電子書籍ぼくのパパにはタトゥーがある』(KADOKAWA)は、主人公のリョウが「家族を守る」という誓いを込めて入れたタトゥーについて、世間から偏見の目が向けられることに葛藤する様子が描かれています。



『ぼくのパパにはタトゥーがある』(KADOKAWA



 本作品は、著者の丸田マノさんが、読者からタトゥーを除去した経験について聞いたことを元にして創作したといいます。


 本記事では、漫画の一部を紹介。タトゥーをテーマに漫画を描こうと思ったきっかけなどについて聞きました。


※本記事は全9回のうちの1本目です







タトゥーを消す人にもドラマがある
――タトゥーをテーマに漫画を描くきっかけは何だったのでしょうか。


丸田:普段は日常生活や育児について漫画を描いているのですが、以前「顔のシミ取りレーザーをやってみた」という漫画を描いてインスタグラムに投稿したことがありました。レーザー治療の痛みを「揚げ物の油が跳ねて当たったときの痛みに似ている」と描いたら、「タトゥーを消したときの痛みに似てる」とコメントしてくれた人がいたんです。


そこから、「どうして消したんですか?」とメッセージをやり取りしたことで、この物語が生まれました。タトゥーを入れるまでの経緯にもドラマがあるけど、消す人にもいろいろなドラマがあるんだろうなと興味を持ったんです。モデルになった方からタトゥーに関する知識や体験談を聞かせてもらい、それを元に創作しました。


私が知る限りでは同じテーマを扱った漫画を読んだことがなかったので、「挑戦しがいがあるな」と思ったのもきっかけの一つです。


――最初にタトゥーの漫画を投稿したとき、どんな反響がありましたか?


丸田:印象的だったのは、男性読者が増えたことでした。パパ目線や、タトゥーについて意見をコメントしてくれる方が多かったです。主人公がパパだから見てくれたのかもしれないし、タトゥーというテーマは男女問わず興味を惹かれるのかもしれません。


タトゥーを入れたきっかけをいろんな人に聞いた



※イメージです



――主人公のリョウは、タトゥーを入れるときはホテルや温泉施設に入れないなどのリスクを知りつつも、あまり気にしてはいなかったのでしょうか。


丸田:漫画を描くためにいろいろな人に、タトゥーを入れるきっかけを聞いてみたんですが、すごくリスクを考える人は最終的には踏み止まって入れないんですよ。「それでもやってみよう」という強い思いがある方が入れている印象がありました。


例に漏れず、この作品のモデルになった方もそうでした。モデルになった方は10代で入れたと言っていました。その後結婚して家族ができて、さまざまな問題が浮き彫りになってしまったという流れは漫画と同じです。


――冒頭では、主人公・リョウの息子が他の児童から「お前んちの父ちゃんって悪ぃーヤツなんだろ!」と心無い言葉をかけられ、「お父さんは悪い人なんかじゃない!」と立ち向かう場面もありましたね。リョウタトゥーを入れたのは10代だったから、あまりリスクが気にならなかったというのもあるのでしょうか。


丸田:それもあるかもしれません。でも「若気の至り」で済ませたくはなかったので、リョウにはタトゥーを入れたいと考えるに至る思いがあったことを描きたいと思っていました。


――丸田さんが話を聞いたなかでは、タトゥーを入れる動機は人によって違いがあると感じましたか?


丸田:あくまでも私が感じたことなのですが、そもそも「タトゥー」と呼んでいる人と「入れ墨」と呼んでいる人で全然違うのかもなとすごく勉強になりました。


入れ墨」と呼んでいる人は昔ながらの、何の職業に就いているかを表すためのものをイメージしていることが多くて、意味があって入れているものとして考えているようでした。


タトゥー賛成派・反対派、両方の人に読んでほしい
――では、「タトゥー」と呼んでいる人は、どういう捉え方をしている人が多いのでしょうか。


丸田:「タトゥー」と呼んでいる人が意味がなく入れているということはないのですが、「入れ墨」よりもっと幅広い意味で捉えていると感じます。耳の後ろや手首にワンポイントだけ入れたりするものをイメージしている人は「タトゥー」と呼んでいることが多かったです。


入れた理由については、必ずしも明るい意味だけではなくて、悲しかったことを忘れないようにするためにするために入れている方もいます。今回は漫画の題材にするということで、「それなら……」と教えてくれた方がいましたが、私も相当仲良くないと理由を聞くことはできないと思います。


――タトゥーを題材に漫画を描く上で、配慮したことはありますか?


丸田タトゥーについて、賛否どちらの読者もいるということを前提にして、私自身が賛成か反対かは言わないようにしていました。


――丸田さん自身は、タトゥーを入れてみたいと思ったことはありますか?


丸田:入れたことはないですが、10代の頃は、「入れてみたいな」と思ったことはあります。当時から20年以上マキシマム ザ ホルモンのファンで音楽フェスによく行っていたのですが、かっこよくタトゥーを入れている人がたくさんいたので憧れがありましたね。


◆主人公の名前は“あのバンド”のボーカルから
――主人公の名前の「リョウ」は、マキシマム ザ ホルモンのギタリストの方と同じ名前にしたそうですが、丸田さんにとってどんな魅力のあるバンドなのですか?


丸田:なにかと誤解されがちなのですが、すごくクリエイティブなバンドです。CDを書籍として出して書店に並べたり、ゲームをクリアして出てきたパスワードを入れないとDVDが見れなかったり、発信の仕方が面白いんです。


バンドを追いかけていくなかでファンの方と知り合ったりするのですが、「陽キャラ」「陰キャラ」でいうと、「陰キャ」の人のほうが実は多いんです(笑)。ストレスを抱えている人が聞くとスッキリする音楽なので、普段静かな人の方がハマりやすいバンドだと思います。


――ファン同士の交流もあるのですか?


丸田陰キャだからライブ会場ではあまり交流しないんですが、SNSで繋がったりしますね。私がSNSで漫画を投稿し始めたとき、プロフィールにマキシマム ザ ホルモンのファンだと書いたら、ホルモンのファンが沢山リツイートしてくれたんです。「久しぶりにホルモンのライブに行った」という内容の漫画だったのですが、そのおかげで最終的にバンドのメンバーに届いて感想をいただいたことがありました。ファンの方達の好意が本当にありがたかったです。今回の漫画も届いたらいいなと思います。


<取材・文/都田ミツコ>


【都田ミツコ】ライター、編集者1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。