三浦弘行九段が「これは寄りです」と断言した。検討した結果、Seleneがどう受けようとも、先手玉は捕まると分かったのだ。私は急いで対局場に向かった。永瀬ならこの寄せは絶対に逃さない。今、彼は、どんな表情をしているのか、間近で見ないといけない。
を開け、対局室に入ると、そこには予想しない事態が待っていた ‥

■対局前日

羽田空港の搭乗口で飛行機を待つ間、永瀬は落ち着かない表情していた。「阿部君と連絡が取れないんです」 阿部光瑠五段が青森から上したとき、永瀬はっ先にを掛けた。以来将棋を通じて信頼しあう仲だ。永瀬は今回阿部に色々と相談していた。「Seleneは序盤に色々な手をしてくるんです。3手までの局面が20以上もあり、とてもしぼりきれません。それで特に自信のない局面について、対策を相談したかったんですが」
高知空港に着き、バスホテルに向かう。中では皆携帯王将戦第6局を観戦していたが、永瀬だけは全く見なかった。「この1ヶ公式戦以外はほとんどしていません。研究会は1日だけです。そして、この1週間は公式戦の棋譜も見ていません。コンピュータ将棋しか見ませんでした」

■「努のかたまり」

鈴木大介八段に彼との出会いを聞いた。「突然将棋を教えて下さい、って連絡してきてね。分かったと言って将棋してね。じゃあ次はいつにするって聞いたら、「明日お願いします!」と。さすがに明日理って言ったら「では鈴木先生いている日全て教えて下さい!」ときたもんだ。そして私の将棋を丁寧に調べていてね。いやあ彼は努のかたまりだね」

永瀬拓矢 一番の先生・前編、後編をぜひ見ていただきたい。

・[ニコニコ動画]【電王戦FINALへの道#64 永瀬拓矢 一番の先生・前編
http://www.nicovideo.jp/watch/1425281528

【ニコニコ動画】【電王戦FINALへの道】#64 永瀬拓矢 一番の先生・前編

・[ニコニコ動画]【電王戦FINALへの道#65 永瀬拓矢 一番の先生・後編
http://www.nicovideo.jp/watch/1425375596

【ニコニコ動画】【電王戦FINALへの道】#65 永瀬拓矢 一番の先生・後編

その努ぶりは将棋界で有名となった。ある日私の師匠石田和雄九段と電話したとき、「永瀬君ちゅうのは四六時中将棋の勉強をしとるそうじゃないか。そうとう強いんだって?ウチの子達の手強いライバルになるぞ」と言われ、なんで知っているのとビックリしたことがある。
彼の観戦記を担当したときの取材で、普段なにしてるのか聞いたら、「1月は研究会と公式戦があわせて28日でした。順位戦(持ち時間6時間で終局が遅い)の前後はけましたが。本当は元旦も2日もしたかったんですが相手がいなくて」

その彼がコンピュータに勝つために、この日のために準備をしている。
対局前ホテルの部屋にパソコンを設置させ、練習対局をした。当日タブレット片手にレストランに入り、食事もそぞろに、棋譜を確認していた。阿部とも連絡が取れた。ものすごい準備をして、永瀬は高知に向かった。

■対局開始 高知 追手門

対局会場となったのは高知の追手門、おの入口の門の中だ。400年以上も前に作られた建物の中で将棋の対局をさせていただけるとは、ありがたいかぎりだ。
駒を並べるとき永瀬はをつかみきれず落とした。顔色もい。緊していることを隠しきれない。まあの前にいるのが電王手さんだから隠す必要はないが。

永瀬は20才の時、振り飛車党から居飛車党に転向した。
20才になったら居飛車したほうががいい」という鈴木アドバイスからだ。そして居飛車を猛勉強したことが将棋の幅を広げた。一昨年の棋王戦では本戦と敗者復活戦で2度も羽生善治四冠を負かした。戦は後手番での「横歩取り」と、先手番での「矢倉」で、内容も璧だった。
永瀬は後手番なので、羽生に勝った「横歩取り」に誘導したかった。
果たして注の3手4八! 永瀬にとって最悪に近い出だった。
8六歩(図1)で後手だけ飛の歩を交換できるから得に見えるがそうではない。
研究の及ばない戦になること。そして中盤が長い、コンピュータ将棋の強みが出やすい進行になるからだ。永瀬は「まずい将棋になったと思いました」と話した。

