Text:森朋之 Photo:石原敦志
北澤ゆうほ(the peggies)のソロプロジェクト・Q.I.S.(クイス)が初の全国ワンマンツアー『Queens Is Within YOU』を開催する。
2023年8月にQ.I.S.としての活動をスタートさせた北澤は、音源リリースとライブを重ね、ソロアーティストとしての存在感を確実に強めてきた。1stアルバム『DINING』(9月4日~配信リリース/9月15日(日) ~会場限定CD販売)をひっさげたワンマンツアーでは、ポップかつソリッドな楽曲をダイレクトに体感できそうだ。 Q.I.S.としての1年、アルバム『DINING』の制作、そしてワンマンツアーについて、北澤ゆうほ自身に語ってもらった。
――昨年8月にQ.I.S.としての活動がスタート。楽曲のリリース、ワンマンライブやイベントへの出演などを精力的に行ってきましたが、北澤さんにとってはどんな1年でしたか?
Q.I.S.は準備期間を経て始めたというより、とりあえずスタートさせて、そのときにやってみたいこと、その場で生まれたものを形にしてきて。本当にドタバタだったんですけど(笑)、「この感じ、久しぶりだな」と思いながら忙しく過ごしてましたね。
――「この感じ、久しぶりだな」というのは、バンドをはじめた頃に似ているということですか?
そうです、まさしく。今やりたいことをできるだけ早く発信して、鮮度が高いまま表現できるというか。それが許される環境があるのもうれしいですね。楽曲については、「聴く立場として好きな音楽もやってみたい」という気持ちもあって。最初は「バンドサウンド以外のものもやりたい」と思って試行錯誤していたので、自然と幅も広がったと思うし、自分としても良いステップになったのかなと。ただ、今回のアルバム(1stアルバム『DINING』)は、バンドサウンドにフォーカスしたかったんですよね。いろいろやってきたなかで、「いちばん好きなのはシンプルでソリッドなバンドの音だな」って改めて気づいたので。
――確かにライブ映えする曲が揃ってますよね。
そうなんですよ。あと、付き合いが長い人には「高校の頃のゆうほを思い出した」って言われるんですよ。その言葉を聞いたときにハッとしたし、「確かにそうかも」と思って。自分の脳みそと曲がそのままつながっているというか(笑)。(Q.I.S.を立ち上げて)新しいことに挑戦していると思われるかもしれないけど、「もとの自分に戻った状態で作っている」と言ったほうが近いかもしれないですね。
――なるほど。『DINING』というタイトルには、“楽曲をみんなでシェアしたい”“自由に味わってほしい”という意味が込められているそうですね。
はい。the peggiesの活動が止まった後は、「もう表に立って活動しなくてもいいのかな」と思っていたんですよ。その頃にKANA-BOONの曲(「ぐらでーしょん feat.北澤ゆうほ」)に参加させてもらって、音楽の関わり方について改めて考えて。そのときに「私にとって音楽は、人とつながるためのツールでもあるんだな」と思ったんですよね。Q.I.S.として初めてのアルバムを作ることになったときも、自分のなかに芽生えている感情にしっかりフォーカスを当てたかったし、そのなかで出てきたのが『DINING』というタイトルだったんです。たとえばライブだったら、お客さんに楽しんでもらうのはもちろん、私自身もQ.I.S.の音楽を楽しみたいなって。
――『DINING』に収録されている曲は、既にライブで演奏されている曲が中心だとか。
新曲(「チリとトマトfeat.稲生司」)以外は全部そうですね。初めてのワンマンライブ(2023年12月26日/東京・渋谷WWWX)のために書いた曲もあって。「鳴らせ BAD BIRTHDAY」はライブの1曲目のために作ったので、アルバムでも1曲目にしました。制作のスケジュールはけっこう大変だったんですけど、ライブでやり慣れている曲ばかりだったのですごくスムーズでしたね。7曲目の「僕等讃歌」、8曲目の「YELLOW」はthe peggiesの2019年のツアーのために作った曲なんです。ファンのみなさんも「いつ聴けるようになりますか?」って気にかけてくれていたので、音源に出来てよかったなって。
――「へいへいらぶらぶばいばい」「スローモーション」などもそうですが、大切な存在との別れ、新しい出発を歌った曲も印象的でした。
確かにQ.I.S.になってからの曲は“別れ”を歌ってる曲が多くて。ラブコメのタイアップとかではハッピーで楽しい曲も書いてきたんですけど、自分の経験をそのままアウトプットするときは、“楽しい”よりも“失敗しちゃった”“お別れした”みたいな状況を描く曲が増えていくんですよ。あと、たくさんの人に伝えることを意識し過ぎないようにしていて。「わかりづらいかもしれないな」とか「キャッチーじゃないかも」ということも気にせず、直接的な表現をするというのかな。ソロ1年生ですけど、本来の自分のワード感覚を思い出す期間にしたいという気持ちもありました。
――ストレートで率直な表現を意識している、と。そういうモードになったのは、どうしてなんですか?
