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 人によってコーヒーを飲む行動に違いがある。 日々の暮らしに絶対に欠かせないという人もいれば、あまり好きじゃないので飲まないという人もいるだろう。どうも、こうしたコーヒーの好みの違いは遺伝子が関係しているようだ。

 『Neuropsychopharmacology』(2024年6月11日付)に掲載された最近の研究では、遺伝的な体質がコーヒーを飲む習慣とどのように関連しているか明らかにしている。

 そしてこの分析では、コーヒー好きにする遺伝子は、麻薬の使用や肥満とも相関関係があるという意外な事実も明らかになっている。

 それは必ずしもコーヒーそのものやコーヒー好きの遺伝子が、麻薬に手を出させたり、太らせたりするということではない。だが、その遺伝的な背景について知っておくのも悪くない。

【画像】 精神刺激薬にも似たコーヒーのカフェイン依存

 カナダ、ウェスタン大学のヘイリー・ソープ氏らがコーヒーに関心を持ったのは、そこに含まれるカフェインがまるで精神刺激薬と同じように依存症になる可能性のある物質だからだ。

 カフェインを飲めば耐性(だんだん効きにくくなり、同じ効果を得るためにたくさん摂取しなければならなくなること)がつく可能性もあるし、禁断症状が出る可能性もある。

 その一方、世界中の人たちから愛されるコーヒーは、適量であれば、うつや不安から心を守ったり、死亡リスクを低下させたりと、健康へのメリットがあることも知られている。

 ソープ氏をはじめとする研究チームは、そんな不思議な二面性のある飲み物を愛する人たちの遺伝的背景を解明しようとしたのだ。

[もっと知りたい!→]砂糖をくわえても毎日コーヒーを適量飲むと死亡リスクが減少する

 分析されたのは、個人ゲノム解析およびバイオテクノロジーを行うアメリカの会社「23andMe」とイギリスのバイオバンク研究機関「UK Biobank」から得られた大規模なデータだ。

 それぞれ13万人分と33万人分のデータで、主にヨーロッパ系の人たちの遺伝的なデータとコーヒーの飲用習慣について記録されている。

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コーヒー好きに関連する遺伝子が特定される

 そして明らかになった主なことは、コーヒー好きかどうかには遺伝子が関係しているということだ。

 この分析では、コーヒーの摂取量に関連する7つの遺伝子座が特定されており、そのほとんどが代謝に関係していた。

 代表的なものは「CYP1A1」や「CYP1A2」といった遺伝子で、その変異はカフェインの代謝スピードに影響する。

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コーヒー好きと薬物使用者に相関関係

 だが、この研究では、コーヒー好きが遺伝することのほか、いくつか驚くべき事実が明らかになっている。

 例えば、コーヒー好きと麻薬などの薬物を使う人たちには遺伝的な相関関係があることが明らかになっている。

 コーヒーの摂取量を増やす遺伝子を持つ人は、喫煙・飲酒・大麻の使用を増やす遺伝的な特徴を持つ人が多いのだ。

 つまり、コーヒーの飲用習慣と薬物の使用との背景には、共通の遺伝的な基盤があるだろうということだ。

コーヒー好きと肥満との遺伝的な相関関係

 さらにコーヒー好きと肥満との遺伝的な相関関係も見つかっている。

 ただしこれは、コーヒーそのものや、コーヒーを好きにする遺伝子が太らせるということではない。

 ただコーヒー好きになる遺伝子が肥満の確率と関係しているというだけだ。もしかしたら、その背景には何か間接的なつながりがあるのかもしれない。

例えば、遺伝によってコーヒーが好きになるかもしれませんが、日々のコーヒーの飲み方はどうでしょう。ブラックが好きなのか、それとも砂糖や乳製品をたっぷり入れて飲むのでしょうか?(ソープ氏)

 今回の研究では、そうしたコーヒーの飲み方までは調べられていない。

 だが、コーヒーに砂糖やミルクを入れたり、コーヒーと一緒に甘いものを食べるといった習慣があれば、肥満につながることもあるだろう。

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文化や地理、環境や個人によっても結果は異なる

 また別の面白いことは、アメリカで集められた23andMeのデータと、イギリスで集められたUK Biobankのデータでは、いくつか結果に食い違いが見られたことだ。

 例えば、23andMeのデータセットでは、コーヒーの消費量は不安に関連する遺伝的特徴と正の相関にあったが、UK Biobankではその逆に負の相関だった。

 それと同じく、実行機能や知能などの認知能力は、UK Biobankではコーヒー摂取量と正の遺伝的相関が見られたが、23andMeではその逆だった。

一番驚くべきことは、アメリカとイギリスにおけるコーヒー摂取の遺伝的影響の違いでした。

コーヒー好きの遺伝子と薬物使用や肥満との間に正の相関があるなど、共通している点はありました。

ですが、不安といった精神疾患などについては、アメリカとイギリスとで反対の結果だったのです(ソープ氏)

 こうした食い違いは、文化や地理といった環境的要因が影響している可能性が疑われている。

 またコーヒーを飲み続けた結果は、個人によっても違う。それで健康を崩すかどうかは、先ほど述べたように、砂糖やミルクの有無など、コーヒーの飲み方によっても大きく左右されるだろう。

 つまりコーヒーを飲む習慣が良いか悪いかは、おそらく個人・環境・健康状態によって大きく変わると考えられるのだ。

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この研究結果に関する注意点

 この研究は、コーヒーが好きな人とそうでない人の遺伝的な背景を知る上で貴重なヒントになるだろう。

 ただし、調査対象となったのが、主にヨーロッパ系の人たちであるために、それ以外の人たちにも当てはまるのかどうかははっきりしない。

 また、2種類のデータセットでコーヒーの消費量を測定する方法が若干違う点にも注意が必要だ。

 じつは23andMeのデータは、カフェイン入りコーヒーのみがコーヒーとされたが、UK Biobankではカフェイン抜きのコーヒーも含まれている。この違いが、分析結果の食い違いの原因になっている可能性もある。

 今後の研究では、こうしたはっきりしない点を解明してもらいたいところだ。

追記:(2024/07/19)本文を一部訂正して再送します。

References:Genome-wide association studies of coffee intake in UK/US participants of European ancestry uncover cohort-specific genetic associations | Neuropsychopharmacology / Genetic differences found to influence coffee drinking behaviors / written by hiroching / edited by / parumo

 
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ただし個人差があります。コーヒー好きかどうかは遺伝子が関与していることが判明