大人気ノベルゲームFate/stay night』のスピンオフ作品である『Fate/Zero』。それは破滅の物語です。7人の魔術師マスターとなり、それぞれがサーヴァントを召喚して争う聖杯戦争。勝者が願いを叶えられるこの戦いへと身を投じた者たちの死闘と悲劇が描かれています。

 この死闘と悲劇を更に強調するキャラクターが「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト」です。彼は魔術師の名門アーチボルト家の嫡子であり、将来を約束されたエリート中のエリート。自身の経歴に武功をつけ加えるため、聖杯戦争マスターとして参加します。能力、作戦、共に戦うサーヴァント、その全てに良い材料を揃えたケイネス。しかし、自陣営の人間関係の不破、対戦相手の性質など、様々な悪条件が重なります。そして、一筋縄ではいかないこの状況が、作品内の戦闘を一層盛り上げるのです。


【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】


■家柄、能力、地位。全てに恵まれた超エリート

 魔術師の能力は代を重ねるごとに強力になり、出自によって優劣が決まってしまうというのがFate世界の一般的な説。ケイネスが生を受けたアーチボルト家は、9代を越えて続く名門です。この持って産まれたポテンシャルに、本人の努力が加わり、魔術師としての力量は非常に高いものとなり、『Fate/Zero』の聖杯戦争に参戦したマスターたちの中でもトップクラス。更に、若くして時計塔の講師を務めています。

 家柄、実力、社会的地位、どれをとっても非の打ちどころの無い、まさしく絵に描いたようなエリート。このバックボーンと血統を何よりも重んじる性格ゆえに、「家柄の歴史の差は、魔術師個人の経験の密度によっていくらでも覆せる」という、教え子・ウェイバーの論文をアッサリ破り捨ててしまいます。これに怒ったウェイバーに、サーヴァントを召喚する為の聖遺物を奪われ、ケイネスは当初の予定とは別のサーヴァントを呼び出すことになります。よもや、教員と学生の対立が、あのウェイバーライダーのペアを生み出すことになろうとは。人間関係がどう転ぶか分からないということをよく表していますね。

■愛するが故に。広がる不協和音

 ケイネスが呼び出したサーヴァントランサーでした。ランサーは非常に優れた実力を持ち、主君たるケイネスに絶対の忠誠を誓った騎士です。しかし、ケイネスは彼を信用することが出来ません。理由は彼の許嫁にあります。許嫁の名はソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ。時計塔の学部長の娘であり、アーチボルト家と並ぶ名門の出自です。

 ケイネスランサーの伝説を知っています。その為に、ランサーが彼女を奪うのではないかと心配なのです。ランサーはそんなつもりは一切ないのですが、いかんせんソラウの方はそうもいかないようで・・・。ややこしい三角関係に加え、確実に勝利をもたらすべく策を練るケイネスと、騎士として堂々と勝負を挑みたいランサーは根っこの部分でかみ合いません。この複雑な人間模様がランサー陣営の注目ポイントといえるでしょう。

■稀有な才能と努力の証。月霊髄液

 ケイネスは、風と水の属性を持つという珍しい才能を持っています。これを最大限にいかした魔術礼装が「月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)」です。水銀で出来たこの礼装は、攻撃、防御の両面で優れた性能を発揮します。銃弾程度なら軽く防ぎ、壁や床を切り刻む、恐るべき力を持っています。

 さらにケイネスは、サーヴァント召喚のシステムに手を加ており、ランサーへの魔力供給はソラウに任せ、自分の魔術に全ての力を注げるようにしているのです。この魔術礼装と魔力供給パスの変更という強力な武器を引っさげ、切嗣に戦いを挑みます。この戦いでは、彼の魔術師としての実力や魅力が存分に描かれています。

 聖杯戦争の最有力候補として注目される「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト」。幾つかの不安要素は在りますが、自身とサーヴァントの実力はそれを補って余りあるもの。強力なライバルとして描かれる彼らに、主人公たる切嗣と、彼のサーヴァントたるセイバーがいかにして戦うのか。『Fate/Zero』の見所のひとつです。


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★記者:羽野源一郎(キャラペディア公式ライター)

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