老後の生活を支える公的年金。老齢年金の場合、受取り開始年齢に達すると受給権が発生し、権利を行使すると、受取り開始となります。しかし人による処理のため、ミスは100%起きないとは言い切れません。なかには、取り返しがつかないようなミスが生じることもあるようです。
8月15日は年金振込日…年金はいくらもらっている?
いまだに年金はある年齢になったら自動的にもらえるものだと勘違いしている人もいますが、たとえば老齢年金の場合、原則、受取り開始年齢は65歳。65歳に達したら、年金を受け取れる権利は発生しますが、その権利を行使しないことには、いつまで経っても年金を手にすることはできません。
年金の受給権が発生するのは誕生日の前日。その3ヵ月くらい前には、手元に基礎年金番号、氏名、生年月日、性別、住所、年金加入記録があらかじめ印字された「年金請求書(事前送付用)」と「年金の請求手続きのご案内」が届いているはず。必要事項と必要書類を揃えて65歳の誕生日を迎えてから「年金請求書」を提出すればOK。誕生日の前には受け付けてくれないので注意。それから1ヵ月後くらいに日本年金機構から「年金証書」と「年金通知書」が届き、それからさらに1~2ヵ月後くらいに指定した口座がに年金が振り込まれるようになります。
公的年金には「手続きすればもらえる年金」もいろいろあります。自分はどんな年金をもらう権利があるのか、一度、年金事務所に問い合わせしてみるのもいいかもしれません。
年金は毎月振り込まれるわけではなく、2ヵ月に一度。偶数月の15日が年金の振込日で、その日が土日であれば、その直前の平日が振込日になります。つまり今週の水曜日、8月15日は、待ちに待った年金振込日というわけです。
現役世代であれば、実際にどれほど年金がもらえるのかは大きな関心ごとでしょう。2024年度における年金額の一例はこちら。
◆国民年金に40年間加入していた自営業者など
・老齢基礎年金(満額):月額6万8,000円(昭和31年4月1日以前生まれは月額6万7,808円
◆厚生年金に40年間加入していいた夫と、専業主婦の世帯
・夫:老齢厚生年金(併給の老齢基礎年金含む)+妻:老齢基礎年金=月額23万0,483円
いわゆるモデル夫婦と呼ばれるものですが、共働きがスタンダードのいまどき夫婦には参考にならないかもしれません。仮に20~60歳まで正社員として平均給与を手にしてきた夫婦がいたとしましょう。夫が65歳から受け取れる年金額は、老齢厚生年金が10.3万円。併給の老齢基礎年金と合わせて、月17.1万円ほどになります。妻が65歳から受け取れる年金額は老齢厚生年金が8.3万円。併給の老齢基礎年金と合わせて、月15.1万円ほどになります。
夫も妻も40年間正社員として勤め上げたら、年金は月32万円。余裕ある老後が見えてきました。
あら、いつもより年金が多いわ…「ラッキー」と思っていたら
年金の受取りに関して気を付けたいのが、年金の過払い/未払い。
――えっ、そんなことあるの?
と思うかもしれませんが、人間のやること、ミスが絶対ないとは言い切れません。日本年金機構『事務処理誤り等について』で、今年6月の報告についてみていくと、令和6年度分の事務処理等の誤りが10件発生。さらに令和5年度分、令和4年度分……と合わせていくと、計98件のミスが発覚しています。その数が多いか少ないかは、評価は分かれるところ。ちなみに公的年金受給者数(延人数)は、令和4年度末現在で 7,709 万人とされているので、そこから考えるとミスの数は非常に少ないといえそうです。
ただミスによって特に影響のないものから、甚大な影響のあるものまでさまざま。ミスのうち、給付関連で過払いとなっていたのは15件、890万9,720円。1人あたり59万3,981円、余計に受け取っていました……と発覚しました。また未払いは12件、1,514万0,006円。1人あたり126万1,667円、払うべきものを払っていませんでした……と発覚しました。
未払いであれば後からもらえるのでまだいいですが、過払いは厄介です。数ヵ月後、数年後、過払いが発覚。当然、受け取った側はすでに使ってしまっているでしょう。
――多く払った分、返還してください。
――えっ、使ってしまってもうないですよ
――しかし、法律上、返還いただく必要*があるんです
*日本年金機構の事務処理誤りによる年金の過払いについては、法律上の原因がなく支払われたものであり、民法(明治29年法律第89号)に基づく不当利得として返還を求める必要がある
報告書の中でも、老齢年金の繰下げ処理の誤りで、1名の過払いが500万円以上になっている事案が報告されています。ミスだからとスルーされるわけではなく、法律上、過払い分は返還しなければなりません。さらにすでに本人が亡くなっていれば、「戸籍上の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」と、法律上の相続人が返還の義務を負います。まさに寝耳に水の話が、自身の死後、遺族に振りかかる……そんな悲劇が起こるかもしれないのです。
事務処理によって、思わぬ負債を抱えてしまう……受給者にそれほどの落ち度がないとはいえ、年金記録をチェックしていれば防げること。万が一のことが起きないよう、あらゆる年金記録はきちんとチェックすることが重要です。
[参照]
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