ロシアサーカスの公演中、調教師が突然クマに襲われる事故が発生した。当時の様子は動画に収められており、クマが調教師に突進して体当たりする場面が映っていた。観客からは悲鳴があがり場内は騒然としたが、調教師にケガはなく、そのままパフォーマンスが続行された。米ニュースメディア『New York Post』などが報じた。

調教師を襲ったのは、ロシア南部ビイスクでサーカスの公演を行っていた「モレッティ・サーカス(Moretti Circus)」に所属する、クマの“ドーナツ(Donut)”だった。先日の公演で、調教師セルゲイ・プリチニッチさん(Sergei Prichinich、48)がドーナツと一緒にパフォーマンスを披露していた際、アクシデントが起きた。

当時の様子は動画に収められており、フェンスに囲まれた円状のステージ上に、黄色い上着を羽織ったセルゲイさんとバランススクーター(体重移動で操作する電動の乗り物)に乗ったドーナツが映っていた。

ドーナツは後ろ足だけでバランススクーターの上に立ち、器用に重心を傾けてセルゲイさんを追いかけていた。ところが次の瞬間、ドーナツはバランススクーターから降り、四つ這いの状態でセルゲイさんに突進した。

セルゲイさんは床に倒れ込んでしまい、観客席からは子どもたちの悲鳴があがった。

体重490ポンド(約222キロ)のドーナツにのしかかられたセルゲイさんは、持っていたバトンを使い、噛みつかれないように必死に抵抗した。さらにセルゲイさんは、ドーナツを押し退けようとするが、体重200キロ超のドーナツはピクリとも動かない。

ドーナツはしばらく大人しい様子を見せ、じゃれているだけなのかと思われたが、その後、セルゲイさんに噛みついて激しく頭を振った。最終的に、フェンスの外側にいたスタッフがドーナツを小突くと、ようやくドーナツはセルゲイさんから離れた。

セルゲイさんの容体が心配されたが、奇跡的にケガはなかった。しかも、セルゲイさんはドーナツの興奮状態が落ち着くのを待ち、そのままパフォーマンスを続行して最後までやり終えたのだ。

モレッティ・サーカスの代表であるニキータミハイロフさん(Nikita Mikhailov)は、「動物は何かが気に入らないと、いつもと違う行動を取り感情を表すことがあります。調教師であれば、誰でも理解していることです」と今回の件を説明し、冷静に対処したセルゲイさんを称賛した。

ドーナツがセルゲイさんを襲う瞬間を撮影した動画は、ネット上で拡散され、「自由を奪われてこんなことさせられているんだから、クマの行動は当然のこと」「可哀そうなクマ」「サーカスでの環境に耐えられなかったのかも」「だからサーカスで動物を見世物にすべきじゃないんだよ」など、サーカスのあり方について疑問の声が相次いだ。

ロシア動物愛護運動家ユーリ・コレツキーさん(Yuri Koretskikh)は、「現代のサーカスは、動物の使用を禁止するという人道的な方向へと急速に進んでいる一方で、ロシアサーカス団体は商業的な利益を守り、こうした流れに抵抗しています」と説明する。ユーリさんはロシア当局に対し、サーカスで動物を見世物にすることを禁止するように求めている。

なお、2021年にも露オリョール州で行われたサーカスで、クマが女性の調教師を襲う事故が発生した。こちらのケースでは、調教師が妊娠したことにクマが嫉妬したのではないかと推測されていた。

画像は『New York Post 「Circus performance goes horribly wrong when triggered bear mauls trainer in front of terrified children: ‘Snapped’」(Bskgram/east2west news)』より
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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