鳥や動物の力を借りて行う狩猟や漁労の方法は、古来より世界各地で伝えられてきている。
日本なら鷹狩りや長良川の鵜飼い、瀬戸内のアビ漁なんかがよく知られているところだろう。
南アジアの国バングラデシュでは、カワウソを飼いならして魚を捕る「カワウソ漁」が今も行われている。
だがその伝統も時代の流れとともに失われ、今では急速に衰退しているそうだ。このままでは近い将来に、カワウソ漁は完全に消滅してしまうかもしれない。
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バングラデシュで続いてきたカワウソ漁
バングラデシュの南部一帯に広がる世界最大のマングローブ林、シュンドルボン。世界遺産にも指定されているこの一帯は野生生物保護区にもなっているそうだ。
そしてここで何世紀にもわたって続けられてきたのが、カワウソを使った「カワウソ漁」である。漁業のみが現金収入をもたらすこの地域では、カワウソたちは大切な働き手なのだ。
日本の鵜飼いなどと違い、ここでの漁では、カワウソたちが魚を直接口にすることはない。彼らの役割は、魚やカニ、エビなどを漁師の張った網に追い込むことだ。
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漁は通常午後9時~の夜間に行われており、カワウソたちの協力で、最大で約4~12kgの魚などが獲れるという。
漁に使うことで種の存続に貢献している面も
かつて日本に生息していた二ホンカワウソは、2012年に絶滅宣言が出されている。バングラデシュでも彼らの数は激減しており、カワウソ漁に使われるビロードカワウソは、絶滅危惧種に指定されているそうだ。
皮肉なことに、この漁がバングラデシュでの彼らの絶滅を防いでいるとも言えるのだそうだ。
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首都ダッカのジャハンギナガル大学の動物学教授、ムハンマド・ムスタファ・フィーロズ氏はこう語る。
川で獲れる魚の量は激減しています。堆積が過剰に発生し、水質汚染も進んでいます。そしてさまざまな種類の網や漁具の使用が、魚の生息数に影響を及ぼしているのです
バングラデシュでは、このカワウソ漁で生計を立てている人たちが、この25年間で500世帯から150世帯にまで減っているという。このままなら恐らく20年以内に、完全に姿を消すだろう。
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時代と共にカワウソ漁は滅びゆくのか?
長良川の鵜飼のように、観光業と結びつくなどの道を模索できれば、その未来はもしかすると変わるかもしれない。
だが、こんな風に人間の生業を動物たちに手伝わせることに関して、現代では虐待だという批判も大きくなっている。
例えばタイなどで行われている、猿を使ったココナッツの収穫も、「強制労働」だとの批判が出て問題になっているそうだ。
日本の鵜飼いについても、批判する声はあるようだ。伝統や文化を守ることと動物愛護は、うまく共存していくことができるのだろうか。
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