下積み時代について聞かれたら「キツかったけど、学ぶことは多かった。でも戻りたくはないな」という風に答える人は多いのでは? 
ではこれから下積み時代に入ろうとする入社間もないフレッシュマンたちが、その回答を聞いたらどう思うでしょう?

二度と経験したくない程キツイとわかっていれば、そりゃ気持ちも萎える。ましてやホリエモンやイケダハヤトなどのネット界のスターたちが下積み不要論を展開する中、下積みをショートカットして少しでも効率よく上を目指そうとするのが人情ですわな。

その中、下積みが最強!と真っ向から異を唱える人がいる。多方面のメディアで活躍する人材コンサルタントの常見陽平さんだ。

「最近『やりたい仕事幻想』が広がっていて、大企業で歯車になるよりもベンチャーでやりたいことをやる方がいいという風に言う人が増えていますが、そういう時代だからこそ誰かがきちんと下積みの大切さを伝えなければいけないと思うんです」

その思いをストレートに表現したのが常見さんの最新作『下積みは、あなたを裏切らない!』(マガジンハウス刊)だ。

「会社に入って希望しない配属や仕事をやらされることがあると思うのですが、そういう下積みこそが社会人としての基礎力をつけます。今の学生はとても真面目ですが、それゆえにちょっと自分の抱いているイメージと違うと思考停止を起こしてしまうことがあります。でも会社という組織は彼らが思っているよりも奥が深く底力があるものなので、それをわからないうちからやりたくないという理由だけで下積みから逃げると実力がつきません」

しかし下積みの重要性を説くと「下積み原理主義者」と呼ばれるような時代になっていますが?

「たとえばホリエモンはそういうことを言っていますが、彼自身起業したばかりの頃は自分で走り回って雑用をこなして相当ハードに働いていました。激しく働けるのは若いうちだけですから、経験の少ないうちは下積みをこなしながらハードに働いた方が実力は付くんです」

確かに常見さんなどのアラフォー世代が若かった頃は「24時間戦えますか?」というCMのキャッチコピーが流行語になっていましたが、今の時代あまりハードに働くことを推奨しすぎると“ブラック”と呼ばれませんか?

「残業代をもらえないとか、無茶な仕事をやらされるとか、法律に背いたブラックな働き方と激しく働くことは混同されがちですが、そこはきちんと分けて議論しなければいけません。ブラックな働き方は人を食いつぶすだけですから絶対反対ですが、成功している人は必ずもの凄い努力をしています」
「たとえば今のプロレスブームの立役者である新日本プロレス棚橋弘至選手は、今でも地方に行ってチケットを手売りしています。あれだけのスーパースターがもの凄い努力をしているのを見ると猛烈に反省してしまいます」

自身が学生プロレス出身の常見さんのたっての希望で、その棚橋選手との対談が実現し『下積みは』の中に収録されている。棚橋選手との対談の他にも、社会人としてやっていくためのティップスや常見さん自身の個人的体験に基づくアドバイスなど、同書には常見さんが相当の熱量を込めて執筆したのが伝わってくる。まるで常見さんが若手ビジネスパーソンに向けて書綴っているラブレターのようだ。

「そうですね、とにかく若い人には目の前にあることから逃げないで取り組んで欲しいです。今やっていることは必ず将来役立ちますから」
(鶴賀太郎)

人気人材コンサルタントの常見陽平さん。執筆、各種メディアでのコメントに加え、この春から常任講師として千葉商科大学で教鞭もとっている。