着物を着る際に、切っても切れない関係にある帯。選び方一つで着物の印象もガラリと変わる。帯は着物の付属品のようなイメージがあるが、じつはとても大切なのだ。
そこで、以前男性向けの着物について取り上げたが(既出コネタ)、今度は帯について専門店「帯や」で聞いてきた。帯が今のようになったのは、いつ頃からですか?
安土桃山時代までは、帯といえば幅はなく細長いものでした。それが江戸時代中期に入ると革新的な変化を遂げます。歌舞伎がファッションリーダーとしての役割を持ち、衣装の影響から帯も幅の広い、女性らしさを表現したものとなったのです」

幅が細いということは、帯の結び方も今より簡単だったのだろうか。
「そうですね。帯の幅が広くなったことで、一人で結ぶことが難しくなりました。結果、着付師という職業が生まれました。当初、帯の結び方は前後左右どこでもよく決まりはありませんでしたが、未婚者は背中、既婚者は前で結ぶように定着したのもこの頃です。また、お太鼓結び、帯揚げ、帯締め等、現在でも知られている結び方は、江戸の深川で営んでいた辰巳芸者たちによって広められたものなんですよ」

例えば、ウナギのさばき方が関東と関西で違うように、帯の扱い方も地域によって変わるのだろうか? 
「江戸と上方では帯を巻く方向が違います。関東巻きは右から左へ、関西巻きは左から右へ巻きます」

ということは、遠山の金さん暴れん坊将軍は、江戸住まいなので、右から巻いているわけか! 
「帯の知識を持つと時代劇の見方も変わります。例えばテレビドラマ水戸黄門』の登場人物が名古屋帯を巻いていることがありますが、これは明治以降に普及したもの。水戸光圀が生きていた時代は江戸時代前期ですので、時代を飛び越えています。もちろん『水戸黄門』はフィクションなので目くじらを立てるのは野暮ですが(笑)」

様々な帯の面白さは分かったのだが、特に夏場に帯を締めた時の暑さや汗がどうも……何かよい方法はないですか? 
「人の体には一部を圧迫すると、それと半身側の発汗量が少なくなるという性質があります。着物を着て踊らねばらない舞子さんなどは、これを上手く応用させて上半身を帯で圧迫し、汗で顔の化粧崩れが起こらないようにしています」

さすが歴史が生んだ生活の知恵。化粧崩れを防ぐ方法は、和装に限らず日常にも応用が利きそう。帯の世界は奥が深いのだ。
(加藤亨延)

帯の値段も素材によりピンキリ。なかにはため息の出るようなものも!