都市での生活に欠かせないバス。手頃な料金と本数の多さから、毎日のように利用している人も少なくないだろう。しかし利用する頻度が多いと、「とんでもない運転手」に遭遇してしまう確率も上がるのだ。今回はそんな、バスで腹が立った話を紹介する。

◆①子連れには「手を握ってしっかり見ていてください」

運転手の中には「とにかく何か一言いわないと気が済まない」という性格の持ち主がいる。

筆者が子どもを連れて乗車した際、「お子さんの手を握って、しっかり見ていてください。危ないですよ」とアナウンスをされたことがある。その時は既に手を繋いでいたので、なぜわざわざ全員に聞こえるようにアナウンスされたのか理解できずに驚いた。

しかし、これはまだ、ほんの序の口だったのである。

◆老人には「出発時刻を過ぎているので早く乗ってください」

次の停車駅では、ある女性の老人が乗ってきた。彼女が小銭を取り出すために財布を開けていると、運転手はきつい口調で「出発時刻を過ぎているので早く乗ってください」と再度アナウンスした。時計を確認したところ、出発時間ちょうどであった。

彼女は慌てるがあまり、財布を落としてしまい、小銭が床に散らばってしまった。周りの親切な乗客が小銭を拾うことを手伝っていたが、運転手はそのままバスを出発させた。そちらの方が、よほど「危ない」と思うのだが……。

その手の運転手に当たってしまうと、一刻も早く目的地に着くように心から願うようになる。そういう時に限って渋滞しており、まだまだ不愉快なライドは続いていった。

②外国人観光客に「キックボードは危ないから」と乗車拒否

次の停車駅では、外国人のファミリーが乗ろうとしてきた。その中の一人は男の子で、手にキックボードを持っていた。運転手から日本語で「キックボードは危ないから乗れません」と言われ、彼らは驚いた様子だった。

父親らしき男性がキックボードを目の前でたたんで見せて、一同が乗ろうとしたところ、運転手からは「危ないから乗れません」と再度拒否されてしまった。父親が大きな袋にキックボードを入れ、「大丈夫だ」と危なくないことを説明しようと試みたが、努力も虚しく「もう出発時間なので、外に出てください」と断られてしまっていた。

バスは出発し、車窓から見えた彼らの納得のいかない表情が、頭から離れなかった……。

◆③降車ボタンを押すと舌打ちをして消される

ようやく降車駅が近づいてきて、筆者の子どもが降車ボタンを押した瞬間。運転手は舌打ちをして、その降車ボタンを取り消した。筆者が驚き、再度ボタンを押すと、今回は取り消されることはなかった。

子どものイタズラだと思われたのだろうか? 疑問に思ったが、わざわざ聞く気力もなかったので、永遠に謎のままである。

——バスの運転手のシフトが大変なことはよく分かる。人手不足で、長時間の運転をしなくてはならない時もあるのかもしれない。「お金を払っているからいい思いさせてくれ」とは言わないが、せめて同じ空間にいるわずかな時間くらいは、お互い心地よく過ごしたいものである。

今回は腹の立つ運転手の話を紹介したが、もちろんいい運転手もいる。全員がそうではないので、腹の立つ運転手に当たってしまった時は「不運だったな」くらいに考えておけばいい。バスに乗ることを過剰に恐れる必要はないのだ。

<文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

―[乗り物で腹が立った話]―