映画でも「警官役はとりあえずドーナツ食ってる」設定が定番となっているように、アメリカンコップのドーナツ好きはもはや常識となっている。

 実際に私がアメリカにいた時も、ドーナツショップにはパトカーが止まっていることが往々にしてあったのだが、なぜ彼らはドーナツと密接に結びついているのだろうか?

 実際に、アメリカに「警官とドーナツ」の社会的概念が生まれた時期は1940年代ごろからで、以降その甘い関係が80年近くも続いているという。

 だがそこには、こんな背景があったようだ。

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警官とドーナツの甘い関係の真相

 ダンキンドーナツを筆頭にドーナツショップが台頭するアメリカでの警官とドーナツの仲睦まじさはすでにみんなの知るところだが、その起源の謎はことあるごとに多くの人を惹きつける。

David Shankbone, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

 ネット上では当然ながら、さまざまな憶測が飛び交うが、あるネットユーザーの「警官とドーナツのステレオタイプの起源は?」という問いかけに、実際のアメリカの元警官や有識者からこんな答えが寄せられた。

1940年代から1950年代にかけて、夜勤の警官たちは長時間勤務のときの夜食を食べにドーナツ店によく行ってたよ。カフェやレストランは時間外でも、ドーナツ店は比較的遅くまで開いていたからね。

シアトル警察の元署長ノーム・スタンパー氏)

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1940年代から50年代の夜勤警官には選択肢がほとんどありませんでした。事前に弁当を用意するか、勤務ルートに深夜営業する飲食店があることを祈るか、ドーナツでお腹を満たすしか選択肢がなかったんです

ニューヨーク在住の料理史研究家で作家のマイケル・クロンドル氏)

安くて手軽だった

(ボルチモア警察の元刑事ディック・エルウッド氏)

 ディック・エルウッド氏の現役時代は、夜勤明けでも、早朝に開店するドーナツ店がすぐにできたてのドーナツを食べさせてくれたそう。

 一方、インディアナポリスのインディアナ大学-パデュー大学の人類学教授ポール・マリンズ氏はタイム誌にこう語る。

アメリカで早朝から営業するドーナツショップは、第一次世界大戦後に大都市で始まった現象で、第二次世界大戦が終わるまで国内の他の地域に広まることはありませんでした

そのため「煮詰まったコーヒーを飲みながらグレーズド ドーナツを食べる太りすぎの将校」というステレオタイプは実は比較的最近生まれたものなんです

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 さらにドーナツと警官に関してはユーザーからこんなコメントが。

・ 元警官の父によると、当時は巡回シフトも夜中になってからランダムに割り当てられた。午前3時に腹が減った時に開いているのはドーナツショップとパン屋だけだったそうだ

・ 私が育った小さな町では、いつも午前3時ごろに夜勤の警官がドーナツショップにたむろしてたよ

・ 父が警官だが、昔はドーナツ店で深夜の警備を少し手伝うと、無料で食べ物をくれたんだってさ

ドーナツ店も防犯面から警官を歓迎

 かようにして警官とドーナツは1940年代からの長い付き合いなわけだが、その強固な絆が生まれた理由は深夜の食事に困った警官の都合だけではない。

 上のコメントにもあるように、ドーナツ店の方も、積極的に警官を歓迎していた。お客が少ない深夜や夜明けに警官が立ち寄れば、強盗などの犯罪の抑止効果が期待できたからだ。

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 ただし、当時行われていたらしい警官へのドーナツ無料配布に関しては、市民から「えこひいき」という声が上がるようになり、後に法執行機関の公平さを失う恐れがあるとして、受け取った警官が警告を受けることになった。

 そうしたことから世間から「警察はドーナッツ中毒」と揶揄されることもよくあったという。

今はいよいよネタに?持ちつ持たれつで発展した関係

 お互いに持ちつ持たれつな関係から発展したアメリカの警官とドーナツの深い仲。ハリウッド映画などにもよく登場するその光景は、世界中で有名だ。

JD Hancock from Austin, TX, United StatesCC BY 2.0, via Wikimedia Commons

 ただ近年アメリカは深夜営業する飲食店の増加で、ドーナツ以外の食事をする警官が増えてきた。

 さらに健康志向からドーナツではなくベーグルをほおばる警官もいるとのこと。

 とはいっても、救った子猫にドーナッツと名付ける現役ヒゲメン警官など、警官とくればドーナツってお決まりのパターンそのものを気に入ってる警官もいることだし、ドーナツを愛する警官のイメージは、この先もアメリカの警官らしいネタとして受け継がれていきそうだ。

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