定年後は、現役時代に比べると時間に余裕ができるため、パートタイムでの仕事などは続けつつも、地域貢献活動などのシニアボランティアへ新たに参画するイメージをしている人も多いのではないでしょうか。一方で、仕事と比べると、いつでもやめられるという点では、「地域活動に参加をしてみたが、合わなかったので活動すること自体が嫌になってすぐにやめてしまった」、「自分に合う地域活動がわからずに行動がしづらい」……などといった声を聞くことも。本稿では、日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏が、定年後を見据えた地域活動への参画について解説します。

意識は高いが、腰が重いシニア

世論調査※1によれば、各世代の働く目的は、以下の項目において高くなっています。

・18~29歳、30~50歳代……「お金を得るために働く」

・70歳以上……「社会の一員として、務めを果たすために働く」

・60歳代、70歳以上……「生きがいをみつけるために働く」

シニアになったら社会に貢献をしたい、と話されている方は少なくありませんが、データで見ても、そのような人は多くなる傾向が見られます。

一方、行動という視点で見ると、意識とは逆の結果が見られます。内閣府※2によれば、65~69歳の男性では50.0%、70~74歳では58.9%、75~79歳では56.4%の人が働いているか、またはボランティア活動、地域社会活動(町内会、地域行事など)、趣味やおけいこごとを行っていることが明らかになっています。

ただし、男女あわせて65歳以上が行っている社会的な活動の具体的な内容を見てみると、65歳以上の人の社会活動への参加状況を見ると、「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)」が25.8%、「趣味(俳句、詩吟、陶芸等)」が14.9%などとなっており、地域行事等ボランティア活動への参加は多くはありません。

シニアになると徐々に社会への貢献意識は高くなるものの、実際に地域活動へ参加を行うシニアは少ないのが現状です。

定年後の男性は地域活動で必要とされているのか?

前述したとおり、地域活動へ参加を行う人は多くはないなか、これから定年を迎えるシニア男性が活躍できる余地はあるのでしょうか。

現在、地域活動を行うNPOの現場は、慢性的な人手不足、NPOの運営に貢献できるスキルを持った人材の不足も課題です。そんなNPOの運営のために新たな人材に求める役割としては、

・各種事業の企画/開発

・各種プロジェクトのマネジメント

・地域課題解決のためのプロデュース

・会計/経理

・ボランティア/コーディネート

という調査結果も出ています※3。企業経験等が豊富な中高年の方々であれば、ボランティアで活躍できる可能性はあると考えます。

最近では、自分が持っている職業上の知識やスキルを活かして社会貢献するボランティア活動である「プロボノ」に関心を持ち、参加する若い人も増えています。プロボノを行う側にとっては、スキルを活かして社会に役立つということ以外に、副業・兼業と同様に、新たな人材の交流やスキルの獲得、視野を広げることにもつながっています。

「ポータブルスキル」を把握し、新たな活躍へ

一方で、実際、地域活動への参画に関心はあっても、高い専門性を有しておらず、どのように役に立てるか、わからない方もおられるかと思います。たとえ言語化できるスキルがないと思っている方々であっても、長年、仕事をしていれば誰でもポータブルスキルは持っています。

ポータブルスキル※4とは、「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」のことを指します。具体的には、

・「専門知識/専門技術」

・「仕事のし方」《課題を明らかにする・計画を立てる・実行する》

・「人との関わり方」《社内対応(上司・経営層)》、社外対応《顧客、パートナー》、部下マネジメント《評価や指導》)

で構成されています。ポータブルスキルを活用することで、活躍をすることはできると考えます。

厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール」※5では、自分のポータブルスキルの診断ができます。そのようなツール等を活用し、まずは自分のポータブルスキルを把握したうえで、そのスキルが活かせそうな地域活動に参加をしてみるのも一案です。

年齢を経ても新しい場に飛び込むことの重要性

ここ数年は、健康な状態と要介護状態の中間の段階である「フレイル」の予防が重要であるといわれています。「身体的フレイル」、「精神・心理的フレイル」、「社会的フレイル」の3つが連鎖していくことで、老いが進むといわれています。定年後、地域活動に参画をすることによって、社会とのつながりがあれば、老化の防止にもあることが期待されるのです。

バーバラ―・オークリー※6は著書のなかで、

「新しい何かを学び直すには、また初心者レベルに逆戻りしなければならないときもある。だがそこには、スリル満点の新しい冒険をまた一から始められる楽しさもあることを覚えておこう!」

と述べています。

年齢を経ると、新しい場に飛び込むのは勇気が必要ですし、居心地の悪さを感じるかもしれません。しかし、生活に刺激を与え続けることが、老化の予防と同時に、人生を豊かにしていくことにつながるのではないでしょうか。

参考 ※1:内閣府「国民生活に関する世論調査」 ※2:内閣府「令和2年版高齢社会白書」

※3:認定特定非営利活動促進法人日本NPO センター「2018 年度NPO 支援センター実態調査報告書」(2019年3月)

※4:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)」 ※5:厚生労働省 職業情報提供サイト「ポータブルスキル見える化ツール」 ※6: 『先入観を捨てセカンドキャリアへ進む方法』 著作者 バーバラ―・オークリー、著 安原実津、 訳 笹山裕子】、出版社 パンローリング

小島 明子 日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト

(※写真はイメージです/PIXTA)