この記事をまとめると
■理想的な未来のクルマとして注目を浴びた燃料電池車はいまだ主流になっていない
■トクヤマが水素化マグネシウム(MgH2)の量産を開始したことを発表した
■新たな水素貯蔵材料である水素化マグネシウムの量産で水素の可能性が大きく広がる
FCEVの普及の鍵は水素の「つくる・運ぶ・つかう」次第だ
理想的な未来のクルマは、燃料電池車(フューエル・シェル・ヴィークル:FCV)。自動車産業界でそういわれるようになって久しい。
その理由について、実質的に排出するのがH2O(水)なので環境にやさしいこと、また燃料である水素を充填する時間はEVなどの充電時間に比べるとかなり短くてガソリン車並みであることなどが挙げられる。
一方で、FCVの弱みといわれてきたのがインフラ整備がなかなか拡充しない点だ。
ここでいうインフラとは、水素ステーションを指す。水素ステーションは、大型輸送車で液体水素を運び入れてそれを気化させて圧縮する方法や、ステーション内や近隣の太陽光や風力による発電で生み出された電気によって水電解することで得る方法などがある。
いずれにしても、一定量の水素を安定して供給するための水素ステーションは、法律で定められた安全対策を講じることも加味して、ある程度規模の大きな施設になっているのが実情だ。
水素については、「つくる・運ぶ・つかう」の観点から、トヨタやトヨタを中心とする商用車に関する企業が次世代技術を共同で研究開発するコマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)が、水素関連のさまざまな企業と連携した実証試験を行っているところだ。
そうしたなか、興味深い発表があった。
化学関連の大手企業であるトクヤマが4月、「次世代の水素キャリア、水素化マグネシウム(MgH2)の量産を開始した」というのだ。
発表によれば、水素化マグネシウムの特徴は大きく3つ。ひとつ目は、常温・常圧で安定しており、かつ軽量であるため輸送しやすいこと。ふたつ目は、高密度で貯蔵できること。そして3つ目が、水を加えることで水素ガスの生成が行えること。
本事業では、ベンチャー企業のバイオコーク技研が用意する活性マグネシウムタブレッドに、トクヤマが自社工場での苛性ソーダ生産時に発生する水素によって水素化するというプロセス。
両社はこれまで、水素などエネルギー関連の見本市などで、この仕組みによって発生する水素を使った小型の燃料電池車を出展したり、テレビニュースなどで同車両が走行する模様が紹介されるなど、各方面から注目が集まっている事業である。
マグネシウムの他にも、水素を貯蔵して運ぶことが可能な水素貯蔵材料にはさまざまな種類があり、大学や研究機関が民間企業と連携して実証実験などを行っているところだ。
水素貯蔵材料によって、水素の「つくる・運ぶ・使う」に新たなる可能性が広がることを期待したい。
コメント