食休憩

食休憩中にプログラマー西海に話を聞いた。対局中でも話しかけられるのがコンピュータ将棋の良いところだ。 私と西海枝との出会いは3年前の世界コンピュータ将棋から。SeleneAperyした将棋を解説した。この年にSeleneAWAKEAperyも初めて選手権に参加している。いわば今回出場の3ソフト同期生なのだ。
まず序盤のを聞くと、「AWAKEの巨瀬さんにお聞きしたら、「序盤は幅広く浅く入れておいたほうがいい」と言われまして、公式戦で1局でもされた手を、採用率も勝率にもをつぶって入れてます。だからレアな手がされることもあります」

※【電王戦FINALへの道#52 永瀬拓矢 vs Selene 30分切れ負け①では3手7七ごろしをしているが、この手も公式戦でされている。

・[ニコニコ動画]【電王戦FINALへの道#52 永瀬拓矢 vs Selene 30分切れ負け①
http://www.nicovideo.jp/watch/1424247729

【ニコニコ動画】【電王戦FINALへの道】#52 永瀬拓矢 vs Selene 30分切れ負け①

巨瀬は元奨励会員で私の子、さすがに的確なアドバイスをする。
ちなみに2六歩3四歩の局面における4八は、公式戦の採用率が1パーセント以下だった。
「今回はオーソドックスに5万局の棋譜から学習しました。やはりプロ将棋から学ぶと強くなりますね(笑)」と西海枝。
今回使われているマシンはガレリアの高スペックマシンで、CPUi75960X EEの8コアだ。このCPUなら1コアだったとしても、ほとんどの人間がまず勝てない。
このマシンの性を生かすため、1つのCPUに1つソフトを割り当てて並列に動かしている。1つのSeleneがまずある程度まで読み、その結果から7つのSelene仕事を振り分け、分担して読んでいるという意味だ。メモリ64ギガも積んでいて、読んだ局面はメモリに10億局面以上記憶させることができる。
西海枝本人は将棋はさほど強くない。ここまでの進行はどうかと逆に聞かれたので「コンピュータ将棋的にはの出る展開です」と伝えると「それを聞いてホッとしました。恥ずかしい将棋にはならないで欲しいと思っていましたから」

■共通点は「変化」

二人の共通点は「変化」だ。勝つために、ソフトを強くするために、変化し続けている。
永瀬は元々は振り飛車党で、ものすごい受け将棋だった。三段時代に彼と研究会でしたとき、これは受けの達人大山康晴名人の再来だと思った。それが鈴木将棋を勉強して戦系振り飛車しこなし、そして居飛車党に転向して攻めの加重を増やした。居飛車でも最初は横歩取りなど自分で戦法を選んでいたが、今では相手の得意戦法を堂々と受けている。変化球投手から速球投手へと棋を作り替えた。

西海枝の「変化」もすごい。独プログラムを覚え、そして毎年ゼロからソフトを作り直しているとのこと。そんなことをしているプログラマーにはおにかかったことがない。最初にコンピュータ将棋選手権に出場したときは、歴代名人の棋譜だけを使った強化学習だったが、他にも毎年色々なアイディアを試している。

■午後1時、対局再開

再開後しばらくして、電王手さんが玉をつまみ、4八へ置く(図2)。「右玉」だ。
戦端は飛のいるエリアで開く。従って玉は戦場から遠ざけるため、飛と逆に配置する。これを「玉飛接近すべからず」と言う。居飛車の場合は左に玉が正規のポジション。それをあえて右側に玉が行くので「右玉」と呼ぶ。
利点は相手の飛から玉を遠ざけること。振り飛車と違って飛先を突破されにくいこと。第1局で斎藤交換しただけで飛先を破っているが、金銀で守っていればそういうことはない。ただし玉は薄く、自らは攻撃しにくい。
いわばこの対局場の追手門のようなものだ。この門は下にけており、敵が攻めてきたときにはから石を落として迎撃するそうだ。

高知マップより
http://kochipark.jp/kochijyo/about-kochi-castle/fukan-map

右玉は相手が攻撃してこないと手詰まりになりやすい。ならば永瀬得意の千日手か?
だが、永瀬は逆の心配をしていた。「Seleneは戦いが始まるまでの駒組が実にうまく、人間が気づきにくい良い配置にしてから攻めてくるんです」

