自撮り”なんて文化も珍しくなくなった、この昨今。確かに写真を撮られる新世代の姿を見ると、そのこなれた振る舞いには憧れます。というのも私、被写体になることへの苦手意識があるんです。だから、自分が写った写真の手持ちは極端に少ない。全然、持ってないです。一定の世代より上に限定すると、この状況は珍しくないのでは……?

話は変わって、近ごろ「終活」なる言葉を耳にするようになりました。辞書には、こう書いてある。
「人生の終末を迎えるにあたり、延命治療や介護、葬儀、相続などについての希望をまとめ、準備を整えること」
この終活の一環として、最近では「遺影写真撮影会」なるイベントが人気を博しているそう。「元気なうちに遺影写真を撮っておこう!」とご高齢の方が気軽に参加し、ポジティブな気持ちで撮影に臨んでいるようです。

この「遺影写真撮影会」の現状について、今回は探ります。伺ったのは、首都圏を中心に6か所の葬儀式場を運営する「株式会社コムウェル」(東京都杉並区)。同社が撮影会をスタートさせたのは、2011年10月からだそうです。
「葬儀を行う際、まず最初に写真を探していただきます。でも、この時点で迷われるご遺族が非常に多かったんですね。そこで『遺影の撮影をイベントとして提案した方がいい』と考えたのが、企画立ち上げのきっかけでした」(担当者)

では、同社が行う「遺影写真撮影会」の流れをご紹介しましょう。

予約
電話にて、希望の時間を予約する。
メイク
当日、会場に到着したら準備をスタート。プロのヘアメイクアーティストによるワンポイントメイクを行う。参加者の希望やその日の洋服に合わせたヘアメイクが施される。


撮影
多くの女優・モデル撮影の実績を持つ著名なカメラマンによる撮影。参加者が一番綺麗に写る角度を探し、撮影する。

セレクト
約40カットの写真からセレクト。基本的にはキャビネサイズ1ポーズだが、希望者は追加注文や全カットデータの購入も可能。
お届け
おおよそ30~40日で、自宅に写真が届く。
「通常の遺影撮影会は台紙付きの写真1枚で5,000円ですが、台紙&ヘアメイク無しの撮影を1,000円で承るイベントも行っています」(担当者)


そんな「遺影写真撮影会」参加者の平均年齢は、主に60代後半~70代だそう。
「遺影写真撮影会と銘打っていますが、『元気なうちに撮っておきたい』と一年に一回、記念撮影として参加されるご夫婦もいらっしゃいます」(担当者)
皆さん、楽しんでこの“イベント”に参加しているようですが、それには理由があります。
「最近のカメラは高性能なので、すごくキレイに撮れるんですね。『メイクをしてもらったから、10歳若返ったような気持ちになる』、『お気に入りの洋服を選んでると、ウキウキしてくる』というお声もいただいており、すごく満足していただいていると実感しています」(担当者)
中には紋付袴を用意して撮影に臨んだ方もいたようで、その満足度が伝わってくるじゃないですか!

それにしても、かつてはネガティブなイメージが抱かれがちだった「終活」。随分、変わったものですねぇ……。
「きっかけとして、2011年の東日本大震災が挙げられると思います。あの日を契機に、終活に対する皆様の考え方が変わったと感じています」(担当者)

この数年で、状況はかなり変わっています。今までは、手持ちの写真を遺影に利用するケースが多かった。すると、スナップ写真を正装に着せ替えたり、妙に若い頃の写真が遺影になってしまったり、そんな事態も起こっていました。
「実は遺影って、一番長く見られる写真なんです。なおさら、最も気に入った写真をお渡ししたいと我々は考えております」(担当者)

コンセプトは「思いっきりおしゃれをして、自分らしい写真を残す」。遺影写真を撮っているはずなのに、さながらモデルになったかのような心境を味わえるイベントです。
(寺西ジャジューカ)

さながらモデルになったかのような心境で遺影を撮影します。