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 潜水ドローンが南極の氷の下に潜り込み、これまでに見たことがない涙のしずく型など、謎の地形パターンを発見した。

 自律型水中ドローン「Ran」は、西南極ドットソン棚氷の下に27日間にわたり潜り込み、最大深度17km、距離にして1000kmの範囲の空洞のマッピングを行った。

 スウェーデンのヨーテボリ大学の海洋学者、アンナ・ヴォーリン教授は、この発見について「月の裏側を見るようなもの」と語っている。

【画像】 南極の氷の下に予想外の地形パターン

 ヨーテボリ大学の研究者らは、海底探査の前、氷棚の基盤の表面は滑らかなだろうと予測していた。ところが実際に潜水ドローンが映し出したものは、見たこともない涙のしずくのようなパターンだった。

 ほかにも山頂と谷底、あるいは台地や砂丘のような場所など、予想もしなかった複雑な地形が見つかっている。長いものは400mもあったという。

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氷の下で発見された、謎めいた涙のしずく型をした地形パターン / image credit:science.org doi/10.1126/sciadv.adn9188

地球の回転で生み出された水流の影響の可能性

 こうした謎めいた形状は、地球の回転(コリオリ効果)によって生み出された水流の影響であると考えられている。

 水が氷を横切って流れるとき、渦巻きができて、それが独特の形状を作り出すのだ。

 これまで南極や北極の氷が溶けるプロセスは、人工衛星や氷床コアによってもたらされたデータから理解が進められてきた。

 だが今回のように水中ドローンを潜らせて、直接観察するやり方は、氷の下側で何が起きているのか解明する新たな手がかりをもたらすだろう。

氷河の下側の融解に関して、これまでの仮説はさまざまな点で明らかに不足しています。現在のモデルでは、私たちが目にした複雑なパターンを説明できません。

ですが、今回の方法は、それを解明するヒントになるでしょう(ヴォーリン教授)
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いくつかのムール貝の形をした構造を含む領域を視覚化したもの / iImage credit: Filip Stedt / University of Gothenburg

氷河融解、氷床崩壊による海面上昇の危険性

 ドットソン棚氷は、幅50kmにわたって海に迫り出して浮かんでいる。このあたりでは、氷山が驚くべきペースで分裂しており、非常に不安定な状況にある。

 万が一、氷床全体が崩壊するようなことがあれば、3.4mもの壊滅的な海面上昇が世界的に起きる恐れがあるとされる。

・合わせて読みたい→南極の氷の奥深くには大量の生命体。中には未知の生物も

 これまでの研究では、ドットソン棚氷の下へ温かい海水が入り込むことで、端の部分が侵食されつつあるだろうと予測されていた。

 それによって棚氷が陸地から切り離されれば、やがて崩壊へとつながる危険な事態だ。

 そしてその予想通り、もっとも急速に氷河の融解が進んでいるところでは、海水の流れがその基盤を侵食し、それによって生じた亀裂がさらに融解を加速させていることが今回確認された。

 なお潜水調査を行ったRanは、氷の下で行方不明になってしまったとのこと。研究チームは、棚氷の奥深くをさらに調査するべく、新しい潜水ビークルの準備に取り掛かっている。

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この調査は、2022年に西南極の漂流氷域で行われた。2024年の再訪時、氷の下にいたRanは行方不明になってしまった / image credit: Filip Stedt / University of Gothenburg

 この研究は『Science Advances』(2024年7月31日付)に掲載された。

References:A whole new view on glacier melting in Antarctica | University of Gothenburg / Mysterious 1,300-ft-long structures found under Antarctic ice shelf / Never-before-seen shapes up to 1,300 feet long discovered beneath Antarctic ice | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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南極の氷の下で涙のしずくのような形をした謎の地形を発見