やらなきゃとは思いつつも、ついつい後回しになってしまうのが車の点検だ。しかし、放っておくと痛い目にあう場合も。今回話をしてくれたのは、とあるバンドのマネージャー、川村賢子さん(仮名・26歳)だ。

「数年前の夏、福井でツーマンのライブがありました。ライブ当日、私はメンバーと機材を車に乗せて京都から高速道路を運転していました。フェスやライブによく呼ばれるので、長距離移動はいつものことでした」

◆突如車から発せられた異音と激しい縦揺れ

車に異変が起こったのは出発してまもなくのタイミング、全体の3分の1程を走ったあたりのことだ。

「いきなり車がドッドッドッドッと異様な音を発し、明らかに変な揺れ方をし始めたんです。どんどん激しい縦揺れになり、しまいには運転できなくなってしまいました。結局サービスエリアまで持たず、仕方なく路肩に止めることに。見てみると、タイヤがバーストしてしまったようでした。使い古した車でメンテナンスも万全な状態ではなかったので、そろそろ買い換えなきゃねと話はしていたんです。でもまさかライブの当日に故障するなんて……。寝ていたメンバーも起き、『あー……ついにこの時がきたか』『間に合うかねぇ』と車内は妙にしんみりとした雰囲気になりました」

川村さんが乗っていたのは10人乗りのハイエース。ギター、ベース、ドラムなど、ライブに必要な機材をまるっと運んでいたという。

「高級な機材もあり、車に乗っているものを全て運ばないとライブができない状態でした。これはヤバいなと焦りつつ、事務所の社長とJAFに状況を連絡してレッカー車を呼びました。JAFの方からは『車内にいると不注意の車に激突されてしまう恐れがあるので車の外で待機していてください』と言われたのですが、外は真夏で炎天下です。どうしても暑さに耐えられず、激突されたらどうしようと怯えながらも皆で車の中に留まっていましたね」

◆各方面から助っ人が現れる

「数十分待機するとレッカー車が到着し、下道のコンビニまで引っ張ってもらいました。しかし、車が走らないと福井まで辿り着けません。そこで、すでに現地入りしていた社長がレンタカーを借りて滋賀まで来てくれることになったんです。『ここにいます!』とGoogleマップで私たちがいる位置を送りました。さらに現地のイベンターさんも大型車で向かいにきてくれることに。一時はどうなることかと思いましたが何とか算段がつきました。コンビニの駐車場で待たせてもらい、社長とイベンターさんと合流した後は大型車に機材を移し替えました。猛暑でしたが、時間もなくてまさに一丸となって皆で運びました」

その後、社長は保険会社への連絡やタイヤ交換の対応でその場に残ることになり、イベンターは大型車で機材を、川村さんとメンバーたちはレンタカーで福井まで向かうことになったそうだ。

◆急いで車を走らせていたら、警察に…

「事態は何とか収まったものの、開場まで時間がなくて急いで車を飛ばしていました。その甲斐あって何とか間に合いそうな状態に。『リハーサルはできないけど、開場の20分前くらいには到着しそうだね』と話をしていたちょうどその時です。後ろにいたパトカーから『はい〜、前の車止まってください〜!」と呼びかけられたのです。『これ、私ですかね……。』と涙目になる私にメンバーたちはもはや大爆笑でした。車を止めさせられ、警察官に『制限速度は80キロですよ。34キロオーバーです』と言われたのは一生忘れません」

切符は切られたものの、運転は再開でき、川村さんたちはギリギリ開場前に間に合ったそう。

「ドタバタすぎる1日でしたが、ライブ自体は滞りなく行うことができました。イベンターさんが最後に『お疲れ様!今日はほんとに災難だったね! ワハハ!』と豪快に笑っていたのが印象的です。怒涛の1日でした」と川村さんは当時を懐古する。

車は最も身近な交通手段といっても過言ではないが、いつどんな時にガタがくるかはわからない。乗り慣れている人こそ小まめなメンテナンスが必要だ。

<TEXT/おせりさん>

【おせりさん】
下北沢に住む32歳。趣味はポーカーサウナホラー映画鑑賞。広告代理店・制作会社を経てフリーランスのブロガー兼ライターに。婚活ブログ『アラサー女の婚活談義』と生きることをテーマにした『IKIRU.』を運営中。体験談の執筆を得意としている。X(旧Twitter):@IKIRUwithfun

―[乗り物で腹が立った話]―