カーディーラーの営業マンだって人の子。多かれ少なかれ悪い人はいます。高額な商品を取り扱っているとはいえ、全員が善人というわけではありません。国内メーカー系ディーラーに筆者が勤めていた4年の間でさえも悪行を働いた営業マンを複数見てきました。そのうちの3つの悪行を暴露します。

◆嘘で塗り固められた車庫証明

 日本国内の法律上、車を買うためには自宅や使用の本拠から半径2km以内に車を停めるための駐車場を確保しなければなりません。その申請を車庫証明として警察に提出するのですが、ここで不正を働いた営業マンがいました。

 とある顧客の新車を受注した営業マンのAさんは、顧客の自宅近くに駐車場がないという事実に直面していました。営業マン歴10年を超えるAさんは、古くから知る不動産業を営む顧客に頼み、虚偽の申請をするための駐車場を書類上だけ用意してもらいこれで車庫証明は無事に申請できたのですが、これは「車庫飛ばし」という、れっきとした不正行為。バレたらただことでは済まないですが、もう過去の話なので暴露しました。

◆懇意にしている顧客から引き取った中古車を横流し

 筆者と同じ店舗で働いていた営業マンのBさんは店舗内では2番目の古株。多くの顧客を抱える営業マン。営業マンを続けていくと高齢のために車を手放したい、であったり、使わなくなった車を廃車したい、といった相談を受けることがあります。

 普通の営業マンなら会社を通して中古車買取をするのが基本のフローなのですが、Bさんは知り合いの中古車買取の営業マンにその車を売却して紹介料を得ていました。会社からしたら横領行為に値する事案なのでバレたら大事になりますが、うまく立ち回っていたのでばまだバレていないようです。

◆苦し紛れのカラ契約

 ノルマと呼ばれる強制力のある販売台数を課すことは会社としてしなくなりましたが、言葉を変えて「目標」として成約台数の必達を営業マンに課しています。営業の世界は数字が全てなので、目標を達成していない営業マンに人権はありません。少なくとも私がいたディーラーの店長は、目標を達成していない営業マンをひたすら怒鳴りつけて詰めるという行為をしていました。店舗内では私の1つ上の先輩のCさんは、成績の浮き沈みが激しいタイプの人で、月間目標を200%達成することもあれば30%程度になることもしばしばでした。

 全く成績が良くなかった時、例のごとく店長から激詰めされていたCさんは禁断の果実を手に取ることに。その果実とは、架空の商談で決定した架空の契約。わざと納期のかかる車や装備を付けたいとした顧客の商談を行い、見事(?)に受注。もちろん車が完成して出荷されると大変なことになってしまうので、調子の良い時に「キャンセルになってしまった」と誤魔化してキャンセルすることを繰り返していました。

 実は、このカラ契約は店舗全体でグルとなって行うこともあり、土日のフェアの時に目標台数に届いていない時に翌週確実に決まる商談を先方して受注したことにしてしまう、といったこともありました。店舗を統括する部長が店長を厳しく詰めることもあり、店長もそれが怖いのでかカラ契約をしてしまうのです。自分がやられて嫌なことを部下にする、最低な上司の最低な行為が招いた出来事でした。

 ここで怒った悪事や事件は私の周りで実際に起こった出来事。皆さんがよく利用しているディーラーでも起こっているかもしれません。

<文/宇野源一>

【宇野 源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801