職場では降格人事、給与カット、ハラスメント告発などのリスクにさらされ、家庭では夫婦不和、介護、更年期障害や健康不安に苛まれる50代たち。現代の中高年を襲う強烈な孤独感と不安の実態に迫った。
◆年収半減も当たり前!50代の転職市場のリアル
50代の転職の実態はいかなるものか。元大手自動車メーカー社員の本多剛志さん(仮名・54歳)はこう明かす。
「コロナ後、海外の工場が次々と閉鎖。思い切って早期退職に応募して転職活動を始めました。もともと年収は900万円でしたが、提示される額は半分以下ばかり。50社以上受けてようやく1社受かりました。自分の市場価値の低さを知って、半分うつのような状態でしたね」
◆地方都市の部品メーカーに転職するも…
やがて本多さんがたどりついたのは、とある地方都市の部品メーカーだった。
「年収は430万円に激減。また、社員が交代でトイレ掃除をするなど、中小企業特有の慣習にも馴染めなかった」
本多さんのプライドは粉砕し、やがて5か月で退職。今は交通整理のバイトをしながら職探しをする日々だ。
「パートのシフトを増やしてくれる妻には頭が上がらず、家にはほとんど居場所がない。こんなことならなんとしてでも会社にしがみついていればよかったですよ」
◆50代の転職が活況なのは一部のトップ層だけ
人事ジャーナリストの溝上憲文氏は語る。
「『50代の転職は活況』とも言われますが、あくまで一部のトップ層の話。全体では求人数は少なく、苦戦を強いられる人が多いのが実態です。デジタル人材など特殊スキルの持ち主でない限り、転職後の大幅な年収ダウンは免れません。大企業の年功序列制度では、勤続年数が長く年齢が高いほど役職が上がり、給与待遇が高くなる。転職活動で初めて自分の“真の市場価値”を知ってショックを受ける人も多いですね」
◆中高年の転職に大切なのは…
「中高年の転職にはリセット力が大切」なのだと言う。
「副業や趣味、ボランティアなどを通じて、会社以外の“外の世界”を知ることが重要。コミュニティを広げていくうちに『スナックで会った経営者から、事業に誘われた』など、正攻法以外の出会いから仕事に繫がることも珍しくありません」
転職活動前には入念な「心の準備運動」をしておきたい。
【人事ジャーナリスト 溝上憲文氏】
月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など
取材・文/週刊SPA!編集部
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