■人間の盲点

Selene図3から人間の「盲点」をつく攻めを見せた。まず2四歩で歩を交換する。これは後手に2三冠を許すので損に見える。2三―3二金銀の連絡が良く、コンピュータもとても好形と判断する配置だ。そして7五歩と頭をつついてから、2五歩から交換してじっと引く。これには棋士がみな驚いた。永瀬も「まさかやってくるとは思いませんでした。しかもそれでこちらが苦しいのでビックリしました」
驚きの理由は、「右玉VS持ち駒の」という図式にある。
右玉には飛側、つまり追手門からは攻略しにくい。そこで搦手門、つまり玉側の端攻めが有効だ。
それには桂馬が強な武器になる。すなわち図4で、1五歩同歩1八歩同香1七歩同香2五変化1図)だ。この「右玉にでの端攻めがある」という先入観がこの手順を軽視させた。
ところが1五歩には視して8六変化2図)という手がある。攻め駒のを攻める筋の悪い手だが、6三には7四歩があってこれはまずい。玉の近くの攻めよりも玉の遠いところを攻めた方がより厳しいとは、人間にはなかなか分からない。

同期の応援

今回は現地の大盤解説として瀬川晶司五段と佐々木勇気五段が同行している。佐々木は私と同じ石田門下。永瀬と同じ平成16年プロの養成期間・奨励会に入っている。この年は棋士の豊作で、第1局で勝った斎藤菅井竜也六段など計7人が棋士になっている。聞き手を務めた伊藤沙恵女流初段も同期だ。
ちなみにこの平成16年小学生名人戦の決勝は菅井佐々木で、JT東京大会高学年決勝が永瀬-佐々木だった。佐々木「彼とは意見が合わないんです。攻め将棋でひらめきの私に対して永瀬は受け将棋で読むタイプですから。だから彼と将棋すと感想戦がなかなか終わらない(笑)
その佐々木が永瀬を良くする手を必死に考えていた。「勝つためには8六歩と打ち捨てて、8六だけは防がないと」と説した。10年以上も戦い続けているライバルを応援している。
記録係の梶孝も心配そうに永瀬を見ていた。梶現在19才、三段リーグを13勝5敗で2位になり、4月1日付けで四段になる。将棋界は四段からがプロ晴れて一人前だ。鈴木八段門下ということで永瀬は3才年下の梶のように可がった。
師匠よりも多く将棋を教えて頂きました。永瀬先生は午前中からずっと苦しげな表情をしていました」
佐々木読み通り、永瀬は8六歩とした。だがここで一歩使ったため、1七歩と控えて打つしかない。手抜き7五歩から5五と反撃されて永瀬の顔がゆがむ

カギの使い方

さて勝負のポイントになったのは図51五香の場面だ。
Seleneを取って4一と両方のに狙いをつけて打った。コンピュータ将棋らしい一手だ。ボナンザ以来、コンピュータ将棋は人間と較しての価値を低めに、を高めに見る傾向がある。
ボナンザHP内(http://www.geocities.jp/bonanza_shogi/)のGPW2006資料を見ると、初期ボナンザの駒割は617点に対し527点と差が100点を切っている。これでは歩くらいでと交換してしまう。もちろん今では全然ちがうが、交換をいとわない傾向は同じだ。
対して永瀬はインタビューカギとなる駒を「」と答えた。コンピュータ将棋の価値を軽視し、使い方にスキがあるとにらんだ。


・[ニコニコ動画]【電王戦FINALへの道#72 永瀬拓矢 最後のインタビュー
http://www.nicovideo.jp/watch/1425975251

【ニコニコ動画】【電王戦FINALへの道】#72 永瀬拓矢 最後のインタビュー

4一を見て、永瀬はホッとした。「6三成では1六歩で自信がありませんでした。(1)1六同香は2六飛で香を取られますし、(2)1八歩成同香1七歩同香2五1九飛と辛抱されて。局面としては難解でしょうが、相手は強いので」

■永瀬の逆襲

今度は人間がコンピュータの盲点をつく。Selene読み筋は5一と打ってを受ける手だったが、永瀬は6二図6)と引いた。これはコンピュータ側からは読みにくい一手。なぜなら8二飛・6二という配置が悪形だから。が飛の横利きを消し、そして7一の両取りが残っている。ポジショニングを重視するSeleneは局面の評価値があがった。一方永瀬は1四歩に8一飛で交換を強要し、逆に形勢好転を感じていた。
さらにSeleneは判断を間違う。1三歩成と攻め合ってしまったのだ。4九玉か、1八香同香成の交換を入れてから1三歩成なら難しかった。詰みと必死を織り交ぜた、1直線の変化を深く読むというの人間は長けている。
六角が玉を4九へ逃がさぬ一撃必殺の一手。この間、勝負は決まった。そして冒頭の場面になる。

