中国オタク事情を連載している百元です。第10回は現在の中国のオタク界隈に最も強い影響を与えている作品だと思われる『ギャグマンガ日和』と、その影響を強く受けている中国国産の人気アニメ『十万個冷笑話』に関して紹介させていただきます。

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 中国に入って人気になり様々な影響を与えた日本のアニメは『一休さん』や『聖闘士星矢』、『セーラームーン』、『スラムダンク』、『NARUTO』などがありますが、「現在の中国のオタクな人達」に最も影響を与えている作品となると、それは『ギャグマンガ日和』ではないかと思われます。

中国における『ギャグマンガ日和』の人気と影響の特徴としては、
・独特な人気の広まり方
・中国のネットの文化、センスに大きな影響を与えた
・成功したフォロワー作品が生まれ、それにより更なる影響が生まれている
などが挙げられます。

 中でも「十万個冷笑話」という成功したフォロワー作品が生まれ、それによりまた更なる影響が生まれていく……というのはこれまでの中国のオタク界隈には見られなかった非常に興味深い動きですね。


■ちょっと変わった人気の出方

 中国で『ギャグマンガ日和』のアニメの人気が爆発したのは比較的最近、今から3年ほど前だとされています。これは中国のオタクな人達(既に業界で活動している方や、セミプロレベルの方もいたそうです)による、中国の方言やスラングを多用した言わば「超訳ファンサブ吹き替え版」が中国のネット上に登場したのがその頃だったからだという話です。

 笑いに関する感覚や言い回しは翻訳するのが難しいものですし、中国のオタク界隈でも日本のギャグ系の作品が広い範囲で人気になるのは珍しく、「ギャグマンガ日和」も当初はカルトな人気を誇る作品の一つといったレベルでした。しかしその「超訳ファンサブ吹き替え版」は中国の笑いの感覚に合うように訳された上でノリノリな吹き替えが行われており、妙なテンションと独特な言い回しによって中国のネットを中心に大人気となりました。

■作品の影響

「超訳ファンサブ吹き替え版」の影響は非常に大きく、その中で使われた様々なスラングや言い回しは中国のネットで大流行し、定着していきました。
代表的なものとしては、
「我勒个去」(「クソッ!」「なんてこった!」)
「給力」(「スゴイ」、「良い」。ちなみに「不給力」だと「ダメ」「つまらない」)
などがありますが、「我勒个去」は春節晩会(中国の年末特番)の出演者が使うようなレベルになりましたし、中国の若者言葉やネットスラングの意味を調べていくと「ギャグマンガ日和」にたどり着くことも少なくありません。

 また中国のオタク界隈では「ギャグマンガ日和」の人気が爆発する以前と以後では、人気になる作品の傾向、笑いに関する感覚が大きく変化したという話もあります。
ちなみに中国のオタク界隈に広まり定着してしまったネタには例えば、
「変態という名の紳士」
といったものがありまして、中国のオタク界隈においても
「『紳士』と書いてhentaiと読む」
という状況となってしまっています。

フォロワー的作品の「十万個冷笑話」とその成功

 そして「ギャグマンガ日和」の影響として、中国オタク事情的に最も興味深いのがフォロワー的な作品、現在中国で大人気となっているアニメ『十万個冷笑話』(日本語の意味としては、「十万の駄洒落、ジョーク」といった所でしょうか)の出現です。

 『十万個冷笑話』は中国のweb漫画サイト有妖気で連載されていた作品が原作となったアニメで、『銀魂』や『ギャグマンガ日和』の影響が見て取れますし、何より大きいのが「超訳ファンサブ吹き替え版」を制作したスタッフが合流し、そのノリを取り入れた作風になっていることです。

 『十万個冷笑話』はアニメの配信開始直後から大人気となり、続編の制作、劇場版の制作、更にはモバイルゲーム化と順調に進み、昨年末に公開された劇場版は興行収入が1億元(約20億円)を超えたと報道されるなどの成功を収めています。

 近頃の中国の国産アニメはほとんどが低年齢層向けの作品で、数少ないある程度上の年齢層をターゲットにした作品も、光るものがあったり一時的に話題になる作品が出たりはしても商業的に成功し広い範囲で人気になる作品は出ないという状況が続いていました。ですから『十万個冷笑話』の成功に関しては、それまで無かった中国のオタク層を含む、ある程度上の年齢層をターゲットにした中国国産アニメの大成功例の一つという面もあります。

 また『十万個冷笑話』の人気は、『ギャグマンガ日和』や『銀魂』的なノリもさることながら、作中のネタに80年代に人気になった中国国産アニメ、例えば「ナーザ海を騒がす」といった作品のパロディも取り入れるなど、様々な面で中国のネットユーザー的に「刺さる」作品となっているのも良かったそうです。これは言ってみれば日本のアニメを単純にコピーする、パクるのではなく、自分たちの感覚で取り入れ、更に自分たちのセンスや知識による面白い要素を使って新たな作品を作る、中国のオタクが作った中国のオタクのための作品が成功するという、今までになかった新たな流れでもあります。

 以上のような事情があることから『ギャグマンガ日和』の人気とその影響に関しては、作品が現地のオタクな人達によって「翻訳」されることにより人気が大爆発した点、そして人気になり単純に模倣されるのではなく現地のセンスによるフォロワー的な作品が生まれて成功するなどの「その後に続く影響を与えた」という点が非常に興味深いものとなっています。

文=百元籠羊

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