FXなどの投資をするうえでは、自分の資産を守るための「リスク管理」が重要です。リスクを避けて損失を最小限に抑えるために、有効なルールがあるといいます。FXトレーダーであるHiro氏の著書「FX 環境認識の定石」(日本実業出版社)より、詳しくみていきましょう。

相場で戦うトレーダーの有効な「ルール」作り

資金管理はトレード成功の鍵となります。口座に入れる資金、トレード時の損失制限、利益の出金ルールを設け、リスクを最小限に抑えましょう。

生き残るために必要な最重要スキル

資金管理は、相場に生き残り、長くトレードをしていくために必要なスキルです。世界でも有名な投資家ジョージ・ソロスも、「まずは生き残れ。儲けるのはそのあとだ」という名言を残しているように、相場に生き残るために資金管理は非常に重要です。トレードで一番大事なスキルは資金管理だというトレーダーも多くいます。

資金管理は「1回のトレード当たりの損失を限定する」という文脈で語られがちですが、私はもっと広い文脈で多角的に考えて、はじめて「相場に生き残る」ということが可能になってくると考えています。つまり、「1回のトレードに限らず、お金が動くすべての場面で損失を限定する」といったルールを設けていくべきだと考えています。

例えば、証券会社の口座にお金を入れる入金段階を考えてみてください。FXは投資である以上、必ず余裕資金で行なうべきです。これは、FXというのは損失のリスクもあるため、最悪の場合なくなってもいいお金でトレードすべき、という意味合いもあります。

ですが、実がそれ以上に大事なのが心の余裕です。トレードではメンタルが大事と言われますが、心の余裕はメンタルに直結するため、トレードの成績に如実にあらわれてしまいます。

生活費をトレードにつぎ込むなどしてお金の余裕がない人は、冷静な判断ができません。事実、お金のストレスはIQを下げると言われています。つまり、余裕資金でトレードを行なうことは、万が一の自分の生活を守るために必要なアクションであり、相場で戦ってしっかり利益を上げていくためにも必要なことなのです。

ただし、一口に余裕資金といっても、それが意味するところは人によって全然違ってくるかと思います。まだ若い独身の方であれば、「余裕資金=毎月の黒字分」という考え方ができるかもしれません。しかし、進学を控えたお子さんをお持ちの方や、親の介護などで近い将来にお金を使う予定がある方は、その分を考慮して余裕資金の概念を考えていく必要があります。

このあたりはご自身の生活環境を考慮してシビアにお考えください。

お金は口座内にあるうちはただの数字の羅列

口座に入れた資金は、当然1トレードあたりの損失を限定すると同時に、「何回負けたらその週はトレードを休む」など、トータルで損失を限定するという視点も重要です。

いくら1回あたりの損失を限定したところで、その回数が重なれば損失は自分の許容範囲を超えていきます。その都度のリスクとご自身のトレード全体のリスクのバランスを考えるようにしてください。

そして、最後に大事なことをお伝えします。いくらトレードで利益を上げようと、口座内にあるうちはただの数字の羅列で、常にマイナスになるリスクもはらんでいます。それらは引き出して、はじめて使えるお金になるわけです。ですから、出金ルールを決めておくこともご自身の大切なお金を守るために必要なことです。

どのくらいの期間でいくら出金するのか、トレード資金を増やしたいフェーズなのかどうか、納税のことなども考えて、しっかりルールを作っておくことをおすすめします。国内の証券会社をお使いの方は、最低でも利益の20%(税金分)は毎月出金して別口座にプールしておくようにしてください。

以上のように、資金管理は入金するフェーズ、口座内でトレードするフェーズ、そして出金するフェーズと、全体のバランスを考えながらルール作りを行なってみてください。

損失を抑えてリスク管理…トレード思考の正しい順番

トレード成功の鍵は損切りから。リスクを最小限に抑えるためには、冷静な判断と計画的な行動が不可欠です。

損失を最小限に抑えることが成功への鍵

「トレードは必ずリスクをのんで行なう」

私自身も常に意識していることで、YouTubeやXでも何度も言わせていただいていることです。お金を稼ぎたくてFXをやっている以上、私たちは利益のことばかり考えてトレードしてしまいがちです。

ですが、これまで何度も言ってきたように、トレードとは常に損失のリスクがあるビジネスです。常に冷静なトレードを行なうためにも、想定外の損失は限りなくゼロにすべきです。そのためには、何よりも先に損失から考えてトレードを行なうことが大切だと考えます。

損失から考えて行なうトレードの思考の順番をお伝えします。

①まず、チャートを見たときに、方向性を確認して目線を固定します(環境認識)。

②次に、現在のチャートでトレードするとすればどこに損切り(S/L)を置くかを考えます。

③そして、損切り位置が決まってはじめて具体的にどこでエントリーするかを考えていきます。

多くの人は②と③が逆になっていないでしょうか?もしくは、最初にいきなり③のエントリーポイントを探そうとしていませんか?

