商船三井の出来たてホヤホヤ、最新の自動車船が一般公開。LNG燃料を採用し、従来よりもサイズアップして自動車の積載能力は6400台から7000台にアップ。環境性能と効率を両立し、自動車メーカーの希求に応えます。
サイズは最大限! 自動車7000台積みに
「海の日プロジェクトin青海」の一環として2024年7月15日、東京国際クルーズターミナルで商船三井では最大級となる7000台積み自動車船「TURQUOISE ACE(ターコイズ・エース)」が公開されました。同船は、この3日前の7月12日に引き渡されたばかりの新造船で、環境に優しいLNG(液化天然ガス)燃料エンジンを搭載するなど、次世代の船を代表するさまざまな新機軸が盛り込まれています。
まず目を引くのが、青とグリーンを全体に配した船体です。商船三井の自動車船としてカラーデザインを一新しており、同社の担当者は「自動車メーカーは環境意識が高く、LNG燃料の自動車船はそのアピールにもつながる。少しでもGHG(温室効果ガス)エミッションを減らす象徴的な船の一つだ」と話します。
「TURQUOISE ACE」は日本シップヤード(NSY)が受注し、今治造船グループの多度津造船が建造を手掛けました。主に日本―欧州間の完成車輸送に投入されています。全長は199.95mで総トン数は7万7695トン。船幅を従来の32mから38mに広げることで、積載台数を約6400台から約7000台に増やしています。船内は12層構造でスロープの位置や同線が最適化され、荷役のスピードアップや効率化と共に更なる荷役の安全性を実現しました。
貨物艙内部には、自動車の火災を早期に検知し、被害の拡大を防ぐためAI(人工知能)カメラを設置。AIが映像を瞬時に判断し、煙を検知するとアラートが直ちに発出され、乗組員へ異常を迅速に伝達できるようになっています。
乗組員の福利厚生にも力を入れており、高速で低遅延接続が可能な衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」も導入しました。通信環境の劇的な改善によって、これまで難しかった家族とのビデオ通話や動画の視聴などが可能となり、長い時間を洋上で過ごす船員の飛躍的な環境改善が期待されています。
エンジンはLNGと重油の双方を使える二元燃料(DF)対応。LNGは従来の燃料油に比べてCO2(二酸化炭素)の排出を約25-30%、SOx(硫黄酸化物)の排出を約98%、NOx(窒素酸化物)の排出を約85%削減することが可能で、外航海運を中心に採用が広がっています。ただLNGのバンカリング(供給)に関しては国内のバンカリング船がまだ少ないため、シンガポールなどで行うと見られます。
おでこがちょっと傾いてるよ!
これに加え、船首最上部を傾斜構造にして風圧抵抗を20%軽減するエアロダイナミクスデザインを導入。さらにプロペラ後方に発生するハブ渦を解消する最新の省エネ装置PBCF(プロペラボスキャップフィンズ)を組み合わせることで、推進効率の向上を図っています。
今回、東京港で公開された「TURQUOISE ACE」は、2024年3月に新来島どっく大西工場で竣工した「CERULEAN ACE(セルリアン エース)」の2番船に当たります。
商船三井は2023年4月に発表した「環境ビジョン2.2」の中で、2050年までのネットゼロ・エミッション達成を目標に掲げ、「今すぐ実現可能な GHG排出削減の取り組み」として、2030 年までにLNGやメタノールを燃料として使用する船を90隻投入する計画です。外航船だけで30隻以上のLNG燃料船を整備することが決定しています。
新造LNG燃料自動車船は、14隻の投入を決定済み。このうち国内建造船11隻は「BLUE」シリーズと銘打ち「青色の宝石」にまつわる船名が付けられていく予定で、商船三井の自動車輸送サービスの世界統一ブランド「MOL ACE(エム・オー・エル・エース)」のモチーフである「A」の文字を新しい形状でデザインした新カラーデザインが展開されていきます。
「TURQUOISE ACE」は、環境イメージの強いグリーンと、商船三井のブランドカラーであるブルーの融合を演出し、環境問題に対して商船三井グループとして挑戦し続けることを示したそうです。青色は、前シリーズ「FLEXIE(フレキシ―)」シリーズと同色で、伝統の継承を表しているといいます。
商船三井は内航分野でもLNG燃料フェリーの導入を進めており、すでに大阪―別府航路では「さんふらわあ くれない」「さんふらわあ むらさき」が就航済み。さらに大洗―苫小牧航路にも「さんふらわあ かむい」を含めたLNG燃料フェリー2隻が投入されることが決まっています。
こうした船のイベントでも公開が行われるようになったLNG燃料船。海を見ると次世代燃料船が航行している姿が日常になりつつあります。
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