■ナラズの存在

永瀬は勝ちを確信した後に保険を掛け、そのタイミングで私は対局室に入った。盤上には2七にがあり、記録係と読み上げの飯野女流は驚いた表情をしていた(図7)。そして永瀬はいつもの自信に満ちあふれた顔に戻っていた。
そして永瀬は「これ、放っておくと投了しますよ」と言った。

Seleneの成らずに対応できず、2七のの存在を視して2二と打ったのだ。王手放置の反則負けだ。永瀬「練習将棋の時に、間違えて6三角不成としたらフリーズしたので偶然気がつきました。修正されていると思いましたが、まあ時間を使ってくれればいいかと思いました」
2七同角不成同玉の後の寄り筋を示そう。
以下1七香成2六玉1四同と変化3図)と進む。この局面を「先手のす手が一手も分からない」と言った。これは永瀬得意のセリフで、相手が何をしても勝ちますよ、という意味だ。
図では1五の詰めろで、それを防いで(1)1六歩は2八必死。(2)1五歩は同玉に1四歩同玉1一飛1三歩2二2四玉2三歩2五玉六角変化4図)で詰みとなる。永瀬は途中の1四歩ではなく1一飛から必死を掛ける順を読んでいてそれも勝ちだ。「時間があったのでその局面になれば詰みにも気がついていたと思います」ということで勝ちを読み切った上でのナラズだった。なんという恐ろしい男か。
立ち会いの三浦は「99以上の勝ち(の局面)を、さらに100%に近づけようとした恐ろしい勝負師魂。同じ棋士仲間として震え上がっている」と記者会見で述べた。

バグの理由

詰め将棋ならともかく、実戦で飛・歩の3駒を成らないことはほとんどない。
私が知っている限り、プロ公式戦での成らずが「最善手」として出現したのは3局、飛のナラズは2局しか知らない。歩は見たことがない。
今のソフトは全探索と言って、反則ではない全ての合法手を読んでいる。それが読み漏らしをなくし、並列化を有効に活用できるからだ。だが、できれば駄な手は読まないできたい。そこでSeleneは実戦でまず出現しないであろうこの3駒のナラズは生成しない(読まない)仕様にしていた。
ただし自ら読まなくても相手にされたら対応しなければいけない。もちろん西海枝もしていたつもりだった。実際コンピュータ将棋意味な成らずを時折す。第2回の電王戦佐藤慎一五段対ポナンザの将棋ではポナンザは3三不成としている。後手玉が2二にいるにもかかわらず王手にしなかった。これは相手が取る一手の時は成っても成らなくても同じなので、同価値と判断するためだ。
ではなぜバグを見落としたかというと、西海枝が毎回ゼロから作り直しているからだ。電王戦トーナメントではそういう場面がなかったので分からなかったのだ。

コンピュータ将棋界を変えたバグ

バグ」と言えば平成18年世界コンピュータ将棋選手権を思い出す。
ボナンザが初参加で優勝したターニングポイントとなった大会だ。その後作者の保木邦仁がアルゴリズムも、ソースコード開したことがコンピュータ将棋を大きく進歩させた。
だが、その裏にはバグによるドラマがあったことを知っているだろうか。
この年は前年度優勝の激指が大本命だった。だが決勝リーグボナンザと対戦したとき、激指バグが出てさほど難しくない詰みを逃してしまったのだ。
その後も激指は不調で優勝戦線から脱落した。あのとき激指バグがでず、ボナンザが優勝しなかったならばどうなったか。ボナンザVS渡辺明二冠の対局はない。機械学習の手法はそれほど有名にならず、コンピュータ将棋の進歩は今よりも遅れていただろう。
激指作者鶴岡はその後機械学習を取り入れ、何度も優勝している。AWAKEも昨年の電王戦トーナメントで動作が落ちるトラブルで出場を逃したが、今年はポナンザを破って優勝した。ソフトバグはつきものなのだ。出場する5ソフトはいずれも失敗を恐れず、工夫し続けてきたからこそこの場にいる。
http://www.ut-life.net/people/y.tsuruoka/
鶴岡 東大な人)

