せっかく頑張って入社したにもかかわらず、早期に辞表を出す人がニュースなどで話題となっています。「せめて1年は頑張りなさい」という声がどこかから聞こえてきそうですが、当事者にとっては、そうせざるを得ないさまざまな理由があるのです。今回取材した新入社員も例外ではありませんでした

◆就職先は念願の第一志望

 某農学系の大学出身の内田さん(仮名・23歳)は、大学時代から興味があったバイオテクノロジーを研究するA社に就職することができました。

「就活は数社に絞りましたが、3年生の時、第一志望のこの会社のインターンに参加し、会社や社員の雰囲気を肌で感じ、ますます入社願望が強くなりました。創業してまだ15年ほどの会社ですが、順調に業績も伸ばしていて、数年前には上場も果たしています。この会社なら、自分が望む研究開発ができると確信し、内定をもらった時は両親とともに大喜びしました

 実は、この会社の歴史は古く、先代のオーナーが農薬の研究を行う合資会社として設立し、その息子である現社長が株式会社として再スタートさせ、現在に至るのだそうです。その辺の経緯から、研究開発にはかなり力を入れているとのことです。

◆まさかの配属ガチャに落胆

 ところが、オリエンテーションが終わり、上司から想定外の言葉を耳にしたそうです。

マーケティング部門に配属されました。その言葉を耳にした時、一瞬めまいがしたのを覚えています。全く興味のない分野だし、私にはそんな能力も才能もないことは自分が一番知っていました。ただ、以前インターンに参加した際、最初は希望とは別の部署に配属されることもあると聞いていたので、その言葉を信じて頑張ることにしました」

 特に不平不満も言わず、上司の指示に素直に従っていたのですが、その後しばらくして「半年をめどに希望部署の開発セクションに異動がある」と、部長から告げられたそうです。
 
◆女性上司にロックオンされる

 マーケティング部門での仕事にも少し慣れてきたある日、部長に呼び出され、「今日から君の直属の上司になるMさんだ。よろしく頼むよ」と告げられた内田さん。Mさんは30代後半のキャリアウーマンだ。

「今から思えば、この瞬間から悲劇が始まっていたんです。というのも、その日からMさんの指導が始まり、1日の大半を一緒に過ごすことになりました。当然昼ごはんも同じ時間だし、市場調査などで外出する時は、夜ご飯をともにすることもありました

 日を追うごとに、Mさんと帯同する時間も増えていったといいます。

「最初のころは『マーケティングは机上で、ある程度もぼしをつけてから……』なんて言ってたのですが、いつのまにか『市場調査は自分の足で』とかなんとか言い出し、直行で調査現場まで向かうこともしばしばありました

◆「これも市場調査よ」とラブホ

 この頃から、Mさんの行動に何か違和感を抱いていたという内田さん。そしてーー。

ある日、いつものように、Mさんが運転する社用車で移動しているとき、彼女はラブホテルにクルマを入れたんです。事態が全く飲み込めずにいると『これも市場調査よ』とか言って、Mさんは強引に私をホテルに連れ込もうとしました。しかし、幸運にもその時Mさんのスマホが着信し、それが緊急の用事だったらしく、なんとか難を逃れることができました」

 ラブホテル事件がまるでなかったかのように、Mさんの態度は少しも変わることなく、いつも通り内田さんを連れ回す日々が続いたといいます。不安にかられた日々を過ごす中、大学が同じ先輩社員に意を決して相談しました。

◆先輩社員から衝撃の事実を聞く

「言いづらかったのですが、赤裸々に一部始終を話しました。そしたらなんと『あ、俺も同じ目に遭ったよ。知ってる? Mさんは創業者の姪、つまり親族なんだ。好みの新人男子には目がないそうで、つまみ食いが好き。毎年誰かが犠牲になっているらしいよ。内田も、あと少しの辛抱かな』と言われました」

 最初の頃に抱いていた会社へのリスペクトは完全にどこかへ。目の前の環境から逃げ出したい気持ちでいっぱいになった内田さん。最近では、休みの日でもお構いなしに召集がかかるそうです。

ただの上司であれば直談判も可能ですが、相手が創業者一族だと何を試みても無駄だと思いました。最近は毎日会社へ出向くのが憂鬱でたまりません」

 適切に仕事も教えてもらえず、その上プライベートの時間まで奪われ始め、精神的にかなりの限界を感じていました。不本意ながら、この会社に見切りをつけることを考えているそうです。

<TEXT/ベルクちゃん>

ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

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