東京大学9月11日、授業料を改定する方針を発表した。学士課程では2025年度の入学者から現行の年額53万5800円を64万2960円に、修士・専門職学位課程(法科大学院除く)では29年度入学者から同様に64万2960円まで値上げする。在学生の授業料は現行のままで、博士課程についても52万800円を維持するという。

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 授業料値上げの理由について、東京大学は教育学修環境の改善のためと説明している。これまで東京大学では、国から与えられる資金「運営費交付金」を確保するための努力の他、競争的研究費や産業界との連携を通じた資金獲得、寄付金や大学債の発行などを通して「世界最高レベルの学びの環境を整備してきた」と説明。一方、高等教育のグローバル競争が激しさを増す状況にもなっているという。

 「『世界の誰もが来たくなる大学』として、その魅力をさらに確固たるものとするためには、教育学修環境を格段に改善し、文字通り世界から学生を引きつける世界最高水準の学びを不断に追求していかねばならない。その意味において、東京大学でこれから学ぶ学生のための教育学修環境の改善は『待ったなし』である」(東京大学

 続けて「東京大学の教育学修環境を持続的に改善する基盤を、なるべく迅速に創りあげなければならない」とし、安定的な資源である授業料の改善を決めたとしている。

●「次世代の研究者の育成は東京大学の歴史的な使命」

 在学生に値上げを適用しない理由については「過渡的な激変緩和措置」と説明。修士課程の値上げが29年度以降である理由も「在学生が学士課程を標準的に卒業して修士課程を修了するまでは現行の授業料のまま修学できるようにするため」(東京大学)としている。

 また、博士課程を値上げしない点については「博士課程は卓越した研究を生みだす研究者としてのキャリアの出発点としての意味あいが強く、次世代の学術を担う研究者の育成は東京大学の歴史的な使命であり続けている。学生・教員との意見交換の中でも、博士課程学生に対する配慮の要望がとりわけ強かった」と説明。博士課程の学生は経済的に厳しい状況にある人が多いことも、理由の1つとしている。

 今回の値上げに併せて、学生への経済的支援も拡充する方針も発表。現行では、学士課程において「世帯年収400万円以下の者は全額授業料免除」としていたが、25年以降の入学者については「世帯収入600万円以下の日本人学生は全額授業料免除」にするなど、支援の対象を広げる。この他にも、奨学金制度を活用できると情報発信にも力を注ぐなど、相談支援窓口機能の強化を早急に進めるという。

 「東京大学としては、現在、そして未来の学生のためにも、引き続きさまざまな財源確保に取り組み、教育学修環境のさらなる改善・向上を不断に続けていきたいと考えており、今般の授業料改定は、その実現を目指す基盤整備施策の一つとして、学生諸氏および教職員諸氏に理解と協力とをお願いするものである」(東京大学