この記事をまとめると
■いま旧車は驚くほどの高値で取り引きされている
■デコトラ愛好家たちの間でも旧式トラックは人気が高い
■オーナーに聞いた旧式トラックの魅力を解説
子ども時代の感動を再現すべく旧式トラックをデコレーション
いま、昭和の魅力が再燃している。レトロなテレビや電話などが再注目され、クラシカルな雰囲気の家具なども各メーカーからラインアップされている。最近では当時の歌謡曲も若者に人気だという。そして自動車の世界でも、旧車の人気は不思議なほどに高いのだ。
日産スカイライン、そうハコスカやケンメリ、そしてブタケツと呼ばれるローレルの人気は凄まじく、現在では驚くほどの高値で取り引きされている。そしてこれらと同様に、デコトラ愛好家たちの間でも旧式トラックの人気が高まっているのだ。
デコトラの世界では、平成の時代にレトロアートと呼ばれる昭和風のデコレーションを施すことがブームとなった(LEDの普及の反動だろうか)。それに伴い、当時物のマーカーランプなどのパーツが高値で取り引きされるようになり、ブームが加速したのである。そして、ベースとなるトラックそのものも昭和生まれの個体が脚光をあびるようになったのだ。
しかし、ディーゼル車を所有・維持する場合、排気ガス規制という課題が存在する。そう、条例などにより主要都市圏に住む人たちは旧式トラックを所有することができないのだ。それゆえに地方で活躍する愛好家たちがこぞって旧車を飾ることに没頭しているのだが、当然のごとく機能面や性能においては、現行車両に遠く及ばない。それなのに、なぜ旧式トラックに情熱を捧ぐのだろうか。本稿ではその魅力について、触れてみたい。
まず大きな理由となるのは、子どものころに憧れた時代のトラックに乗りたいという想いがみな強いこと。デコトラ愛好家たちは、不思議と子どものころからデコトラが好きだったという人が多い。それゆえに、当時の感動を再現すべく、旧式トラックのデコレーションに励んでいるのだ。
「子どものころに見たようなデコトラを製作したいなと。もちろんエアコンやパワステ、パワーウインドウなどの装備は付いていないのですが、乗用車とは別に自家用トラックとして所有しているので、不便さは感じないですね。非力で乗り心地も悪いですし、仕事で使うのは抵抗がありますが……」。
そう話してくれたのは、とあるデコトラ愛好家の御仁。ここに掲載した画像の車両オーナーとは異なるが、自身でも旧式トラックを所有するというれっきとしたマニアである。長年の夢を叶えたという喜びに満ち溢れていたのだが、唯一の悩みといえば、飾りの費用よりも修理費や維持費が高くつくことだとか。しかし、そんな駄々っ子ぶりでさえも愛くるしいと感じているという。
鉄板むき出しの内装さえも魅力
そして現代のようなオシャレさがなく、無骨で野暮ったいデザインも大きな魅力だ、と話してくれた。
「昭和風の飾り方をするのなら、やっぱり昭和のトラックじゃないと似合わないので。小さな窓と複雑なプレスラインや凹凸がついたドアのデザインも、現行車両にはない大きな魅力ですね。折れそうなシフトレバーやシンプルなメーターパネル、そして鉄板むき出しの内装でさえも愛おしいです」。
ここまでの感情をもつ人に所有されている旧式トラックは、さぞかし幸せだろう。しかし、悲しいかな流行で旧式トラックを所有しているという人も少なくない。そのような人たちは、クルマの飾り方でだいたい判断できるという。
「昭和や平成初期のトラックが流行っていますからね。だからいろんな人がオーナーになっているのですが、その人の本気度合いや本物具合いは、クルマを見たらわかります。昭和のトラックに平成後期の飾りをつけている人が意外にも多いのですが、そういう人たちは間違いなくニワカ。本気で好きな人たちには、笑われていますよ。まぁ、そういう人たちは長続きしないので気にならないのですが。ただ、そういう人は知識も愛着もないからメンテナンスもおろそかだし、貴重な旧式トラックをただ傷めてしまっているので悲しいですね。そんな新しい飾り方をするなら、いまのトラックでやれよって思いますもん」。
なかなか手厳しいご意見ではあるが、それも好きな人からすれば切実な願いなのだろう。
もちろん趣味の世界である以上、好きになるのは個人の自由である。知識がなくても旧車を購入しても構わないし、玄人に笑われてしまうようなカスタムを施したとしても、悪ではない。ただその世界に足を踏み入れる以上は、より深く魅力を感じ取り、好きだという思いを養ってほしい。
本気の人たちの足を引っ張ってしまうようなニワカで終わることなく、流行り廃りに左右されることなく、自身の生き方を貫く。それが、趣味の世界を生き抜くなかでなによりも大切なのだと思う。
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