独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは19日、中国・深センで10歳の日本人男児が登校中に男に襲われて死亡した事件について、「在日中国人は憤慨、中国メディアは沈黙している」との記事を掲載した。
男児は18日朝、保護者との登校中に、日本人学校から200メートルほどの位置で44歳の男に腹部を刺され、病院に搬送されて治療を受けたが19日未明に死亡した。
記事は、事件を受けて学校が休校措置を取ったことを伝え、「2008年の開校以来、最も重大な事件だ。大使館は学校と共同で児童と保護者の精神状態を考慮し、適切なケアを行っていく」と説明。さらに事件が発生した9月18日は満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日だと続け、「第2次世界大戦後、中国は毎年9月18日に関連の宣伝や記念活動を行い、愛国心の強化を目指している。この日に男児への襲撃事件が起きたことは、反日感情の高まりが関係しているのではないかとの考えを呼んだ」と伝えた。
そして、「事件は日本社会に衝撃を与えた」と述べて「国交断絶」などのワードがSNS上で注目を集めたことを取り上げるとともに、「在日中国人からも声が上がった」として、一部の中国人コミュニティーが「児童に対する無差別攻撃は道徳、法律の最低ラインを無視した重大な悪行だ」と断じる声明を出したことを伝えた。
記事は、この一方で中国メディアに対しては「比較的沈黙を保っているとの見方がある」と説明し、中国外交部報道官の18日午後の発言は簡単で短いものだったと言及。また、「6月に蘇州で起きた日本人母子襲撃事件を振り返ってみても、中国メディアは外交部が具体的な対応を行ってようやく事件を次々と報じた」とし、日本メディアからは「当局の指示に基づくものとみられるが、重大事件でも情報統制が必要だとするこうした態度はさらなる不信を招くだろう」との指摘があったと説明した。
中国には現在、日本人学校が11あり、記事は最後に「日中両国は今後、中国で暮らす日本人の教育、仕事、安全をいかに確保するかについて踏み込んだ協議を行うはずだ。事態が深刻化すれば、両国間の緊張はさらに高まる可能性がある」と論じた。(翻訳・編集/野谷)
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