北海道函館市は、新幹線の函館駅乗り入れをめぐり、フル規格の車両で、札幌・東京の両方面から乗り入れる案を基本に検討を進める方針を示しました。
「フル規格」車両の乗り入れを基本に検討へ
北海道函館市は2024年9月、新幹線の函館駅乗り入れについて、フル規格の車両で、札幌・東京の両方面から乗り入れる案を基本に検討を進める方針を示しました。
北海道新幹線が発着する新函館北斗駅は、函館市街地から17.9kmも離れた北斗市内に位置しており、新幹線駅と函館駅を結ぶ在来線の「はこだてライナー」が運行されています。
2030年度末に予定されている北海道新幹線の札幌延伸後、札幌~函館間を結ぶ在来線特急「北斗」は廃止される予定。新幹線延伸後に同区間を移動する場合、新函館北斗駅で新幹線から「はこだてライナー」への乗り換えが必要になる見込みです。
2023年4月に就任した函館市の大泉 潤市長は、公約に「新幹線の現函館駅乗り入れに関する調査の実施」を盛り込み、市の令和5年度補正予算に調査費を計上。2024年3月には調査報告書がまとまり、新函館~函館間の在来線を活用して新幹線を函館駅まで直通させることは「技術的に可能」であることが報告されています。
市は構想の実現に向け、在来線規格で新幹線に直通が可能な「ミニ新幹線車両」の場合と、通常の「フル規格新幹線車両」で乗り入れる運行パターンを検討する方針を示していました。
運行形態はどうなる?
市は、車両をフル規格とする理由について、ミニ新幹線よりも輸送力が大きく、北海道新幹線の既存駅のホームドアもフル規格であることをあげています。車両の長さが異なるミニ新幹線が新たに乗り入れた場合は、ホームドアを改修する対応が必要になるとしています。
また、以前に公表された報告書では、新函館北斗駅で分割・併合を行って札幌・東京の両方面から乗り入れる案も示されていました。このケースは輸送力が低下し、分割・併合に時間を要する課題があるため、札幌・東京の両方面から単独での乗り入れを基本に検討していく方針が示されました。この場合、札幌~函館間で8本、東京~函館間で5本の運行が見込まれています。
構想が実現した場合、東京~函館間の列車は、新函館北斗駅でスイッチバックして函館駅へ向かうことになります。ミニ新幹線では、秋田新幹線の大曲駅で列車の進行方向が変わりますが、フル規格の車両でもスイッチバック運行が実現することになります。
なお、調査業務を委託されたコンサル会社も、企画提案の時点で「新函館北斗~函館間には、新幹線の断面に障害となるトンネルが存在しないため、乗り入れ車両はミニ新幹線車両ではなく、通常のフル規格新幹線車両の導入可能性が高い」と指摘していました。
フル規格車両を函館駅まで直通させる場合、新函館北斗~函館間の線路は、軌間が異なる新幹線と在来線車両の双方が走れる「三線軌条」に改修する必要があります。また、新幹線と在来線で電圧も異なるため、複電圧車両を新造するか、地上側の設備を昇圧する必要も出てきます。
市は今後のスケジュールや事業費について、関係機関と打ち合わせた上で精査し、判断する方針。新幹線の函館駅乗り入れによって追加で発生する車両調達費は、JR北海道に求めない方向で検討を進めるとしています。
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