およそ四半世紀にわたり製造されたJR北海道の特急形気動車キハ261系は、同じ形式ながら年代によって差異が見られます。そのひとつがラウンジカーです。観光輸送も考慮した多目的車両に乗ってみました。

最終ロットは2022年製

JR北海道の主力特急形気動車であるキハ261系。実は全国的に見ても、JR化後の特急形車両で最も製造期間の長い車両です。最初のグループである0番台は、1998(平成10)年から2001(平成13)年にかけ製造されました。1998年といえば、後継車両が登場するか心配されている、寝台特急サンライズ瀬戸・出雲」の285系電車と同世代ということになります。

0番台は宗谷本線の特急高速化のために製造され、特急形としては初めて空気ばね台車を使った、コストパフォーマンスに優れる車体傾斜を実現しました。最高速度は130km/h。旭川~名寄間の線路改良も実施した結果、それまでの急行「宗谷」から52分も退縮した4時間58分で、札幌~稚内間を結びました。

そして2006(平成18)年より、789系電車を元に製造されたのが1000番台で、特急「スーパーとかち」の置き換え用に開発されました。ただ2011(平成23)年に石勝線脱線火災事故が起こったことで、より高速化を狙ったキハ285系開発中止となり、1000番台は2015(平成27)年度から函館発着の「スーパー北斗」置き換え用としても増備されました。

7次車まで製造されたキハ261系の最終ロットは、2022年製造。実に24年間も断続的に製造されたことになります。中でも異彩を放つのが、2020年に10両のみ製造された5000番台です。

定期や臨時としても使えるように

キハ261系5000番台は、それまでの「ジョイフルトレイン」と呼ばれる観光・団体用車両に代わり、定期特急の代替輸送や繁忙期の臨時列車などにも使える「多目的特急車両」として登場しました。また、宗谷本線特急の0番台がわずか14両しか製造されていないため、その予備車を確保する意味もありました。

5000番台は第1編成が「はまなす編成」、第2編成が「ラベンダー編成」と命名されました。なお、製造にあたっては国や北海道から補助金支援を受けています。観光輸送も考慮し、1000番台第7次車とは差別化が図られ、先頭車両には「はまなす」「ラベンダー」の花があしらわれました。

グリーン車は設置されず、「はまなすラベンダーラウンジ」と呼ばれるフリースペース車が連結されています。グリーン車と同じく小窓が並ぶ車体ですが、壁面や絨毯が木目調の内装で、窓向き座席や向かい合わせで、大型テーブルを備えました。

普通車も7次車と比較して、座席を柔らか目にするため、背もたれを二重構造とし、座布団にも伝統的なSバネを採用して、クッション性を高めています。

中間ひじ掛けにもコンセント2つとテーブルが内蔵され、座席を向かい合わせにしても便利です。なお、車販準備室がカウンター式になっていたり、多目的室が掘りごたつになっていたりといった変更もあります。

あまり周知されていない? 利用率の低いラウンジカー

筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年夏、札幌駅7時41分発の臨時特急「フラノラベンダーエクスプレス」に使用されたキハ261系5000番台に乗車しました。1号車がフリースペースとなるラウンジカー、2・3号車が普通車指定席、4・5号車が普通車自由席です。

発車が早朝のため、札幌圏以外では利用しにくい列車ですが、乗車率は5割程度。改良されたクッション性と枕のある指定席は、JR特急普通車としてはトップクラスだと感じました。

座り心地を確かめた後、ラウンジカーへ移動しました。自由席と同じなので早い者勝ちです。木目調の内装には落ち着きと高級感があり、よい雰囲気でした。

座席は窓向き、ボックスシートともリクライニングはしませんが、背もたれの傾斜は適度で、クッションも柔らかく、居住性はなかなか。ボックスシートのテーブルは非常に広く、グループ客向けとしては最高の設備でしょう。

キハ261系2014(平成26)より、車体制御機構の使用を中止していますが、それでも乗り心地は悪くありません。ただ特急列車内に、定員外で自由着席できるスペースがあるということは馴染みが薄いのか、ラウンジカーは座席の3割程度が埋まっただけ。外国人観光客が記念撮影しているのが目立つ程度で、もう少し周知されてほしいと感じました。

5000番台の製造目的のひとつである宗谷本線特急は、全区間乗車すれば5時間以上ですから、こうしたフリースペースの存在は貴重で、旅の気分転換になるものと思います。JR北海道のホームページや時刻表などで使用列車が書かれているので、狙って乗車してもよいかもしれません。

キハ261系気動車5000番台のフラノラベンダーエクスプレス(安藤昌季撮影)。