どんなに仲の良い夫婦や家族でも、秘密にしていることは1つ、2つはあるもの。ときには、その秘密が原因で逃げ出したくなる……そんな人もいるのではないでしょうか。実際に逃げ出す人はそういませんが、なかには突発的に行動に移してしまう人もいるようです。

「子どものことは頼む」と言い残し、夫が行方知れず

――夫が帰ってきません

41歳女性の投稿。2つ年上の夫と8歳と3歳の子どもの4人家族。庭付き一戸建てを購入し、幸せな毎日を過ごしているはずでした。しかしある朝、夫は出社したきり、深夜になっても翌朝になっても帰ってきませんでした。LINEで「どうしたの?」と送信すると、「疲れた」「子どものことを頼む」「しばらくひとりにさせてほしい」と連絡があり、妻は大騒ぎ。しかも、それからは連絡が付かず……。「警察に相談したほうがいい」とアドバイスされたものの、会社に問い合わせると有給申請が出ていて、計画的に失踪したことがわかりました。

――ふっ、不倫でもしているのでは?

夫が自発的に行方をくらませていることが分かり、疑惑ばかりがつのっていく……心配やら、憤りやら、さまざまな感情に襲われたといいます。そして行方知れずから1週間ほどして、夫の友人によって、夫の行方は明らかに。ただ連絡は取れるようになったものの「絶対に場所は言わない」「家には帰らない」と夫。せめて帰ってこない理由だけでも、と思い聞き出したところ「不倫ではない」というだけ。

一向に帰ってこようとしない夫に対し、「いつまでもこのような状況が続くのであれば、離婚も考えないといけない」と伝えると、あっさりと「仕方がない」という返事。あまりの展開に怒りがこみ上げてくる妻。それを察した夫は観念したように告白を始めます。「実は借金があって……」。まさか1週間も行方知らずにしていた理由が借金とは。思わぬ展開に「何かの間違いでは?」と開いた口がふさがらなくなったといいます。

――なっ、なんでお金なんて借りてんのよ

――給与が減って生活費が……

――なっ、なんでそんな大切なこと、言わないのよ

怒りが止まらない妻。問いただしていくと、給与が減ったのは降格が原因であることが分かりました。「毎月の生活費は妻が管理する銀行口座に振込み」→「降格で給与2割減」→「給与減で毎月決まった振込額を入れられなくなる」→「足りない分は消費者金融を利用し補填」→「借金が膨れ上がり、怖くなり逃亡」というのが事のてん末。見えっ張りの性格の夫は、降格し給与が減ったこと、生活費をいままで出せないことを言い出せなかったようです。

総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』によると、世帯主40代前半・住宅ローン返済世帯の1ヵ月の消費支出は32万1,950円。プラスして月9万3,240円のローン返済をしています。それに対し、夫の月収は平均46万円ほど。

【40代前半・ローン返済世帯の平均家計支出】

■1ヵ月の消費支出:32万1,950円

(内訳)

食料:86,820円

住居:16,242円

光熱・水道:22,308円

家具・家事用品:12,565

被服及び履物:12,681円

保健医療:11,682円

交通・通信:46,918円

教育:17,086円

教養娯楽:36,472円

その他の消費支出:44,409円

■ローン返済:月9万3,240円

■勤務先収入(男):46万2451円

平均的な家計と仮定すると、毎月5万円ほど生活費が足りなくなる計算。足りない分を消費者金融から借りていたとなると、アッという間に借金は返せない金額になったことでしょう。

家族に内緒につくった夫の借金…妻への影響は?

あまりに不甲斐なく、さらに自分勝手な夫に対し、本当に離婚を考え始めた妻。そこでふと、「夫が作った借金……わたしに影響はあるのかしら」と考えたそうです。そこで相談の投稿。すると「今回の場合だと、OO(妻のハンドルネーム)さんが夫の借金を返済する義務を負う可能性があるんじゃない?」というアドバイスが。

――えっ、夫が家族に内緒で作った借金を、私が払わないといけないの?

驚愕のアドバイスに思わず呆然としてしまう妻。

(日常の家事に関する債務の連帯責任

第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。

ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

夫婦がともに暮らすなかで発生する債務を「日常家事債務」と呼び、夫婦は連帯して返済する義務を負うことになります。たとえば「(最低限の)食費」や「水道・光熱費」「日用品の購入代」「教育費全般」「医療費」など。実際は夫婦の収入や資産などを考慮して、総合的に判断するので、法律家に相談するのがおすすめです。

後日談。

夫が取った行動はあまりに身勝手なものであり、また家庭から逃げたところで消えるものではありません。ただ降格し減給となったこと、生活費が足りないことなどを言い出せなかったことには、妻である女性にも責任があったと反省。無事、夫は家に戻るとともに、家計を見直し。少しずつ借金を返済しているといいます。

[参照]

総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』

法令検索『e-Gov』

(※写真はイメージです/PIXTA)