もちろん、これは概念的なものなので、実際にはチャートを見た瞬間に最初にエントリーポイントが見えてくることもあります。ですが、あくまで思考の順番としては、まずトレンドの方向性を確認して買いか売りかの目線を決めて、そう判断した根拠が崩れるポイント=損切りラインを決めてから、エントリータイミングを探るというのが正しい順番だと私は考えます。

こうすることにより、嫌が応でもリスクから考える思考が身につき、利益優先でトレードしてしまうという悪いクセがつくことを防止できます。トレードのやり方も大事ですが、資金管理においては考え方も非常に重要です。

Point

●トレードの思考順序は、環境認識、S/Lの設定、エントリーポイントの決定の順

徹底的に資産を守る…テッパンは「2%ルール」

トレードでのリスク管理は成功の鍵。その中でも「2%ルール」は損失を最小限に抑えるための有効な手法です。

トレード1回のリスクを限定できる

トレードをする際にどのくらいのロット(通貨量)を打ち込むか、なかなか考えどころだと思います。ここは資金管理とも密接にかかわってくるトレードの重要な要素の1つですが、明確な答えを出してくれる「2%ルール」というものがあります。

これは簡単にいうと、「トレード1回の損失を口座資金の2%に収まるようにロットを調整する」というルールです。例えば、口座資金が100万円なら、トレード1回の損失額を2万円(2%)に設定することになります。

この場合のエントリー時の損切り幅が10pipsなら20万通貨、100pipsなら2万通貨という具合に、打ち込むロットは自動的に決まってきます。

リスクをのんだトレードがしやすくなる

この2%ルールのメリットは主に2つあります。

1つ目が、損失額があらかじめ明確なので、リスクをのんだトレードがしやすくなることです。負けた場合の損失がわからないままトレードするから、私たちは不安になってメンタルがブレてしまうという側面があります。これが、結果的にルールを破ったトレードや、冷静さを欠いた行動などにつながってしまうのです。

しかし2%ルールなら、先に損失額や損切り幅というリスクを明確にしないとロットが定まらないため、そもそもエントリーができません。こうすることで、損失を限定してくれるだけではなく、メンタルの安定にも貢献してくます。

徹底して自分の資金を守ることができる

2つ目のメリットが、徹底して自分の資金を守ることができることです。例えば、100万円の証拠金に対して2%の損失額は2万円ですが、仮に負けた場合、次のトレードは98万円(100万円-2万円)の2%である1万9600円の損失額にロットを調整してトレードすることになります。

つまり、負けて資金が減れば、それに合わせて損失額も調整されることになるので、多少連敗が続いてしまっても確実に資金を守ることができるのです。

一方で、資金が減った際にロットも小さくなるのであれば、元の資金量に回復するまで多少の時間がかかってしまうことがデメリットです。しかし、まだトレードが安定しないうちは資金を守ることを何よりも優先すべきです。

また、一度失った資金を回復するという側面だけに注目すると確かにデメリットに感じますが、トレードが安定してくればロットも自然と大きくなり、複利の力で雪だるま式に資金が増えていくという側面もあります。

このような性質を考えると、特にこだわりがない限り、2%ルールを資金管理として採用するのが鉄板だと私は思います。ただし、別に「2%」という数字にこだわる必要はありません。最初のうちは1%くらいのリスクでやっていくべきだと思いますし、自信がついてくればその割合を上げて資金を増やすスピードを加速させることもできます。

個人的には、どんなに上げても5%です。これ以上は複利のスピードにメンタルがついていかなくなる可能性があるので、ここがリミットだと感じます。2%ルールは1~5%の範囲内で無理なく運用していってください。

ロットの具体的な計算方法は、以下の式で算出できます。

●クロス円

ロット(通貨量)=損失額÷損失幅(pips)×100

●ドルストレート

ロット(通貨量)=損失額÷損失幅(pips)÷ドル円レート×10000

毎回この計算式に当てはめて算出するのは煩雑な作業になるため、アプリやWebサイトを活用したりするのがおすすめです。少し探せばすぐにいろいろと出てくると思うので、ぜひ試してみてください。ここの手間をいかに簡略化するかも長くトレードを継続していくためには重要な要素です。

Point

●2%ルールはトレード1回の損失を口座資金の2%に収める方法

●数字にこだわりすぎず、1~5%の範囲内でリスク管理を行ない、トレードを長期的に続けることが重要

Hiro FXトレーダー