾
モデナの名門、マセラティがクロスオーバーSUVの世界に進出したのは2016年のレヴァンテが最初だった。マセラティといえばレーシングカー作りに端を発する飛び切りスポーティで貴族的な自動車メーカーとして知られている。そんなブランドのキャラクターに技術的な進歩が追い付いたことにより、SUV化が可能になったのである。
レヴァンテよりもひとまわりコンパクトなボディを持つ、マセラティのクロスオーバーSUVの第二弾がグレカーレである。つい先ごろ新型に生まれ駆ったグラントゥーリズモやミッドシップスポーツカーのMC20の流れをくむ鋭く精悍なフロントノーズが印象的なグレカーレ。
日本市場には2Lの4気筒ターボを搭載するGT(300ps)とモデナ(330ps)、そして3LのネットゥーノV6(530ps)を搭載した上位モデルのトロフェオという3種類のラインナップが導入されている。
今回試乗したミドルグレードのグレカーレ モデナが搭載する4気筒ターボ・エンジンには48Vのスタータージェネレーターが組み込まれマイルドハイブリッド化されている。マセラティらしいパワーを強調しつつ、時流に乗ることも忘れてはいないというわけだ。
マセラティ・ブランドのキャラクターを端的に表すとすれば、パンチの効いたパワーユニットと上質な内外装の融合が挙げられる。一流のアスリートが、その筋肉質の身体に合わせて仕立てた上質なスーツを羽織っているようなイメージで間違いないだろう。果たしてグレカーレ モデナの仕上がりはどうか?
伝統的な革内装とデジタルが溶け合う世界観
グレカーレ モデナの実車は、海神ネプチューンの持つ三又の槍(トライデント)をモチーフにしたエンブレムを中央に据えたグリルの迫力と、SUVとしては最も低いレベルの車高が印象的なモデルだった。ブルーインテンソと命名された少し赤みを帯びた紺色もマセラティの瀟洒なイメージと完璧に符合する。
室内は黒基調でまとめられていた。シートの表面のみならず、ダッシュパネルやセンターコンソールにも精緻なステッチが走り、本革内装の質感の高さを強調している。
ステアリング上のスタートボタンを押すと、黒い室内空間で存在感を消していたデジタルパネルにきめの細かいグラフィックが浮かびあがる。ドライバー正面のメーターパネルやダッシュ中央のナビモニターだけでなく、そのすぐ下に配されたタッチ式の操作パネルもデジタル化されているのだが、マセラティの伝統的な意匠と先進的なインターフェイスは違和感なく溶け込んでいる。
フロントシートはサイドのサポートが張り出したスポーティな形状で張りもあるが、座り心地は上々。思いのほか低い位置に座らされる感覚はSUVらしからぬ部分だが、それでもSUVらしく視界の良さは確保されている。
ギュッと一体感のあるボディから想像する以上にリアシートとラゲッジスペースはゆったりとしているので、普通のクルマ旅だけでなく家族でアウトドアアクティビティに出掛けるような使い方にもしっかりと対応できるキャパシティの持ち主といっていい。
さあステアリング上のスタートボタンを押して走り出してみよう。
もっとも「日常の一部」にしたいマセラティ発見
4気筒ターボの第一声は力強く、ボディに微かな振動を伝えてくるが、その立ち振る舞いは極めて静かだ。トップモデルのトロフェオはパワーもさることながら、エアサスによる懐の深い乗り心地を特徴としていた。
それに対しコイルスプリングと可変ダンパーによる簡潔な足回りを備えている今回のモデナは、ドライビングモード(コンフォート、GT、スポーツ)ごとの変化がわかりやすい。特にGTモードで高速道路を飛ばした際のフラット感の高さは特筆すべきだろう。
パワートレインに関しても、ダッシュ力に優れる4気筒ターボの尖ったキャラクターを48Vの“実効性のある!”マイルドハイブリッドがうまくサポートしている印象。
このため4気筒イコールもの足りない、もしくは粗っぽいといったマセラティらしからぬフィーリングにはオチていないのである。内燃機とモーターが巧妙に絡み合う、必要にして充分なパワーユニットといえるだろう。
クルマ全体から漂う気品や静けさ、加速の素早さ、ダイレクト感あふれるステアリングフィールといった動的質感はマセラティそのもの。だがそこに、ちょうどいい車高による乗り降りのしやすさと広い荷室に代表される実用性の高さ、そしてカジュアルな雰囲気がプラスされている。マセラティのラインナップ中で最も普段使いしたくなる1台、そんな表現が当てはまると感じたのである。

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