求職者の支援制度ですら対象外の「運転免許の取得費」。自腹で取るのが当たり前のなかで、公的補助を受ける方法があります。そのことを紹介したのは、現役の総務大臣でした。

最近だと「ドローン操縦講習」補助も多い

運転免許の取得には一般的に何十万円もの費用がかかります。他の資格と比較しても取得費用が割高ですが、自費での取得が当たり前とされます。実技講習も必須なので、コストと時間の調整がたいへん。チャンスを逃すとなかなか取得が難しい側面があるのですが、公的補助を受けながら、しかも「近所の人に歓迎されながら」取得する方法があります。

消防行政のトップでもある松本剛明総務相が2024年9月4日の閣議後会見で、消防団員確保の取組みについて問われ、次のように話しました。

「消防団の意義について、広報を効果的に進めたいと思っておりますし、また、消防団に入団いただきますと、これまでも免許の取得などでも優遇措置を設けてきたのですが、最近よく使われるものであると、ドローンの操縦講習なども行っておりますので、消防団に入団いただくことで技術を習得することもできる。このようなメリットがあることを幅広くアピールしてまいりたいと思います」

松本氏が話す“免許取得などの優遇措置”の中に、運転免許の取得が含まれています。具体的には、消防団に入団すると、運転免許費用の約半分を公費負担する措置です。消防団は住民がその地域の消防力や防災力の向上の一翼を担う制度ですが、高齢社会で入団者が減少し、火災や災害に対応しにくくなっている現状があります。また、新入団者の中には活動に必要な資格が整ってない場合があります。

例えば、消防団の活動では、消防ポンプ車などを運転しますが、2017年の免許制度改正で「準中型」が創設されたため、新しい制度で普通免許を取得した人は運転できなくなりました。運転免許の取得費補助に限ると、この弊害を解消するための措置なのですが、運転免許の取得で公費補助があるのは、とても珍しいことなのです。

運転免許は運転可能年齢の大半が持っているとされます。若年層では、取得しないまま社会に出る人が増えていますが、雇用保険を使った就職・スキルアップの求職者支援メニューには含まれていません。作業員などを雇用する企業の担当者からは「求職者支援で技術を習得しても、現場まで自分で運転できない人がいる」と嘆く声を聞くことがあります。

都市部で就労し、その後に帰郷した人が運転免許取得に苦労した話もあります。通勤にも使える基本中の基本資格ですが、消防団の入団で地域貢献しながら、免許取得の計画をたてることができるとしたらどうでしょうか。

他にもあるぞ! 消防団で得られる「資格」の数々

消防団の活動は、もともと仕事を持った人たちが担っているので、団員として活動することで仕事の時間が削られるということも少ないです。何より地域貢献をしながら、自分の時間との両立を計ることができます。

運転免許の取得支援は、すでに普通免許を所持している人が「準中型免許」を取得する場合と、普通免許を持っていない人が「準中型」を取得しようとする2種類のケースが想定されています。準中型免許では、車両総重量7.5t、最大積載量4.5t未満の車両を運転することができます。普通免許と同じ18歳以上で取得が可能なので、普通免許を持たない場合でも措置が可能なのです。

例えば、埼玉県三郷市では準中型を取得した人に対して上限15万円の補助があります。この対象に普通免許を持たない人も含まれます。

長野県松本市の場合は、準中型、中型、大型自動車免許の取得費用が補助の対象になります。準中型は全額、中型・大型免許は準中型で必要となる費用が上限です(普通免許の所持者が対象)。愛知県碧南市でも同様の補助が実施されています。地域によって補助額の差があります。また、全国共通で合宿などでの宿泊費、追加の講習費用などは補助対象額に含まれません。

普通免許を持っていない場合、準中型免許の取得には、最短で17日。技能41時間、学科27時間が必要ですが、こうした制度でかなり取得に手が届きやすくなるのではないでしょうか。

補助を受けた場合には、消防団員を一定期間続ける必要があります。全国的に5年間消防団に在職し、消防団活動を続けることが条件です。

このほかにも入団することで危険物取扱者(乙種第4類)、チェーンソー特別教育、小型移動式クレーン技能講習、玉掛け技能講習、車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込み用及び掘削用)、防災士などの資格取得にも補助があります。

消防団活動は市区町村の狭い地域がひとつの単位になっているので、補助制度の条件は全国一律ではありません。詳細は地域によって違いがあるので、住んでいる地域の自治体への確認は必要です。

松本剛明総務相(中島みなみ撮影)。