大多数の人にとって「老後不安」は他人事ではありません。また、それなりの給料をもらっていたつもりが、定年後の年金を知って愕然…というのもよくあるパターンです。実情を見ていきます。
「超高齢化社会」の日本の現状
中高年ばかりか、先日まで学生だった20代までもが「老後不安」に気をもんでいるという日本の厳しい状況。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』(令和3年)では、「老後が心配である」との回答は77.0%。年齢別では、20代が81.2%、30代が84.8%、40代が87.3%、50代が81.9%と、つまり、全世代の8割以上が「老後不安」を感じているのです。
老後不安の要因として最も多いのが「十分な金融資産がないから」の66.7%で、次が「年金や保険が十分でないから」の54.8%です。
安心できるほどの預貯金もないが、将来もらえる年金も期待薄となれば、不安を感じるなという方が無理なのでしょう。
一方、現役世代のおよそ半数が「老後における生活資金源」として「公的年金」をあげています。では、年金でどの程度の生活ができると考えているかを尋ねると、「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」と55.8%が解答しています。その一方で、35.0%は「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と答えています。
【年齢別「老後不安」の理由】
「十分な金融資産がないから」
20代:63.8%
30代:69.5%
40代:71.8%
50代:70.2%
「年金や保険が十分ではないから」
20代:44.2%
30代:47.4%
40代:50.8%
50代:55.0%
出所:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』(令和3年)
実際の状況はどうなのでしょうか?
受給できる年金は、自営業だった人=「老齢基礎年金(国民年金)」、会社員や公務員だった人=「老齢基礎年金+老齢厚生年金(厚生年金)」です。
なお、老齢基礎年金の満額時の年金額は、2022年度、月6万4,816円となっています。
ねんきん定期便の年金見込み額に「たったこれだけ!?」
一方厚生年金の保険料は月ごとの給料に対して定率で、個人によって納付額は異なります。実際に受け取れる厚生年金は、以下の計算式で算出します。
◆加入期間が2003年3月まで
平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
◆加入期間2003年4月以降
平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
平均標準報酬額は現役時代の月間収入の平均値で、62万円の上限が設定されています。年収別、おおよその年金受給額の目安は以下となっています。現状、こちらに老齢基礎年金が加わった金額を手にすることになります。
【年収別おおよその老齢厚生年金月額】
300万円:5万6,000円
400万円:7万5,000円
500万円:9万4,000円
600万円:11万3,000円
700万円:13万1,000円
800万円:15万0,000円
900万円:16万2,000円
日本の平均的なサラリーマンの基本給は平均月33万円で、中央値は29万円程度です。年収は平均で545万円、中央値は445万円程度になります。そこから考えると、月に14万〜16万円程度の年金を手にできると考えられます。
50代になると、毎年届く「ねんきん定期便」に年金見込額が記載されるようになりますが、これは「給与水準が今後横ばいで推移」したうえ、なおかつ「60歳まで年金に加入」と仮定して計算されており、実際の受給額とは異なるため注意が必要です。
50代は、会社員生活においてもっとも給与額が高くなる人が多い年齢です。50代前半で年収670万円、50代後半で年収660万円程度になります。しかし、年金は会社員時代の給与の平均で算出するため「たったこれだけ!?」と、驚愕する人もいるでしょう。
年金額の過不足については、人それぞれのライフスタイルによるため一括りにはできませんが、多くの人にとって十分とはいえない金額なのは確かでしょう。しかも、将来の年金制度改正等で給付が削られる可能性もあります。
公的年金の受給額は「給付開始時の現役世代の手取り収入と比べてどの程度の年金額を受け取れるか」(所得代替率)をひとつの指標としています。2019年度、厚生労働省が示した所得代替率は62%でしたが、今後25年で51%程度になるとされています。つまり年金はおよそ2割減るのです。
もうすぐ年金を手にする世代であれば、現在の見込み額で老後をプランニングすればいいでしょう。一方、まだ数十年にわたって就労する若い世代は、年金の大幅減を前提に人生設計を行うことが必要だといえそうです。
できる範囲で資産形成をスタートさせることが、年金不安を軽減させるまず最初の足掛かりとなるのではないでしょうか。
幻冬舎ゴールドオンライン編集部
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