記者会見

記者会見では西海枝はとても立な態度だった。本業は融系のSEだそうで、こういう不測の事態も経験しているからだろう。新しいことにチャレンジするわけだから、リスクは当然、恐れていたら前には進めないと。めてこの方はスーパープログラマーなのだなと実感した。
永瀬は「練習でのSeleneとの勝率は1割でした。」「Seleneは強いソフトです。今回の結果で誤解されるとしたら西海枝さんに申し訳ない。ただ、実戦でその1割を引くことは可だと思いました。」と、Seleneの強さを讃え、苦戦することを覚悟していたこと、それでも勝つ自信があったことを述べた。

■再び食休憩&記者会見後

食休憩の最後に、今年は何を試すの?と西海枝に聞いた。「先日、五十嵐先生重なお話を伺いました」
五十嵐治一は芝工大の教授で「芝将棋」の設計者だ。第3回の電王戦トーナメントに出場したひまわり将棋山本一将は教え子になる。「先生に新しい機会学習のアルゴリズムを教わりまして。プロ棋士の棋譜に頼らない方法です。それを試してみようと思っています」と実に楽しそうにった。

会見の後、永瀬と西海枝と3人で話した。永瀬が「駒組がうまいですよね。良い配置にしていつのまにかリードされる」と言うと、西海枝はプログラムの工夫に気がついてもらえた事が嬉しいのか、「そうです、そこを工夫しています。3駒間の関係を3駒絶対と3駒相対と2駒と‥」、それを私が訳しながら永瀬に伝える。勝負が終われば駒は1つのに入る。笑顔で二人は別れた。
西海枝はバグ摘してもらった上に、負けを認識するのが難しい局面を示され、Seleneに足りない部分をも摘してもらったことになる。重なデータをもらい、Seleneは強くなる。

■打ち上げにて

打ち上げはにぎやかだった。その中心は佐々木で、ライバルの勝利を心から喜んでいた。「永瀬の応援をするなんて最初で最後だから」「今度す日いつにする?」「じゃあ持ち時間3時間で」「長すぎでしょ」「毎日Seleneと5時間の将棋していたから1時間じゃ短すぎて」「せめて2時間にして」「ユーキも、もっと考えないと」
このおしゃべりぶりはに似たんだ?師匠か?兄弟子か?

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打ち上げもたけなわの頃、私は子に聞いた。「勇気、この勝負はどうなると予想していた?」「正直言って、永瀬の勝つ確率5割はないかなと思っていました。練習でも苦戦していることは聞いてましたし」
そこで顔を永瀬に向け、「だけどね、永瀬は、追い込まれたら、追い込まれるほど、を発揮するから、信じていたよ」
永瀬は静かに笑って「うん、ありがと
 
ホテルに戻る前に永瀬はコンビニに寄って、飲み物と、そして食べ物を買った。
打ち上げで結構食べたのに、なんで食べ物まで?
「対局場に栄養ドリンクをたくさん用意してもらっていて、3種類飲んだんです。全を出せるように。そんなに飲んだら今日は寝られません。なので中におがすくので夜食用です」
元の将棋漬けの生活に戻るの?
「いや、分かりません。ゆっくり考えます」笑顔でそう言いながら、永瀬はエレベーターに乗った。

長い1日が、終わった。

(文中敬称略)

関連サイト
・[ニコニコ生放送]将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv199649118?po=news&ref=news
・図1
http://p.news.nimg.jp/photo/268/1333268l.jpg
・図2
http://p.news.nimg.jp/photo/300/1333300l.jpg
・図3
http://p.news.nimg.jp/photo/316/1333316l.jpg
・図4
http://p.news.nimg.jp/photo/325/1333325l.jpg
・変化図1
http://p.news.nimg.jp/photo/428/1333428l.jpg
・変化図2
http://p.news.nimg.jp/photo/498/1333498l.jpg
・図5
http://p.news.nimg.jp/photo/338/1333338l.jpg
・図6
http://p.news.nimg.jp/photo/341/1333341l.jpg
・図7
http://p.news.nimg.jp/photo/347/1333347l.jpg
・変化図3
http://p.news.nimg.jp/photo/499/1333499l.jpg
・変化図4
http://p.news.nimg.jp/photo/500/1333500l.jpg

図1