2024年夏、キヤノン株式会社CANON)から2種類のミラーレスデジタルカメラが発表&発売された。ひとつは『EOS R1』、もうひとつは『EOS R5 Mark II』だ。

 どちらもプロ〜ハイアマチュアに向けた高性能なデジカメだが、特に『EOS R1』はキヤノンの歴史としても重要な意味を持つ一台となっている。それぞれを簡単に紹介していこう。

空席の王座を埋める最高峰モデル

 1971年キヤノンは技術力を結集させた最高級の機会式一眼レフF-1』を発表した。1987年にはこれまでのFDマウントではなく新たにEOSシステムをスタートさせ、1989年にEOSの名を関した最高級機『EOS-1』を発表。2001年にはEOSデジタル初のフラッグシップ『EOS-1D』を発表してきた。

 過去50年に渡って紡がれてきた「1」の軌跡。それはキヤノンにとって「最高」を意味するものにほかならない。『EOS-1D』からおよそ四半世紀の時を経て、ついに登場したのが『EOS R1』となるわけだ。

 前置きが長くなってしまったが、要はEOS Rシリーズの最高級モデルが登場したという次第。今までは『EOS R3』が最高位モデルだったが、ついに1の空席を埋めるフラッグシップが帰還してきたのだ。歴史的な重みがわかっていただけるだろうか。

 縦位置グリップを内蔵し、ボディ全体には滑りにくいクロスパターンを採用。出で立ちからして今までのEOS Rシリーズとは一線を画すが、特徴的なのは見た目だけではない。すべての特徴を記すとキリがないため、主だった部分だけを紹介する。

 まずはセンサー周り。35mmフルサイズの裏面照射積層CMOSセンサーを採用しで、有効解像度は2420万画素。大きな特徴として、画像処理エンジンには定番の「DIGIC X」に加え、新たに「DIGIC Accelerator」を加えた2エンジン体制「Accelerated Captureシステム」を構成している。特性の異なる2つのエンジンを連動させることで、あらゆる画像処理の速度が向上した。

 また、カメラ内にはディープラーニングを活用したアップスケーリング機能が内蔵されており、最大9600万画素の画像を取り出すことが可能。「フラッグシップなのに解像度が低くない?」と思ったかもしれないが、そこは安心して欲しい。強力なノイズリダクション機能も内蔵されており、PCに繋がずとも高解像&低ノイズな写真に仕上げられる。

 背面ボタン配置は『EOS R3』に近い。バリアングル液晶を搭載し、動画機としてもパワフルに運用できる。

 EVFの見やすさには驚かされた。アイカップは大ぶりで、メガネを装着した状態でもよく見える。EVFの解像度は943万ドットで、最大輝度は『EOS R3』の約3倍にも迫る。『EOS R3』と同様に、視線入力にも対応する。

 AFの進化も目覚ましく、デュアルピクセルCMOS AFとしては初めてクロスAFに対応。柵や草むらの奥に見える動物を撮影するシーンでも、手前の障害物に引っ張られず被写体にピントを合わせ続けてくれる。新たに追加された「アクション優先」AFでは、シュートシーンのように特定の動きを行っている被写体をより認識し、AFフレームが移動する。撮影者はより構図に意識を集中させることができそうだ。

 本体重量は920gバッテリー含まず)。フラッグシップらしい重みはあるが、滑りにくく大振りなグリップのおかげでとても構えやすい。多くのカメラ愛好家にとってはオーバースペックともいえるプロ機だが、このカメラだから切り取れる表現を早く見てみたいものだ。

最新性能を盛り込んだ、ハイアマ垂涎の後継機

 一方で同事に発表された『EOS R5 Mark II』は、カメラを楽しむユーザーが自分ごとに感じられる高性能機だ。2020年に登場した『EOS R5』の後継モデルで、いくつかの部分で『EOS R1』とシステムを共有している。ある意味、最新性能を手頃に体験できる狙い目のモデルというわけだ。

 エンジンを2つ積んだ「Accelerated Captureシステム」は『EOS R1』と同様。有効画素数4500万画素の裏面照射積層CMOSセンサーを採用し、本機の方が解像度の面で上回っている。視線入力AFやアクション優先AFといった機能も余さず搭載しているが、クロスAFは非搭載だ。

 背面のボタン配置は『EOS R5』とほぼ同様。見た目は似ているが、ローリングシャッター歪みは約60%も改善されており、高速物を撮った際の仕上がりは大きく異なるだろう。

 ディープラーニングを活用した、カメラ内でのアップスケーリングノイズリダクションも搭載。アップスケーリングを使えば縦横の画素数を2倍まで引き伸ばせるため、なんと1億7900万画素の超高解像度写真を得ることが可能! 解像度が高ければトリミング耐性も増すため、標準レンズ1本でカバーできる範囲が大きく増えるだろう。最近トリミングすることが増えた筆者にとっては羨ましい機能だ。

 本体のパターンは『EOS R1』と異なるが、本機もグリップが深く持ちやすさは抜群。重量は656g(バッテリー含まず)で、従来機『EOS R5』の650gとほとんど変わっていない。フットワークとカメラ重量を勘案すれば、このあたりがベストという人も多いだろう。

 ファインダーは『EOS R1』ほど大ぶりではないが、こちらも十分視界良好。ボディサイズも相まって、まさにハイアマ〜プロが求める機能が詰まったモデルだ。

  最後に動画機能について簡単に紹介する。『EOS R1』は6K/60pRAW、『EOS R5 Mark II』は8K/60pRAWでの映像記録が可能。『EOS R5 Mark II』には専用の冷却アクセサリー『CF-R20EP』も用意されている。バッテリーも内蔵可能で、映像撮影として本機を使いたい人にとってはありがたいアクセサリーとなっている。

 両モデルとも外装にマグネシウム合金を採用。カバーの合わせ部はシーリング部材が使用され、シーリング部材が使えないダイヤルの回転軸などの箇所は隙間が最小限となるよう設計されている。信頼性の部分も抜かりがない。

プロに向けたキヤノンからのラブレター

 『EOS R1』は、報道やスポーツ撮影といった一瞬を逃せないプロのための道具として仕上げられている。一方で『EOS R5 Mark II』の性能はバランスが良く、最新機能をコスパよく味わえるハイアマモデルとして人気が出そうだ。実際、筆者も『EOS R5 Mark II』には強く惹かれた。このカメラで8K撮影デビューしてみるのも面白そうだ。

 『EOS R1』の発売日は2024年11月で参考価格は108万9000円。『EOS R5 Mark II』は発売中で価格は65万4500円〜(※キヤノンオンラインショップ価格)。

参考情報

https://canon.jp/

ミラーレスカメラ『EOS R1』と『EOS R5 Mark II』