私、この世に存在するもののなかで、いちばん好きなのが音楽なんですよ。無理したり、自分自身を隠しながら続けていると、いつか音楽のことを好きじゃなくなっちゃう気がして。Q.I.S.を始めたときは「キッズみたいな気持ちで、音楽をもう一度好きになりたい」という気持ちもあったし、「自分のためにやってる」というところもありますね。
――素晴らしいと思います。アレンジも北澤さんがやってるんですよね?
そうです。以前はバンドメンバーがいたし、アレンジャーの方に入ってもらうこともあって。私は作詞・作曲に集中していたんですけど、『DINING』に入ってる曲は自分でアレンジしたんですけど……大変でした(笑)。1年前くらいにベースを買って、デモも自分で作って。レコーディングのときは、ミュージシャンの人たちに「こんな感じで弾いてほしい」と伝えながら演奏してもらいました。
――Q.I.S.は作詞・作曲・編曲を自分でやるということですか?
いえ、人にやってもらっても全然いいです(笑)。クリエイティブの中心にいたい気持ちはあるんですけど、全部自分でやりたいと思っているわけではなくて。尊敬する、信頼しているミュージシャンを誘って、みんなで作りたいという思いがあるんですよね。
――新曲「チリとトマト feat.稲生司」には、Mr.ふぉるての稲生司さんをフィーチャー。
ソロ活動をはじめたときから、フィーチャリングをやってみたいという構想があったんですよ。the peggiesで(活動休止前に)最後に対バンしたバンドがMr.ふぉるてで、それ以来、仲良くさせてもらっています。司くんのボーカルもすごく好きだし、一緒に歌ったらどうなるかな?と思ってお願いしました。「チリとトマト」はタイトルを先に決めたんですよ。チリトマト味のカップヌードルが好きだったので(笑)。
――9月から10月にかけて、Q.I.S.として初のワンマンツアーが開催されます。ライブに対するスタンスも、この1年で変化があったのでは?
すごくありました。最初は「あんまりライブをやらなくてもいいかな」と思ってたんですよ。the peggiesはライブが難しかったというか、「これでいいのかな」って迷いながらやっていたところもあって。ライブで自分を表現することについて、そこまで自信を持てなかったんです。なのでQ.I.S.を始めたときも、「クリエイティブに集中するやり方もあるのかな」と思ったんですが、何回かやってみたらどんどん楽しくなってきて。この数か月は「もっとやりたい」という感じになってます。100%自分を解放できてる感じがあるし、「私、こんなふうにステージで自分を表現できるんだ」という発見もありましたね。
――ワンマンツアーの『Queens Is Within You』というタイトルについては?
直訳すると“あなたのなかに女王はいるよ”という意味なんですけど、これはQ.I.S.という名前にもつながっていて。Q.I.S.は“Queens In Sweaters”の略で、“みんな、生まれながらにして女王なんだよ”“着飾らなくても、セーターやスウェットを着てても、あなたは主役だよ”というコンセプトなんです。自信をなくしたり、自分を否定しそうなる毎日かもしれないけど、あなたは本来、主役であり、女王。ライブを観ることで、そのことを思い出してほしいなと思って、『Queens Is Within You』というタイトルにしました。“私は主役で、みんなは脇役”ではなくて、みんなが主役なんですよ。
――素敵なメッセージですね! アルバム『DINING』の曲を聴けるのも楽しみです。
めちゃくちゃカッコいいライブをやっているし、心の底から観てほしいなって思います。そういう気持ちでツアーを迎えられること自体が幸せだなって。ファイナルの恵比寿リキッドルーム(10/1)はthe peggiesでもよくやっていたので、今回もがんばりたいです!
――Q.I.S.の今後の活動にも期待してます!
最初にも言いましたけど、この1年、本当にいろんなチャレンジをしてきて。ワンマンツアーのなかでも、やりたいことや新しい興味が出てくると思うので、スピード感を持って表現していけたらいいなと思ってます。
<ライブ情報>
『Q.I.S. presents “Queens Is Within YOU”』
9月15日(日) 愛知・名古屋JAMMIN'
9月21日(土) 宮城・仙台MACANA
9月27日(金) 福岡BEAT STATION
9月29日(日) 大阪・umeda TRAD
10月1日(火) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
チケット:全自由5,500円(税込)
※別途ドリンク代が必要
https://w.pia.jp/t/qis-tour24/
<リリース情報>
1stアルバム『DINING』
【収録曲】
1. 鳴らせ BAD BIRTHDAY
2. へいへいらぶらぶばいばい
3. スローモーション
4. 革命前夜にキスして
5. BAD BYE BABY
6. チリとトマトfeat.稲生司
7. 僕等讃歌
8. YELLOW
公式サイト:
https://www.kitazawayuho.jp/
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