不気味な異形の存在と思いきや、その背景には悲しき物語が……。ストーリー性たっぷりのジオラマ作り動画がYouTubeに投稿されました。動画は「爆泣きしました」「感動」と反響を呼び、記事執筆時点で34万回以上再生され、約3万3000件の高評価を集めています。
●見事な技術で作られるリアルな自然
動画を投稿したのは、水生生物とタラソフォビア(海洋恐怖症)をテーマにしたジオラマ作りの動画を公開しているYouTubeチャンネル「Thalasso hobbyer たらそほびや」。
今回の動画では、オリジナルのバックストーリーが語られつつ、ジオラマ作りの過程が紹介されます。
この物語の主人公にして語り部となるのは、最初に作った小さな石造りの祠(ほこら)。祠は小さな神社だと説明し、「いちおう私も神、ということになるのか」と言います。
ジオラマの舞台となるのは森の奥深くにある泉。まず、発泡スチロールで泉の周囲の地形を作り、それを土台にして岩のような造形物を貼り付けて着色します。
土の地面にあたる部分にはベースの塗装の後、枯れ枝、複数の色の砂のようなものをちりばめ自然に仕上げ、木々を作って配置していくと森のようになってきました。出来栄えがあまりにリアルすぎる……。
●異形の存在に隠された悲しい過去
次に“この泉に住むもう1人の住人”として、人面を持つ異形の存在を作成。「生前、彼女は美しい人だったようだ」と語りつつ、能面の顔をした邪竜のような存在が作られていきます。
語られる物語によると、その女性の息子は兵士として戦場へ行ったまま帰らぬ人に。女性は息子を待ちつづけ、失意のうちにその生涯を終えたそうです。
息子を奪った戦争への憎しみが残留思念となってこんな姿になったとも述べる祠。意思疎通はできないといいます。
●祠の語り部の正体は……
ジオラマ作りは佳境に入ります。真ん中に泉を作って祠の土台の石組みと異形となった女性を配置。同時に、この場所に「夜中になると、泉に母親の幽霊が現れる。泣いているようだ」というウワサがあることが語られます。
祠は女性を気の毒に思った誰かにより泉に建てられたそうです。
蓮の花と葉を水面に配置し、祠にはお供えと思われるホオズキを2つ置きます。お盆では、ホオズキが死者の霊を導くちょうちんに見立てるので、語られている物語に関係しそうです。
いよいよジオラマは完成。バックストーリーを聞いてからは、祠をのぞき込む表情が子どもをいとおしむ母の姿にしか見えません。
ここで、語り部だった祠の主は「今夜は月がきれいだな、母さん」と語りかけ口調になります。そうか、息子はあなただったのか……。
「現世に強い未練を残す者に、天国への扉は開かれない。私のせいだ」「母さん、もうここへは来ないでくれ。私のことは忘れてくれ。これ以上悲しまないでほしい。泣かないでほしい」と、亡霊となった母親へ切々と訴えかけます。
最後には、「もし生まれ変わることができたら、もう一度あなたの子どもに……」と思いを吐露して物語は終わります。こんなん泣いてまう。
なお、今回の動画ではジオラマ作りの技術面については触れておらず、詳しい制作過程については別途公開されている解説動画で確認できます。
●感動の声が海外からも寄せられる
悲しい物語が込められた見事な出来栄えのジオラマに、コメント欄では「怖いかな? と思ってみたら爆泣きしました」「涙が止まらない」「一目で伝わる厚い物語性に感動しました」「サムネイルを見た時は、これまでで1番不気味なクリーチャーに見えましたが、今は優しい母親の姿が見えます」「切ないって言う簡単な言葉でしかこの感情を表現できないのが悔しい!」などの反応が寄せられています。
海外からも多数の反応が寄せられており、やはり涙をこらえきれなかった人がたくさんいるようです。
なお、たらそほびやさんは、さまざまな作品が解説とともに掲載されている著書『Thalasso hobbyer たらそほびや』を販売中。Amazon.co.jpや楽天ブックスなどで購入可能です。
※動画提供:YouTubeチャンネル「Thalasso hobbyer たらそほびや」
コメント