本日4月20日19時から『しくじり先生 俺みたいになるな!!』テレビ朝日)がスタートする。
2014年10月から深夜で放送されていた同番組、めでたくゴールデン進出である。

しかし「深夜からゴールデンに進出」と聞くと不安になるのも事実。
過去、様々な名作深夜バラエティがゴールデンに進出し、苦戦し、姿を消したのを見てきたからだ。

約1ヶ月前の3月27日、深夜時代の最終回。
しくじり先生』では”ゴールデン進出しくじり”のプロを呼んだ。
オリエンタルラジオ中田敦彦先生。ゴールデンの冠番組を3つ潰したことがある実力者である。

ゴールデンへ向かうしくじり先生にエールを送る授業」と題された、その渾身の授業を振り返ろう。


徳川家康石合戦理論



まず中田先生は、『しくじり先生ゴールデン進出に対するネットの声を紹介した。

ゴールデンになると内容が丸くなって終わる
しくじり先生オワタ
・もっと深夜でやってて欲しい
ゴールデン視聴者が面白がるわけない
・半年後、番組がしくじってるな

「ちょっとやめてよw」「芯食うんじゃねぇよw」とビビる生徒たちに、中田先生は言い放つ。

「『しくじり先生』のなにがいいって、見た後にちょっとホッとするんですよ。
それなんでかっていうと、しくじった人がいろいろ言ういうじゃないですか。惨めな思いとかキツい思いしてますよ。でもここに立ってしゃべってんな、生きてるな、ってことを確認するんです。
なんだ、しくじってもいいんだって。
それを伝えてた番組が、なにしくじりビビってんだ!!」

この番組のいいところ、と中田先生が分析したのが徳川家康石合戦理論」
ハライチ澤部が「例えが賢すぎてわからない」となげく。
徳川家康がまだ幼かったころ。河原で子どもたちが石を投げ合うケンカに遭遇した。
大人数と少人数のグループにわかれている。多勢に無勢ですな、という家臣。
しかし家康は「少人数が勝つよ」と予言し、実際に少人数のグループが勝った。なぜか。

士気が高いから。

人数が少ないチームは不利なことを自覚している。一人一人が本気になる。
この番組は人数が少ない石合戦である、と中田先生は指摘する。
しくじり先生』は、最初から最後まで先生が1人でしゃべらなければならない。
アシスタントもいない。本気にならざるを得ない。石を当てにいかないといけない。結果、勝つ。


それでも いつか終わる


「俺たちがゴールデンに行った時なんか大護送船団よ。作家も大御所。一流のスタッフ。一流の局。壮大なセット。誰もが思った、沈むわけが無い!……沈んだんだよ」

ゴールデンは激戦区。ひと目にもさらされるし責任も重たい。
視聴率10%がボーダーと言われるが、視聴率が良くても悪くても現場は混乱する。
絶対に高視聴率を取る方法など誰もわからないからだ。

「不謹慎だからと言って、葬式のやり方を知らないではいられない」
中田先生はバラエティの終わりかたについて話し始める。

映画はクランクアップがある。ドラマは最終回が決まっている。ではバラエティは?
テキストをめくると「常にズタボロのバットエンド(真っ黒なページに赤字! )
視聴率が下がったバラエティはテコ入れを繰り返す。疲弊し混乱する現場。味方だったネットも叩き始める。告げられる最終回。「お前のせいだ!」みんなが罵り合う。

中田先生のアドバイスは「誰のことも恨むな」。
(生徒たち「もう聖書じゃん!」「ビジネスホテルの引き出しに入ってるやつ!」)

番組が終わるとスタッフたちはバラバラになる。でも消えてなくなるわけじゃない。
総合演習だった人がディレクターに、など、身分や立場を変えて会うことがある。
その時、初対面のときより全然いい仕事ができる。
前回の苦い思い出を共有しているから、今回はいい仕事にしましょうね、って目でわかる。

「だから、誰のせいでもないんだとグッと飲み込んで、次に会える日を待とうじゃないですか。」


「絶対に結果を出してくださいね」と聞かれたら


番組も終盤。中田先生が「最終問題」を提示する。

『「ゴールデンで絶対に結果を出してくださいね」と言われた時になんと答えるか?』

悩む生徒たち。「とりあえず頑張ります」「みんなでがんばりましょう」「まぁねぇ〜色々大変みたいですよね〜」とボンヤリとした答えを返す。

中田先生が出した正解は「お任せください!」

この質問は何を聞いているのかが大事。
絶対に結果を出すなんて誰もわからない。頑張るのは当たり前。
問われているのは「覚悟」なのだと。

中田先生、両手で教壇をガッチリと掴む。

「みなさん、自分の身内が例えば病気やケガで手術をしなければいけないとなった時に、絶対にこの人を救ってくださいねって医者に言うでしょ。そんな時、みなさんが今した答えを返されたらどう思うんだ!?」

「人生がかかってるんだ。社運がかかってるんだ。あなたがたに期待を託したんだ。その時問われているのは、覚悟なんですよ」

「だから大声で、はっきりと言う!『お任せください』と!」

「リピートアフターミー、お任せください!」
「「「お任せください!」」」

しくじり先生ゴールデン、絶対に成功させてくれますね!」
「「「お任せください!」」」
「任せたぞ!」

バシッ!!とテキストを教壇に叩きつけ、中田先生は教室を去った。振り向かずに。


この日の収録後の様子はYoutubeの公式チャンネルにアップされ、今でも観ることができる。
中田先生、熱くなるあまり「もしよかったら会議にも出ます」と申し出ている。

本日放送のゴールデン初回。登壇する”しくじり先生”たちも豪華ラインアップだ。
“世の中ナメすぎて逮捕されちゃった先生” 堀江貴文
“絶頂から転がり落ちた先生” 前園真聖
メンタリストなのにメンタルがボロボロになっちゃった先生” メンタリストDaiGo
モーニング娘。に全部持ってかれちゃった先生” 平家みちよ

果てして、しくじり先生ゴールデンでしくじるのか。覚悟を見届けよう。
(井上マサキ
中田敦彦『芸人前夜』(ヨシモトブックス) ガリ勉少年が「失われた青春」を手に入れるまでを書いた、オリラジ中田敦彦の自伝的小説。あっちゃん、かっこいい!