市販の成人用の風邪薬や頭痛薬などは、基本的に対象年齢が「15歳以上」に設定されています。そのため、15歳未満の子どもが風邪をひいたときは、子ども用の風邪薬を服用するか、医療機関を受診する必要があります。

 成人用の市販薬の対象年齢が15歳以上に設定されているのは、なぜなのでしょうか。もし、成人用の市販薬を15歳未満の子どもが服用してしまった場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。薬剤師の真部眞澄さんに教えていただきました。

15歳で体格や内臓の機能が大人と同程度に

Q.成人用の市販薬のパッケージには「15歳以上」と書かれていますが、なぜ対象年齢を15歳以上に設定しているのでしょうか。

真部さん「一般的に、成人用の市販薬は15歳以上を対象としているのですが、それは体格や内臓の機能が大人と同程度に発達する目安の年齢といわれているからです。例えば、薬の代謝が主に行われるのは肝臓ですが、肝臓で働く代謝酵素は成人よりも子どもの方がずっと少ないことが分かっています。

つまり、大人と同じ量の薬を服用すると、薬の代謝がうまく行えずにさまざまな副作用が現れるリスクがあるということなのです。

ですから、15歳未満の子どもに関しては、子ども向けの薬が販売されているほか、量を少なくして服用するように指示されている薬がほとんどです」

Q.では、もし、15歳未満の子どもが、対象年齢が15歳以上の市販薬を服用してしまった場合、どのような副作用が現れる可能性があるのでしょうか。

真部さん「先述のように、大人と同じ量の薬を服用してしまうと、薬の成分を過剰摂取してしまうことになります。特に15歳未満というのは成長期の段階ですから、長期的に見て体に影響が出る可能性も十分に考えられます。ですから、薬の服用にはより慎重にならないといけません。

もし、15歳未満の子どもが成人と同じ量の薬を服用してしまうと、本来、大人の服用時に想定されていた副作用がさらに強く出てしまい、重症化に至るケースのほか、胃腸障害やアレルギー反応、中枢神経系への影響といったリスクが考えられるでしょう」

Q.小さな子どもが服用できる市販薬はそれほど多くないと思います。もし子どもの体調が悪くなってしまった場合、市販薬を服用させるよりも、医療機関を受診させる方が良いのでしょうか。

真部さん「子どもは体の機能が未発達であるため、大した症状ではないだろうと思っていても、いつの間にか重症化してしまうケースが少なくありません。そのため、お子さんの体調が悪そうだと感じたら、すぐに医療機関を受診させるのをお勧めします。

小児科の場合は、夜間診療に対応している病院も多いため、『夜間で病院が開いていないかも…』と思っても、電話をすることで対応してもらえることもありますよ。

他に心配なのは、旅先など不慣れな場所での体調不良ですよね。旅行などに行く前には、かかりつけの医師などに相談してみるのも良いかもしれません。いつも服用する薬はもちろん、緊急の場合などに備えて薬を多めに出してくれるように手配することもできると思います。

もし、かかりつけの病院がないという場合は、この機会にかかりつけの病院や医師をつくっておくのも対策になりますね」

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 市販薬の多くは対象年齢が記載されていますが、それは子どもの体が未発達であり、薬をうまく代謝できないという理由があったからなんですね。子ども用の市販薬を購入するときは、しっかりと対象年齢を確認しましょう。

オトナンサー編集部

成人用の市販薬の対象年齢が「15歳以上」に設定されている理由は?