キャディは9月17日、製造業におけるアナログかつ属人的な調達・見積もり業務をAI解析とデータ活用によって刷新し、サプライチェーンデータの資産家に貢献するAI見積もりクラウド「CADDi Quote」の提供を正式に開始したことを発表した。

同発表に際しキャディは、メディア向け発表会を開催。CADDi Quoteの事業責任者を務めるキャディ 執行役員の中原雄一氏、キャディ 代表取締役社長の加藤勇志郎氏が登壇し、新サービスの概要や製造業の改革に向けたアプローチを説明した。

○製造業の中でも課題が山積みの“調達”にフォーカス

日本の産業を支える製造業の現場においては、人手不足地政学リスクなどさまざまな課題が表出しているが、昨今特に重要度が高まっている外部環境の変化・リスクとして“調達コストの上昇”がある。さらに、円安による物価の高騰やSDGsへの対応なども影響し、モノづくり企業の調達担当者が対応を迫られる変化が急増しているという。

そういった業務課題を抱える調達購買業務において、特に課題視されているのが“見積もり業務”である。この工程は、調達において必ず必要となる作業でありながら、システム化があまり進んでいない現状があるとのこと。日々煩雑な業務に追われる購買担当者にとっては、見積もり依頼の増加によって作業が慌ただしくなり、その業務に関する知見が属人化しがちだという。さらに、過去の取引で蓄積されたEDIやERPのデータを顧みる余裕もなく、価格交渉などにおける担当者の作業量が増加し、また業務量過多に陥るなど、サプライチェーンのリスクが高まり続ける悪循環が多く見られるとする。

こうした現状を受け、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ことを企業理念に掲げるキャディが今般正式にリリースしたのが、見積もりに関わるアナログ業務を変革するCADDi Quoteだ。同サービスは、サプライチェーン上のあらゆるデータを解析し活用することで人手の作業を軽減させる製造業のAIデータプラットフォームの一部として、見積もり情報をベースとしたサプライチェーンのデータを蓄積・活用し、一連の業務のシステム化によって負担軽減に貢献するという。

また、過去の見積もりデータをCaddi Quoteに蓄積することで、AIによる解析やデータ活用を通してインサイトを抽出することが可能に。必要な商品を選択すると、類似品を取り扱う見積先も候補として併せて表示され、過去データや実績価格などを照らし合わせることが可能だ。こうした機能は業務アシストとして活用でき、従来の業務では確認が及ばなかった過去の見積もり・調達データまでを鑑みたうえで発注先の選定などを行えるとする。また業務自体がシステム化されることにより、属人性の解消にも貢献するとした。

さらに、各メーカーからの見積もり回収状況やその結果なども紐づけて管理することで、発注先の選定や管理がより容易になるといい、サプライヤの一括選定、見積もり依頼の一括送信、各メーカーの比較表の自動生成など、多くの便利な機能も持つとする。加えて、さまざまな図面データを1つのプラットフォーム上で管理・活用する図面データ活用クラウド「CADDi Drawer」とも連携しており、図面データとの紐づけによってさらに豊富な属性データを有し、幅広い分析が可能になるとしている。

○社内で使っていた技術を活用しサービス化

キャディの加藤代表取締役社長によると、今般発表されたCADDi Quoteの機能は、もともと同社の部品調達支援事業「CADDi Manufacturing」にて社内で使用していたテクノロジーを活用したものだという。

CADDi Manufacturingは、顧客から受け取った部品・組み立て品の設計データをもとにして、コスト計算や発注、品質保証などを代行し納入する製造業の受発注サービスで、その運用の中で図面解析や見積先の選定におけるテクノロジーなどを用いていたとする。その後キャディは2024年7月、同社の新構想への転換とともに事業統合を行うことを発表。部品・組み立て品をキャディとして納入するサービスを終了し、データプラットフォーム事業に機能を集約した。

そして現在は、自社内で用いていたテクノロジーを顧客でも活用できる形に整備し、CADDi Drawer上の機能として搭載しているとのこと。今般リリースされたCADDi Quoteについても、CADDi Drawer上の独立したアプリケーションの1つとして登場したとする。

キャディの中原氏によると、正式リリースに先んじてCADDi Quoteのベータ版を導入した顧客からは、見積もり業務の効率化における効果を実感しているとの声が寄せられているといい、社内での業務量削減に限らず、見積もりを依頼したサプライヤからの回答速度が向上した例もあるとする。

そして中原氏は今後について、「見積もりに関わる業務について広くデータを蓄積することで、調達活動においてさまざまな面からメリットを出せる可能性がある」とし、「見積もり業務の改善を起点として、幅広く顧客に貢献できるアプリケーションにしていきたい」と話す。

また加藤代表取締役社長は、「図面やコスト、品質情報などさまざまなデータを紐づけてクラウド管理すると、それら全体にAI解析を行うことができる。こうしたテクノロジーによって、業務の効率を上げていくだけでなく、意思決定の質やQCDの向上に貢献していく」と締めくくった。
(鶴海大輔)

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