2022年10月上旬、ツイッターをきっかけに一時「高額療養費制度が廃止される」という情報が拡散しました。幸い誤情報でしたが、今後の公的医療保険制度がどうなっていくのか、自衛のため医療保険に入るべきか、などと不安になった方も多いようです。そんな方におすすめできる選択肢の一つ「共済」について解説します。

「共済」のおそるべきコストパフォーマンス

「共済」は、生協、JA(農協)、漁協等の組合員が掛金を出しあい、それをもとに運営されているものです。

全47都道府県にある「都道府県民共済」をはじめとして、「こくみん共済(全労災)」、「コープ共済」などが有名です。

メリットは、非営利事業なので、掛金が割安で、しかも、保障内容が充実していることです。

たとえば、「東京都民共済」の例を紹介すると、民間の医療保険に相当する「生命共済」の「入院保障2型」の保障内容は以下の通りで、掛金は月2,000円です。

・保障期間:65歳まで

・入院:1日1万円(60歳~65歳は1日7,500円)

・通院(ケガのみ):1日1,500円

・手術:2.5万円・5万円・10万円(60歳~65歳は1万円・2万円・4万円)

・先進医療:1万円~150万円(60歳~65歳は1万円~75万円)

・死亡・重度障害:10万円(60歳~65歳は5万円)

これだけでも割安ですが、「割戻金(わりもどしきん)」といって、毎年、使われなかった掛金が戻ってくる制度があります。たとえば、都道府県民共済だと、年度にもよりますがだいたい1/3くらいが戻ってきます。

さらに、掛金は確定申告年末調整において「介護医療保険料控除」の対象になります。しかも、その際、割戻金については計算に入れなくてよいことになっています。

そう考えると、実質上、掛金月1,000円ちょっとで保障を受けられることになります。

FPのなかには民間の医療保険をおすすめしない人が多いのですが、そういう人でも、共済については「入っておいて損はない」と評価していることがあります。

「共済」の弱点は?

このように、共済はきわめてコストパフォーマンスが高いものです。

しかし、弱点はないのでしょうか。以下、よく指摘される点について解説します。

◆共済は年齢が上がると保障が手薄になる?

まず、年齢が上がると保障が手薄になるという指摘があります。

どういうことかというと、今日、民間の医療保険の主流は、保険料が一生変わらず、同じ保障を受け続けることができる「終身医療保険」です。これに対し、共済の場合は、「60歳」「65歳」など、年齢が区切られ、その年齢を超えると保障が下げられたり、保障を受けられなくなったりすることがあるのです。

しかし、この点は共済の致命的な弱点とまではいえません。

すなわち、病気やケガの場合の保障が最も必要なのは、働き盛りのときです。働き盛りの人は、家族を養ったり、生計を維持したりするために、たくさんのお金を必要とすることが多いのです。

したがって、働き盛りの人にとっては、公的保障として、病気やケガで仕事を休まなければならなくなったときの「傷病手当金」や「障害年金」がありますが、それらはあくまで最低限のものにすぎず、お金が足りなくなる可能性があります。

そこで、働き盛りの間だけ、それらを補うものとして、割安な掛金で大きな保障を受けられる共済に加入するのは、有効な選択肢だといえます。

◆共済はカスタマイズしにくい?

次に、共済は民間の医療保険と比べてカスタマイズしにくいといわれることがあります。

たしかに、共済は基本的な保障内容が決まっていて、付けられる特約のバリエーションも比較的少なくなっています。

しかし、特約については、特に重要なのは「がん」「三大疾病」、あるいは「就業不能状態」に関するものであり、それらのリスクが心配であれば、民間の医療保険の特約ではなく、がん保険や三大疾病保険、就業不能保険等でカバーする手段もあります。

このように、共済の弱点として指摘されることがあるポイントは、いずれも致命的な弱点とまではいえません。

特に、「高額療養費制度等の社会保障制度の先行きが心配だが、さりとて民間の医療保険には抵抗がある」という方にとっては、コストパフォーマンスの高さを考えると、「共済」は、十分検討する価値のある選択肢だといえます。

(※画像はイメージです/PIXTA)