近頃のラブホは、一昔前に比べてその進化に目を見張るものがあります。単なる男女の愛を育む空間という役割だけではなく、あらゆる可能性を追求した空間へと変わりつつあります。今回レポートしてくれた男性も、ラブホ本来の利用方法ではなかったようです。ただ、予期せぬ事態が起きてしまいました。

◆「らしくない」ラブホの使い方

 話を聞いたのは、福祉施設運営会社の静岡支社に勤める細田さん(仮名・25歳)。彼はこのたび入社以来初のプレゼンを控え、会場である都内の本社近隣で前泊することを決めました。

「会社が関東圏に新しく介護施設を展開することになり、私のプランが運良くコンペに通り、みんなの前でプレゼンすることになりました。自分にとっては人生初のプレゼンなので、上司に報告された日から緊張の連続です。当日は午前中からのスタートだったので、都内のラブホに前泊して臨むことにしました

 細田さんは最初、会社近くのカラオケ店でのオールナイト利用を考えていたそうですが、予約が直前だったので空きがなく、その裏路地にあったラブホテルを利用したそうです。

ラブホが快適すぎて寝坊

 プレゼン前日は、上司の計らいで早めに退社し、新幹で東京駅についた細田さん。そのまま中央線に乗車して、目的地付近の駅まで向かったそうです。

久々の東京だったので、本当は行きたいところもたくさんあったのですが、そこは我慢して予約しておいたラブホまで直行しましたラブホは、大学の頃に昔の彼女と利用して以来だったので、その豪華な設備に正直驚きました。とりあえず、デリバリーで食事を注文し、その後、せっかくなので一人では大きすぎるジャグジーバスに入りました。あ、もちろんプレゼンの予行演習もしましたよ」

 細田さんは、スマホで自撮りをしながら何度もプレゼンの予行演習をしたそうです。ところが――。

「ちょっと夜食を食べすぎてしまい、一通り予行演習をしたら睡魔に襲われたので、もう一度お風呂に入りました。あまりにも気持ちよかったので長風呂してしまい、少しのぼせながら風呂から出てもう一度予行演習をしようと思ったのですが、気がつけば朝でした。しかも、プレゼン開始30分前だったのです」

 顔を洗う間も無くダッシュで会社に向かった細田さん。ギリギリ間に合ったそうです。
 
ラブホにスマホを置き忘れる大失態

 プレゼンはなかなか好評だった細田さん。しかも、プレゼン終了時に、上司から寝ぐせで爆発していた髪形を指摘されるというナイスなツッコミも入り、会場を笑いの渦にしたそうです。しかし、ほっとするのも束の間、細田さんは大失態を起こしていたことに気づくのでした。

「プレゼンが終わってから、静岡支社の上司に連絡をしようとしたのですが、なんとスマホがないことに気づきました。おそらく、ラブホで寝坊して慌ててチェックアウトした際に部屋に忘れたのだと思い、上司に事情を話して逆戻りしました。フロントのおばさんに事情を話すと、何も言わずに『コレかい?』と差し出してくれました。どうやら、私の次に利用したカップルが発見して届けてくれていたようです。大切なデータが詰まったスマホだったので、正直とても焦りましたが、無事に戻ってきてホッとしました」

 バッテリーは切れていたそうですが、細田さんはお礼を言ってから会社に戻り、その夜は終電まで同僚との飲み会に参加したそうです。

◆「えっ!」衝撃の事実を知る

 翌日は休みだったので昼頃までぐっすり寝た細田さん。ところが、スマホの電源を入れて何気なく画面を見た時、異変に気づきます。

昨日録画したプレゼンの様子を見ようとしたら『ストレージ容量が一杯です』と表示されたんです。メモリはまだ余裕があったので不思議だったのですが、巨大な音声ファイルの存在に気づきました」

 その音声を再生し始めた細田さんは、ようやく状況が飲み込めたようです。最初は男女のたわいもない会話からスタートし、徐々にその内容が変わっていったのです。

男女の会話は最初だけで、その後男女が愛し合う様子が生々しく記録されていたんです。まるでセクシービデオのようでした。でも、会話の節々に生活感のある所帯じみた会話が入っていて、それがまたリアルでした。バッテリーが切れたのか、しばらくして音声はプツリと切れていました」

◆盗聴や盗撮を疑われたかも

 細田さんは、プレゼン当日の朝寝坊してしまい、スマホを置き去りにしたのです。その後、次の利用者が電源の切れていたスマホを発見し、フロントに届けてくれたそうです。

もし、あのカップルが録音中のスマホを発見していたらと思うとゾッとします。お礼を申しあげたかったのにそれもできず、だって、盗聴とか盗撮の疑いを持たれかねません。ラブホを利用することは今後あまりないとは思いますが、気をつけたいと思います」

 細田さんは、ベッドから出る前に音声ファイルを削除したそうです。

<TEXT/ベルクちゃん>

ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

―[ラブホの珍エピソード]―


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