ローマ字で書いたって英語じゃなきゃ意味不明! 訪日外国人の増加に伴って密かに「標識」の表記が変化していた

この記事をまとめると

■日本の標識は独自のデザインが多くインバウンドによる事故が目立っていた

■2017年には一時停止の標識を「止まれ STOP」という表記に変更している

■案内標識の地名なども外国人に伝わりやすいよう書き換えられている

日本の標識がグローバル化

 普段は荏原郡の自宅にこもってシコシコ原稿を書く、猫にエサをやる、ウンチを捨てるなどばかりしているため、筆者は都会の事情に疎い。だが過日、所要があってJR渋谷駅前のスクランブル交差点を徒歩にて通ったところ驚いた。周囲を歩く人間の(目測によれば)およそ8割が、外国人観光客と思われる人々だったのだ。

日本各地の標識がグローバル化していた

 筆者がこの交差点をしばしば渡っていた30年ほど前は、外国人観光客の割合など(目測によれば)1割にも満たなかったはずだが、世のなかというのは変われば変わるものである。荏原郡にこもっていても「インバウンド云々」という報道はもちろん耳にしていたが、実際に目の当たりにすると、「ううむ……」というニュアンスでさまざまな感情が去来するのであった。

 で、さまざまに去来した感情のなかのひとつが「道路標識」についてのものだった。

 我が国の道路標識のなかには、諸外国と同形状・同スタイルのものもあり、また外国人観光客各位のなかには、日本語(とくに漢字)を難なく解する方もいらっしゃろう。だがおそらく大多数の各位は日本語(とくに漢字)には不慣れであり、筆者にとってのアラビア語と同じニュアンスに見えているはず。そして諸外国とは異なる形状・スタイルの道路標識も多いため、「……このままではそのうち、交通的な大混乱が生じてしまうのではないか?」と危惧したのだ。

日本各地の標識がグローバル化していた

 しかし、我が国の優秀な官僚各位は、筆者なんぞが危惧するまでもなく、すでに対策を取っていた。この10年ほどで、主に東京都内の道路標識外国人観光客向けに大きく進化していたのだった。

 たとえば「一時停止」の道路標識は、本邦においては赤い逆三角形のなかに「止まれ」という日本語が書かれている。しかし、「止まれ」という漢字およびひらがなは、おそらく多くの外国人観光客にとっては「アラビア語」である。しかも世界的には、一時停止の標識は赤い逆三角形でなく「赤い八角形」である場合が多い。

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 そのため、「一時停止」という、クルマを運転するうえではモーレツに重要な標識が外国人観光客ドライバーに認識されず、都内のそこかしこで一時停止不停止に伴う痛ましい交通事故が多発してしまうのでは──と思ったのだが、一時停止の標識は2017年に「止まれ STOP」という、英語も併記されたバージョンに変更され、全国で順次更新中となっている。これでとりあえずひと安心ではある。

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地名の表記もどんどん変更中

 また、行き先や交差点名などを示す「案内標識」のローマ字表記も、2013年8月から改善が実施されている。

 以前は、たとえば千代田区永田町の「国会前」には「Kokkai」とのローマ字が併記されていた。だがKokkaiといわれても、おそらく95%ほどの外国人観光客にとっては意味不明であるはず。そして残る5%の中途半端に日本語を知っている者は、同乗者に「Kokkaiとは黒海、すなわちBlack Seaのことです。ここを左折すると、ウクライナオデーサあたりに着きます」などと、誤った情報を発信していた可能性もある。

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 だが現在では、国会前(Kokkai)は「国会前(The National Diet)」という併記方法に変更されている。DietよりParliamentのほうがいいのでは? という気がしないでもないが、それでも「Kokkai」と比べれば1億倍は伝わりやすいだろう。

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 これと同種のものとしては、たとえば以下のような変更が都内各所で実施済みである。

旧)銀座通り口/Ginzadoriguchi → 新)銀座通り口/Ginza-dori Ave. Entrance

旧)貿易センタービル前/Boekisentabirumae → 新)貿易センタービル前/Trade Center Bldg.

旧)新宿御苑/Shinjukugyoen → 新)新宿御苑/Shinjuku Gyoen Natl. Garden

旧)万世橋/Manseibashi → 新)万世橋/Manseibashi Bridge

 なお、「飯田橋」は現在でも「Iidabashi」だが、すぐ隣の「神田橋」は「Kanda Bridge」という「Bridge付き」の表記になっている。これは、飯田橋が「橋」というよりも「地名」として定着しているのに対し、神田橋は実際の「橋」なのでBridgeを付けているというロジックだ。

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 また、そのほかでは「観光地に隣接する交差点名標識に観光地名称を表示する(例:「南4西4/South 4 West 4」から「すすきの/Susukino」に変更)や、「高速道路を路線番号で案内する『ナンバリング』の導入」等々の打ち手により、ここ最近の道路標識はめざましく進化しているというか、「外国人観光客にもある程度わかりやすいもの」へと変わってきているのだ。

 それでも「指定方向外進行禁止」標識の下にある補助標識に「大型等9-16/18-翌7/大型等以外の車両 終日」などと書かれている部分は外国人にとっては「ほぼアラビア語」であるため、これを原因とする混乱や事故は発生するのかもしれない。また、ずらずらと書かれている日本語を、限られたスペースのなかでどのように欧文表記すればいいかも、残念ながら筆者はノーアイディアである。

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 とはいえこの部分が何らかの革命的手法によって改善されれば、日本語が不得手なドライバー各位もいま以上に運転がしやすくなり、また当該ドライバー自身を含む我々全員の安全も、保証されやすくなるはず。

 道路標識全般のさらなる進化と補助標識に関する何らかの革命的表記方法が発明されることを、静かに期待したい。

日本各地の標識がグローバル化していた

ローマ字で書いたって英語じゃなきゃ意味不明! 訪日外国人の増加に伴って密かに「標識」の表記が変化していた