腎臓の病を患って働くことができないのに、外国人であることを理由に生活保護申請を却下されたのは不当として、ガーナ人男性が千葉市を相手取り、却下の取り消しや保護開始決定の義務付けなどを求めた訴訟の控訴審判決が8月6日、東京高裁であった。

松井英隆裁判長は、請求を棄却・却下した1審・千葉地裁の判決を支持して、男性側の控訴を退けた。男性の代理人をつとめる及川智志弁護士は「人としての血が通っていない冷酷な判決だ。怒りを禁じえない」とコメント。判決を不服として、上告するとしている。

●来日後に腎臓の病気を患って働けなくなった

原告のガーナ人男性、シアウ・ジョンソン・クワクさんは留学で来日。日本語学校を卒業後は、在留資格(技術・人文知識・国際)を得て働きていたが、週3日の透析が必要な腎臓病を患って働けなくなった

その後、医療を受ける在留資格で滞在しているが、就労は許されておらず、支援者の援助で生活している。ジョンソンさんは生活保護を申請したが、千葉市から外国人であることを理由として却下された。

●「人の命がかかっている問題について悩んだ形跡がない」

ジョンソンさんは(1)外国人も生活保護法に基づく保護の対象にあたる、(2)日本に在留している永住者、定住者などで、生活に困窮している場合、日本人と同様に保護するとするルール(昭和29年厚生省社会局長通知)の対象にあたるなどとして、却下の取り消しを求める裁判を起こした。

1審・千葉地裁は今年1月、(ⅰ)外国人である原告が生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、却下した千葉市の処分にあたらない、(ⅱ)原告が昭和29年通知に基づく保護措置の対象にあたらないと判断。ジョンソンさんの請求を退ける判決を言い渡していた。

この日の判決後、ジョンソンさんと代理人は東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。及川智志弁護士は、高裁判決について「人の命がかかっているという問題について悩んだ形跡がない。機械的にジョンソンさんの請求を棄却・却下した(1審)判決をそのまま踏襲した」と述べた。

ガーナ人男性の「生活保護」、控訴審も認めず…原告側「冷酷な判決だ」