「2ゃんねる」などを例に匿名文化を語る濱野智史氏

「2ゃんねる」などを例に匿名文化を語る濱野智史

ニコニコニュース(オリジナル)

 情報環境研究者の濱野智史氏は2011年11月19日、「ニコ生思想地図 『アーキテク​チャの生態系』とその後 濱野​智史×東浩紀」に出演し、「世界は『2ちゃんねる』化するのかも知れない」と語った。

 2008年に発売された濱野氏の著作『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』は、「2ちゃんねる」など匿名の投稿が賑わうインターネットサービスは「日本以外にない」として、その要因が個人を打ち出さない日本独自の「集団主義」文化にあるとみた。

 しかし濱野氏は、「ここ1、2年で環境が変わった」として、論の修正を迫られているという。その理由として濱野氏が挙げたのが、「WikiLeaks」やソニーハッカー攻撃を仕掛けたことなどで知られる「Anonymous」、海外版2ちゃんねるとも言われる「4chan」といった、海外発の匿名文化の流行だった。

 それまで、海外では個人を前面に押し出す社会が「匿名性」を排除していると考えていた濱野氏だったが、「4chan」の運営者であるmoot氏と話した際、海外でも「Facebookが嫌い」と感じる人がおり、「匿名だからこそ著作権もないままどんどん情報の書き換えが行なわれ、それによって創造性が高まっていくことに国は関係ないのでは」と言われたという。そこで濱野氏自身も「日本は確かに匿名性が発達しやすい状況にはあったが、今は国に縛られている状況ではなくなっている」と感じたそうだ。

 そこで濱野氏は「世界は『2ちゃんねる』化するのではないか」との考えを提示した。匿名文化が世界的に拡がっていく中で、匿名文化が先んじ、実名と匿名にまつわる議論を長く戦わせてきた「日本ならではのインターネット社会論のようなものが、今求められているのではないか」と語った。

 しかし一方で、日本の匿名文化は「小市民的」であるとも濱野氏は述べた。匿名文化の強みは、匿名の集団による集中的な攻撃性にあることは国内外で共通しているが、海外発の匿名文化は「政府の陰謀を暴く」など理念に基づいたものが主流になっているのに対し、

「日本は飲酒運転とか、すごくどうでもいい道徳的な問題にしか匿名性の力が使われていない、という問題がある」

として、

「粗を探すのは非常に上手くなったが、攻撃の矛先が上手くいっていない。敵を探す検索システムみたいなものがないなと感じる」

と、日本国内における匿名文化の現状を分析した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 濱野智史氏が語る世界の匿名文化から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv70961672?po=news&ref=news#04:40

(安田俊亮)

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